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2024-11-06 08:10:33

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【米国株決算】これまでの好調・不調銘柄と株価動向

2023/4/26
投資情報部 李 燕

4月中旬から始まった米国株の決算発表シーズン序盤では、主要株価指数が凪相場の様相を呈している一方、一部の個別銘柄は決算の好調・不調を手掛かりに株価が大きく変動しました。今回は、4/25までに決算発表を行った銘柄を中心に、決算の好調・不調銘柄と株価動向を確認してみたいと思います。

図表1 主な言及銘柄 (Bloomberg銘柄名)

銘柄 株価(4/25) 52週高値 52週安値
プロクター & ギャンブル(PG) 156.39米ドル 163.71米ドル 122.18米ドル
JPモルガン チェース(JPM) 137.67米ドル 144.34米ドル 101.28米ドル
マイクロソフト(MSFT) 275.42米ドル 294.18米ドル 213.43米ドル
アルファベット A(GOOGL) 103.85米ドル 123.28米ドル 83.34米ドル
テスラ(TSLA) 254.86米ドル 263.57米ドル 166.97米ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1 決算序盤は全体としてはまずまずの結果

4月中旬から始まった米国株の決算シーズン序盤では、主要指数は4/24までは小動きで凪相場の様相を呈しました。ただしその間、一部の個別銘柄は決算の好調・不調を手掛かりに株価が大きく変動しました。4/25は注目のファースト リパブリック バンク(FRC)が決算発表後に急落したことを受け、主要指数も調整しました。

今回は、4/25までに決算発表を行った銘柄(※)を中心に、決算の好調・不調銘柄と株価動向を確認してみたいと思います。(※S&P100指数とナスダック100指数およびSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)の構成銘柄に、ファースト・リパブリックを加えた銘柄群が対象です。)

まず、決算動向は1株当たり利益(EPS)の対市場予想比で確認してみたいと思います。

S&P100指数の構成銘柄のうち、4/25までに1-3月期の決算を発表した銘柄は、図表2の通りです。ナスダック100指数とSOX指数の場合は、図表3となります。図表2と図表3を合わせて確認してみると、1-3月期にEPSが市場予想を上回った銘柄は全体の9割を超えました。今回は決算発表までにアナリストたちがEPSを下方修正したことも多少影響したとはいえ、9割の予想超えからすると、決算の序盤は「まずまずの結果」と評価できそうです。

次に、決算に対する株価反応を確認してみると、決算発表後1日の株価騰落率がプラスとなった銘柄は全体のおよそ5割を占めました。EPSが市場予想を上回った銘柄の比率(9割)より低いのは、EPS以外の決算要因が株価に影響を与えたためです。

図表2 S&P100指数の構成銘柄のうち、4/25までに決算を発表した銘柄のEPSと株価騰落率
(決算発表の日次や時刻の順です)

銘柄コード Bloomberg銘柄名 EPSの実績対市場
予想比(%)
決算発表後1日の株価
騰落率(%)
UNH ユナイテッドヘルス・グループ 3.4% -2.7%
BLK ブラックロック 3.4% 3.1%
WFC ウェルズ・ファーゴ 8.9% -0.1%
JPM JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー 21.3% 7.6%
C シティグループ 12.9% 4.8%
SCHW チャールズ・シュワブ 3.3% 3.9%
JNJ ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) 6.3% -2.8%
BK バンク・オブ・ニューヨーク・メロン 0.7% 1.5%
BAC バンク・オブ・アメリカ 14.9% 0.6%
GS ゴールドマン・サックス・グループ 7.1% -1.7%
LMT ロッキード・マーチン 5.8% 2.4%
NFLX ネットフリックス 0.7% -3.2%
USB USバンコープ -8.0% 2.3%
ABT アボットラボラトリーズ 4.5% 7.8%
MS モルガン・スタンレー 2.1% 0.7%
TSLA テスラ -0.6% -9.8%
IBM IBM 8.7% 0.0%
T AT&T 2.0% -10.4%
PM フィリップ・モリス・インターナショナル 3.7% -4.7%
AXP アメリカン・エキスプレス -10.3% -1.0%
UNP ユニオン・パシフィック 3.6% 0.3%
PG プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) 3.4% 3.5%
KO コカ・コーラ 4.9% -0.2%
DOW ダウ 55.9% -5.2%
DHR ダナハー 3.6% -8.8%
UPS ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS) 0.2% -10.0%
PEP ペプシコ 8.7% 2.3%
GE ゼネラル・エレクトリック(GE) 100.0% -1.7%
GM ゼネラル・モーターズ(GM) 28.7% -4.0%
MMM 3M 24.6% -0.7%
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ 0.8% 0.5%
RTX レイセオン・テクノロジーズ 7.7% -1.3%
MCD マクドナルド 13.6% -0.6%
NEE ネクステラ・エナジー 13.8% -1.5%
V ビザ 5.1% *
MSFT マイクロソフト 9.6% *
TXN テキサス・インスツルメンツ 4.2% *
GOOGL アルファベット 7.7% *

注:1)EPSは1-3月期です。ネットフリックス(NFLX)とテキサス インスツルメンツ(TXN)およびアルファベット A(GOOGL)はGAAPベースEPSで、それ以外は調整後EPSです。
2)株価騰落率で「*」印が付いているものは4/25引け後(米国市場)に決算を発表した銘柄です。
※BloombergデータによりSBI証券が作成

