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2024-11-11 13:19:14

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コンサルティングとITアウトソースの【アクセンチュア】に注目する理由

2022/1/12
投資情報部 榮 聡

筆者は2022年の注目銘柄の筆頭としてアクセンチュアを取り上げていますが、今回の特集レポートではその理由を詳しく説明いたします。米国市場に類似企業が少ないこともあって業界として注目されにくい面がありますが、グローバルに見渡すと類似企業はいずれも業績、株価とも好調です。直近のデータポイントとして、本日1/12(水)インド標準時17時(日本時間20時30分)に発表されるインフォシスの10-12月期決算が注目されます。

図表1 主な言及銘柄

銘柄 株価(1/11) 52週高値 52週安値
アクセンチュア A(ACN) 375.11ドル 417.37ドル 241.73ドル
インフォシス ADR(INFY) 25.02ドル 25.60ドル 16.88ドル
野村総合研究所 (4307) 4,290円 5,170円 3,110円
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1Why アクセンチュア?

筆者は2022年の注目銘柄の筆頭として、コンサルティングとITアウトソースを2本柱とするアクセンチュアを取り上げていますが、今回の特集レポートでは、その理由を説明いたします。

アクセンチュアに注目する理由

アクセンチュアに注目する最も大きな理由は、2022年の需要分野として、企業の設備投資、特にDX(デジタルトランスフォーメーション)関連の増加が最も信頼性が高いと考えられるためです。

消費者向けのDXサービスも引き続き伸びるでしょうが、新型コロナのパンデミックが終息していくことを前提にすると、需要動向には反動減となる分野もあるとみられます。

また、モノの分野の個人消費についても、パンデミックの政策対応で押し上げられていた部分があるため、不安定になりやすい部分があると考えられます。

これに対して企業による投資は数年先を見据えて行われるため需要が安定して出ると考えられ、新型コロナの感染拡大による一時的な景況のゆらぎにも影響を受けにくいと考えられます。

米10年国債利回りの上昇を受けて株式市場ではバリュエーションが高い銘柄が売り込まれています。アクセンチュアの予想PERも30倍台半ばと低くはないので、この流れの中で株価が下落しています。

しかし、成長性と比べてPERが高過ぎるという水準ではないと思われます。長期金利の上昇が一服する局面では、反発が期待できるでしょう。

業績モメンタムの改善が著しい

また、足もとの業績モメンタムの改善が著しい点も同社に注目できる理由です。

図表2は、アクセンチュアの四半期売上と前年同期比伸び率のグラフですが、直近3四半期の業績モメンタムの改善が著しくなっています。

2021年度の3Q(3-5月期)、4Q(6-8月期)はパンデミックの影響で前年同期の水準が低かったため、高めの伸びとなることはある程度想定されていました。

しかし、2022年度の1Q(9-11月期)は前年同期には業績回復が始まっていましたので、売上の伸び率が加速したことはシクリカルな回復以上に業界の需要が拡大している可能性が高いことを示していると言えるでしょう。

実際、アクセンチュアは9-11月期決算の発表とともに、2022年8月期の売上ガイダンスを前年比12〜15%増から同19〜22%増へ7%ポイントも引き上げています。それくらい業界に対する需要が強いということでしょう。

パンデミックによって消費分野のDXは数年分が一気に進んだと言われ、これに対応するために企業側のDXの取り組みが昨年から本格化しているようです。この動きは、今年、来年と続く可能性が高いと考えられます。

一方、このところセールスフォースドットコムやアドビといった企業向けソフトウェアの売上見通しが市場予想を下回って、企業のDX投資に陰りがあるのではとの見方もあるようです。しかし、DX戦略をどう進めるかといった、ソフトウェア販売よりも一段高いレベルの需要は好調が持続している可能性が高いと考えられます。

図表2 アクセンチュアの四半期売上高と前年同期比伸び率

  • 注:8月が決算期末のため、1Qは9-11月、2Qは12月-翌年2月、3Qは3-5月、4Qは6-8月となります。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

2アクセンチュアと同業の世界の企業の動き

アクセンチュアは個人の投資家には、なじみが薄い銘柄かもしれません。

アクセンチュアの同業企業

と言いますのは、コンサルティング業界のグローバル大手というと、デロイトトーマツ、プライスウォーターハウスクーパースなどがありますが上場しておらず、米国市場ではコンサルティング大手というと同社くらいしかありません。このため株式市場で業界として取り上げにくく、市場の注目が集まりにくい面があると思われます。

アクセンチュアの事業内容に最も近い上場大手というとIBMになりますが、同社はレガシーシステム(時代遅れとなったITシステム)の売上減少が足を引っ張って、全体としては売上が伸びない状況が続いており、比較対象としては適していません。

そこでアクセンチュア A(ACN)の事業のもう一本の柱であるITアウトソース(ITサービス)で同業をグローバルに抽出すると図表3のようになります。ITサービスの売上比率が60%以上の企業について、時価総額上位10社をリストアップしています。なお、アクセンチュアのIT売上比率は100%となっていますが、これはBloombergの業種分類基準によるものです。

これらのリストから、世界の業界状況を広く確認するためにインド、欧州、日本をそれぞれ代表する銘柄としてインフォシス ADR(INFY)、キャップジェミニ(当社の取り扱いなし)、野村総合研究所 (4307)を選んで、業績と株価の動向をチェックしました。

同業企業の売上と株価の推移

各社とも四半期売上の伸び率が拡大する傾向があり、アクセンチュアだけでなく、ITサービス業界全体に需要が加速していることがうかがえます。

インフォシスの四半期売上(ドル建、為替の影響を除くベース)は、2021年1-3月期が前年同期比10%増、4-6月期が同17%増、7-9月期が同19%増と伸び率が拡大しています。同社が本日1/12(水)に発表する10-12月期決算が注目されます。

