半導体関連株が注目を集めるなか、今回は「バフェット銘柄」のTSMCとSOX指数の動向を確認してみたいと思います。
図表1 主な言及銘柄(Bloomberg銘柄名)
銘柄 | 株価(1/17) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
台湾積体電路製造 [TSMC](TSM) | 88.99米ドル | 137.18米ドル | 59.43米ドル |
ASMLホールディング (ASML) | 658.19米ドル | 741.07米ドル | 363.15米ドル |
ラティスセミコンダクター (LSCC) | 73.09米ドル | 76.47米ドル | 43.41米ドル |
KLA (KLAC) | 415.95米ドル | 438.27米ドル | 250.20米ドル |
エヌビディア (NVDA) | 177.02米ドル | 289.46米ドル | 108.13米ドル |
アゼンタ (AZTA) | 59.43米ドル | 93.39米ドル | 37.61米ドル |
ラムリサーチ (LRCX) | 470.99米ドル | 717.40米ドル | 299.59米ドル |
アプライド・マテリアルズ (AMAT) | 109.41米ドル | 165.89米ドル | 71.12米ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
台湾の半導体受託生産(ファウンドリ)大手のTSMC(TSM)については、日本でも工場建設を進めていることで注目を集めています。TSMCはまた「バフェット銘柄」であり、その株価は米著名投資家のウォーレン・バフェット氏による株式取得が明らかになって以降、上昇しました。
図表2 TSMC(TSM)の株価推移と2022年末以降の主な出来事
※Bloombergおよび各種資料をもとによりSBI証券が作成
1/12の決算発表後は、200日移動平均線を突破しました。2022年10-12月期は売上高は市場予想を下回りましたが、純利益は市場予想を上回りました。また、2023年の見通しについて経営陣は、上期は1桁台半ばから後半の減収(米ドルベース)となるものの、下期は回復を見込み、ポジティブ材料となりました。
図表2の中にある「主なニュース」から分かるように、ファウンドリ世界最大手のTSMCは技術力が高く、短期的に競合が追いつく可能性が低いうえ、顧客からも信頼を得ています。その技術面での優勢性や株価急落後のバリュエーションの低さがバフェット氏が同社株を取得した要因だと指摘されています。台湾問題をめぐる懸念もバフェット氏の株式取得や同社の積極的な海外工場建設により和らいできたようです。
中国株の分析・調査も行っている筆者は、中国の「ゼロコロナ政策」の転換による世界経済見通しの改善もTSMCを含む半導体関連株の堅調さにつながっているとみております。その点に関しては、TSMCも構成銘柄の一つとなっているフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の動向で確認したいと思います。
SOX指数の動きを確認してみると、米国上場の中国ADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)と同様に、2022年10月中旬-下旬に底打ちし、反発しました。
HXC指数が反発した要因は、中国で「3期目の習政権」が発足してから中国当局が「イデオロギー」よりも「成長を重視」する姿勢を示し、「ゼロコロナ政策」を緩和し始めたためです。その後2023年1月8日、中国当局は正式に「ゼロコロナ政策」を撤廃しました。それにより、中国経済の回復期待が強まり、その恩恵で世界経済も回復が見込まれるとの見方が増えました。世界の景気動向に敏感な半導体関連株にとってポジティブ材料と言えます。
図表3 SOX指数とHXC指数の推移(2018年以降)
※Bloombergおよび各種資料をもとによりSBI証券が作成
図表3の下段のグラフを確認してみると、SOXが反発した時の株価水準は歴史的な低水準にありました。したがって、バリュエーション面の評価も株価反発につながった可能性があります。特にTSMCの部分で確認したように、バリュー投資で著名なバフェット氏がTSMCの株式を取得したことも、バリュエーション面での注目につながったとみられます。
なお、米国金融政策の動向もSOX指数を大きく左右する要因の一つです。図表4を確認してみると、SOX指数が2022年1月をピークに下落に転じたのは、米連邦公開市場委員会(FOMC)がインフレ懸念を受け、利上げ開始を示唆したためです。その後、実際に利上げが実施され、利上げが続いたことで、SOXは下降トレンドが続きました。2022年10月に米国のCPI(消費者物価指数)がピーク打ちした可能性が高まり、米国の利下げに対する期待が強まると、SOX指数は上昇に転じました。
図表4 SOX指数とFF金利の推移(2018年以降)
※Bloombergおよび各種資料をもとにSBI証券が作成
今回の動きは、前回の米利上げ局面(図表4の左側)の終盤の動きとやや似ています。2018年末にSOX指数が底打ちした際も米利下げに対する期待がありました。当時の2018年は米中貿易摩擦が勃発し、世界経済の見通しは悪化していました。ただし、2018年末は米中貿易摩擦の激化が回避され、2019年に入ってからは米中交渉が進みました。それを受け、世界経済の見通しも改善し、SOX指数の回復にもつながりました。
世界経済見通しの改善という足元の状況は、2018年と同様です。米国経済をめぐっては「軽いリセッション」なのか、それとも「より深刻なリセッション」なのかで意見が分かれていますが、世界経済については中国の「ゼロコロナ政策」の撤廃を受け、見通しが改善しています。この点からすると、世界の景気動向に敏感なSOX指数が買われ、特に中国および中国との経済関係が強い東アジアでの売上高構成比が高い半導体関連株が買われていることは理にかなっていると言えそうです。
図表5 SOX指数構成銘柄のうち、SOX指数が反発した局面の騰落率上位銘柄
銘柄コード | Bloomberg銘柄名 | 騰落率 |
---|---|---|
SOX | SOX指数 | 29.8% |
ASML | ASMLホールディング | 73.6% |
LSCC | ラティスセミコンダクター | 61.2% |
KLAC | KLA | 57.7% |
NVDA | エヌビディア | 57.7% |
AZTA | アゼンタ | 52.6% |
LRCX | ラムリサーチ | 49.5% |
AMAT | アプライド・マテリアルズ | 46.2% |
TSM | 台湾積体電路製造 [TSMC] | 39.2% |
注:2022/10/17-2023/1/17までの期間の騰落率です。
※BloombergをもとにSBI証券が作成
図表5 SOX指数構成銘柄のうち、騰落率上位銘柄の国・地域別売上高構成比(2021年度)
※BloombergをもとにSBI証券が作成
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