米利上げ加速や世界的なリセッション懸念で波乱相場が続くなか、逆行高を演じている銘柄群があります。旅行予約や航空、カジノ関連などの「リオープン銘柄」です。背景には、香港に続いてマカオがインバウンド再開に向けて動き出したほか、「中国のハワイ」と呼ばれている海南省三亜市も、経済再開を発表したからです。これら主要都市のリオープンを追い風に、「リオープン銘柄」の堅調さは続く可能性があります。
図表1 主な言及銘柄
銘柄 | 株価(9/27) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
キャセイ航空(00293) | 8.95香港ドル | 9.20香港ドル | 6.11香港ドル |
トリップドットコムADR(TCOM) | 27.66米ドル | 33.27米ドル | 14.29米ドル |
金沙中国(01928) | 21.05香港ドル | 24.90香港ドル | 13.52香港ドル |
銀河娯楽(00027) | 47.35香港ドル | 49.93香港ドル | 34.03香港ドル |
中国旅遊集団(01880) | 191.00香港ドル | 193.80香港ドル | 120.00香港ドル |
エアチャイナ(00753) | 6.18香港ドル | 7.15香港ドル | 4.68香港ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
米利上げ加速や世界的なリセッション懸念で波乱相場が続くなか、逆行高を演じている銘柄群があります。旅行予約や航空、カジノ関連などの「リオープン銘柄」です。
図表2 「リオープン銘柄」の株価推移(年初来)
(2021年12月31日=100として指数化、上段が米国上場銘柄、下段は香港上場銘柄)
注:中国旅遊集団(01880) は2022年8月25日に香港市場に上場。株価は公募価格を100として指数化。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3 主要「リオープン銘柄」と関連分野
関連分野 | 銘柄 | 備考 |
---|---|---|
旅行予約 | トリップドットコムADR(TCOM) | 中国のオンライン旅行代理店大手。 |
ホテル | H ワールド グループ ADR(HTHT) | 中国の大手ホテルチェーン。 |
航空 | キャセイ航空(00293) | 香港の航空大手。香港をホームグラウンドにし、多くの国際線直行便を運航。 |
エア チャイナ(00753) | 中国3大航空会社の一角。漢字社名は「中国国際航空」。 | |
中国東方航空(00670) | 中国3大航空会社の一角。 | |
中国南方航空(01055) | 中国3大航空会社の一角。 | |
カジノ | 金沙中国(01928) | 米ラスベガス・サンズ(LVS)の子会社。主にマカオでカジノを運営。 |
銀河娯楽(00027) | マカオのカジノ大手。 | |
免税店 | 中国旅遊集団(01880) | 中国の免税店運営大手。海南省三亜市で大型免税店を複数持つ。 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
「リオープン銘柄」が堅調な理由は、香港に続いてマカオがインバウンド再開に向けて動き出したほか、「中国のハワイ」と呼ばれている海南省三亜市も、経済再開を発表したためです。
【香港がついに、入境者の隔離措置を撤廃】
9月14日付の外国株特集レポート「香港:入境者の隔離措置を緩和へ、インバウンド関連銘柄に恩恵」でご紹介したように、香港は入境者の強制隔離を11月前に廃止する方向で動いていました。そして9/23に、香港政府は9/26から入境者の隔離措置を撤廃すると発表しました。これは市場予想よりも早い段階での撤廃となります。
香港政府が撤廃を発表した後、旅行予約を手掛けるトリップドットコムADR(TCOM)の香港サイトでは、予約が殺到しました。同社が公表したデータによると、9/24-25(週末)に香港アウトバウンドの予約件数が前週末比で400%増、インバウンドが同155%増となりました。そのうち、国慶節(10/1)連休やクリスマス休暇期間中に出発する予約が多かったようです。
そのほか、香港航空大手のキャセイ航空(00293)の予約サイトにも、予約が殺到しました。ブルームバーグ報道によると、9/30発・10/7帰着の香港・米ロサンゼルス間のキャセイ航空便のビジネスクラス運賃は一時10万香港ドル超え(約190万円)に上昇しました。
上記の動向からすると、入境者の隔離措置撤廃により、香港のアウトバウンド・インバウンドは急激に回復する可能性があります。
【マカオは、中国本土からの団体観光客の受け入れを再開へ】
香港の動きを受け、近隣のマカオもインバウンド再開に向けた動きを加速させています。
マカオ政府は8月初めに中国本土の珠海市からマカオへの陸路ルートで、隔離検疫免除での相互往来を再開しました。9/24には中国本土からの団体観光客の受け入れを11月にも再開する方針を発表しました。また、中国本土側は11月初旬までに、マカオ訪問者への電子ビザ発行も再開する見通しを示しています。
マカオ政府は、団体観光客の受け入れ再開により、1日当たりの訪問者数は8月の1万人強から4万人に達する可能性があると予想しています。中国本土側が予定通り、マカオ訪問者への電子ビザ発行を再開すれば、一般観光客も増加する可能性があります。マカオのカジノ産業にとって追い風となりそうです。
【「中国のハワイ」も、リオープンへ】
「中国のハワイ」と呼ばれている海南省三亜市は、新型コロナの感染再拡大で8月にロックダウンを実施しましたが、9月中旬に一部の移動制限を解除しました。その後、9/27にはロックダウンを全面解除しました。それにより、飲食店での店内飲食に加え、観光地や免税店の営業も再開されます。
再開後の消費を促進するため、海南省政府は1億元相当の商品券を発行すると表明しました。これは、域内の消費喚起につながる措置と言えます。他方、国慶節(10/1)連休前のロックダウン解除により、域外からの観光客が増加すると予想されます。三亜市で大型免税店を複数持つ中国旅遊集団(01880)が恩恵を受けそうです。
総合的にみると、中国はリオープンに向けて動き出し始めているようです。中国の国内線と国際線旅客数の推移を確認してみると(図表4)、上海ロックダウン解除後、国内線旅行者数はコロナ前の約6割に回復しています。一方、国際線旅行者数はコロナ前とは程遠い水準にあります。中国本土が依然として隔離措置を実施していることが背景です。今後、中国本土でも隔離措置が撤廃されれば、国際線も回復するとみられます。
現時点で中国および世界で「オミクロン株」に次ぐ新たな変異種による感染や感染拡大が報告されていないことからすると、リオープンに向けた動きは加速する可能性もありそうです。それを追い風に、「リオープン銘柄」は業績回復期待とともに、株価の堅調さは続く可能性があります。
図表4 中国の国内線と国際線旅客数の推移(2019年から)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要「リオープン銘柄」の調整後EPS(1株当たり純利益)を確認してみると、新型コロナの感染拡大による影響で2020年は業績が悪化した銘柄がほとんどでした。その後、感染拡大が収まるにつれ、2021年はおおむね業績が回復しました。
しかしながら、2022年はオミクロン株による感染再拡大の影響で、キャセイ航空(00293)とトリップドットコムADR(TCOM)を除けば、業績の鈍化が予想されています。一方、鈍化幅はエアチャイナ(00753)を除けば、限定的となる見通しです。
翌2023年は、いずれも業績が大幅に回復すると見込まれています。足元でリオープンの動きが強まっていることを考えると、リオープン銘柄の業績は市場予想よりも早い段階でコロナ前の水準に回復する可能性もありそうです。
主な「インバウンド関連銘柄」の業績動向(2022年と2023年はBloomberg予想)
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