キャップジェミニは、2021年4-6月期の売上が前年同期比12%増、7-9月期が同13%増に対して、10-12月期のガイダンスが同14.5〜15.0%増と加速する見通しを出しています。

野村総合研究所の四半期売上は、2021年1-3月期が前年同期比4%増、4-6月期が同9%増、7-9月期が同10%増と伸び率が高まっています。7-9月期決算の発表時には、2022年3月期の売上ガイダンスを前年度比2%増から同9%増に引き上げています。

一方、株価については、米国の長期金利上昇を受けて、年初来の株価調整はきつくなっているものの、中期的にはいずれも安定した上昇基調にあると言えるでしょう(図表4)。アクセンチュアの株価は、同業に比べると出遅れの可能性さえあると言えそうです。

予想PERは、アクセンチュア、インフォシス、野村総合研究所が揃って35倍(1/10(月)時点)で、キャップジェミニのみ23倍となっています。

確かに予想PERの水準は市場平均よりもかなり高いものの、過去数四半期の業績改善と今後のDX投資の増加見通しを背景に上昇してきたもので、必ずしも高過ぎるというわけではないでしょう。

図表3 ITサービス業界の時価総額上位10社(ITサービスの売上比率が60%以上)

銘柄(コード) 国籍 時価総額
(億ドル)
ITサービス
売上比率
アクセンチュア A(ACN) アイルランド(米国) 2,733 100 %
タタ・コンサルタンシー・サービシズ(取り扱いなし) インド 1,856 100 %
インフォシス ADR(INFY) インド 1,066 68 %
ウィプロ(取り扱いなし) インド 526 85 %
HCLテクノロジー(取り扱いなし) インド 481 100 %
コグニザントテクノロジーソリューション A(CTSH) 米国 466 100 %
キャップジェミニ(取り扱いなし) フランス 420 100 %
エヌ・ティ・ティ・データ (9613) 日本 300 81 %
野村総合研究所 (4307) 日本 261 100 %
テレパフォーマンス(取り扱いなし) フランス 260 100 %
  • 注:時価総額のデータは1/5(水)時点です。
  • ※Bloomberg データ をもとにSBI証券が作成

図表4 ITサービス企業の株価推移

  • 注:最後のデータは1/10(月)です。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

3アクセンチュアの来歴、事業概要と注目点

アクセンチュアの来歴、事業概要と注目点についてご紹介いたします。

来歴

・1950年代から米国でトップの監査法人だったアーサー・アンダーセンのビジネス&テクノロジーコンサルティング部門に由来する会社です。1989年にアンダーセン・コンサルティングとして分社化し、2000年に完全独立とともに社名をアクセンチュアに変更しました。

・2001年にニューヨーク株式市場に上場、2009年に本社をアイルランドに移して、正式社名は「アクセンチュアPLC」となっています。なお、かつての母体であるアーサー・アンダーセンは、粉飾決算で破綻したエンロン社のメインの会計監査を担当していたことで信用を失墜して2002年に解散に追い込まれています。

事業概要

・事業戦略、事業経営、テクノロジーに関するコンサルティング部門と顧客企業のITシステムや事業運営の一部を請け負うアウトソース部門が2本柱で、2021年8月期の売上は、前者が54%、後者が46%を占めます。顧客の産業別の売上構成比は、通信・メディア・テクノロジーが20%、金融サービスが20%、ヘルスケア&パブリックサービスが19%、製造業が28%、資源が14%、地域別には北米が47%、欧州が33%、その他の成長市場が20%です。

・ITコンサルティングでは、IBMグローバルビジネスサービス、デロイトコンサルティング、PwC、マッキンゼーなどが競合相手ですが、アクセンチュアはトップ企業の一つと考えられています。ITアウトソースでも世界的な大手で、インド企業が主な競合相手となります。同社もこの分野ではインドやフィリピンに多くの人員を配置しており、同社の従業員数が67万人(2021年12月時点)と非常に多いのはこのためです。

・9-11月期の売上は6-8月期の前年同期比24%増から、同27%増に加速、2022年8月期の売上ガイダンスを従来の前年比12〜15%増から同19〜22%増に引き上げています。売上の伸びは幅広い地域、顧客産業に広がっており、安定した売上成長であることがうかがえます。受注は売上の伸びを上回る前年同期比30%増に達しています。

注目点

・先回り投資が得意・・・将来重要になる最先端技術への投資を前もって行うことに秀でていると言われています。顧客企業に戦略をアドバイスする立場にあり、自社の実績でその能力を証明していると言えるでしょう。

クラウドやセキュリティなどの最先端技術に関連する売上構成比が70%を超え、ITサービス産業の類似企業で最も高くなっており、業界平均を上回る成長が続くと期待されます。直近の決算発表でCEOは、「業績の好調は、過去数年にわたり事業の重点をデジタル、クラウド、セキュリティに転換してきた成果が出ている」とコメントしています。

・成長投資が活発・・・2021年8月期には、ドイツの技術コンサルティング企業umlautを含む46社の企業買収に42億ドル、人材開発に9億ドル、研究開発、施設、プラットフォームなどに11億ドルを投資しており、成長投資を活発に行っています。

・ESGでも先進的・・・現在同社従業員の46%が女性で、2025年までにジェンダー・パリティ(男女比率が50%:50%)を達成する見込みです。また、オフィスやデータセンターで使用する電力の50%が再生エネルギーにより、2023年に100%を達成する目標であるなど、ESGの面でも先進的な企業です。

図表5 アクセンチュアの業績推移

  • 注:予想はBloombergが集計した市場コンセンサスによります。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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