図表3 ナスダック100指数とSOX指数の構成銘柄のうち、4/25までに決算を発表した銘柄のEPSと株価騰落率
(決算発表の日次や時刻の順です)

銘柄コード Bloomberg銘柄名 EPSの実績対市場予想比(%) 決算発表後1日の株価騰落率(%)
ナスダック100指数の構成銘柄
FAST ファスナル 3.6% -0.4%
NFLX ネットフリックス 0.7% -3.2%
ISRG インテュイティブサージカル 1.7% 10.9%
ASML ASMLホールディング 19.8% -3.0%
BKR ベーカー・ヒューズ 9.4% 3.6%
TSLA テスラ -0.6% -9.8%
LRCX ラムリサーチ 7.5% 7.2%
CSX CSX 12.1% 3.3%
CDNS ケイデンス・デザイン・システムズ 3.1% -4.3%
PEP ペプシコ 8.7% 2.3%
BIIB バイオジェン 3.5% -3.6%
FISV ファイサーブ 0.5% 2.4%
PCAR パッカー 24.2% 1.4%
TXN テキサス・インスツルメンツ 4.2% *
MSFT マイクロソフト 9.6% *
GOOGL アルファベット 7.7% *
CSGP コスター・グループ 14.2% *
ENPH エンフェーズ・エナジー 11.7% *
ILMN イルミナ 344.4% *
SOX指数の構成銘柄
ASML ASMLホールディング 19.8% -3.0%
LRCX ラムリサーチ 7.5% 7.2%
TSM 台湾積体電路製造[TSMC] 6.7% 2.4%
TXN テキサス・インスツルメンツ 4.2% *
その他
FRC ファースト・リパブリック・バンク 76.5% -49.4%

注:1)EPSは1-3月期です。ネットフリックス(NFLX)とテキサス インスツルメンツ(TXN)およびアルファベット A(GOOGL)はGAAPベースEPSで、それ以外は調整後EPSです。
2)株価騰落率で「*」印が付いているものは4/25引け後(米国市場)に決算を発表した銘柄です。
※BloombergデータによりSBI証券が作成

2 決算の好調・不調銘柄と株価動向

決算発表直後の株価反応からは、ある程度決算の好調・不調銘柄が読み取れます。そこで、図表2と図表3のうち、決算発表後1日の株価騰落率が上下3%を超えた銘柄を抽出し、株価の変動要因となったと思われる「主な決算ポイント」を追記しました(図表4)。

図表4 図表2と図表3のうち決算発表後1日の株価騰落率が上下3%を超えた銘柄

銘柄コード Bloomberg銘柄名 EPSの実績対市場予想比(%)) 決算発表後1日の株価騰落率(%) 主な決算ポイント 決算発表後の目標株価変化率(%、4/25まで)
BLK ブラックロック 3.4% 3.1% 運用資産が1-3月期に9兆900億ドルに拡大、地銀破綻を受けた資金流入が背景 0.0%
JPM JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー 21.3% 7.6% 1-3月期の預金は予想に反し増加、通期の純金利収入予想を上方修正 3.5%
C シティグループ 12.9% 4.8% 1-3月期は予想外の増益、金利変化でトレーディングが好調 3.8%
SCHW チャールズ・シュワブ 3.3% 3.9% 1-3月期の預金急減は市場予想通り、自社株買いの停止を決定 -2.5%
NFLX ネットフリックス 0.7% -3.2% 1-3月期の決算内容はおおむね市場予想通り、4-6月期の売上高見通しが市場予想下回る 1.3%
ABT アボットラボラトリーズ 4.5% 7.8% 1-3月期の決算が市場予想上回る、通期のオーガニック成長見通しを上方修正 0.1%
TSLA テスラ -0.6% -9.8% 1-3月期の粗利益率が大幅に低下、値下げによる業績への影響懸念強まる -5.2%
T AT&T 2.0% -10.4% 1-3月期のフリーキャッシュフローが市場予想を大幅に下回る -0.3%
PM フィリップ・モリス・インターナショナル 3.7% -4.7% 1-3月期の調整後EPSは予想上回る、通期調整後EPSガイダンスを下方修正 1.0%
PG プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) 3.4% 3.5% 1-3月期の決算内容は市場予想上回る、今期の通期売上高見通しを上方修正 3.1%
DOW ダウ 55.9% -5.2% 1-3月期の調整後EPSは予想を下回る、主力事業部門すべてでは販売量が減少 0.0%
DHR ダナハー 3.6% -8.8% 通期売上高見通しを下方修正 0.0%
UPS ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS) 0.2% -10.0% 1-3月期の取扱数量が予想下回る、通期売上高見通しを下方修正 0.0%
GM ゼネラル・モーターズ(GM) 28.7% -4.0% EVの規模拡大により利益率が低下する可能性があるとコメント、通期の調整後EPS見通しは上方修正 0.0%
ISRG インテュイティブサージカル 1.7% 10.9% 1-3月期の医療機器の販売が市場予想を上回って堅調 6.4%
ASML ASMLホールディング 19.8% -3.0% 1-3月期の新規受注が予想外の低水準、4-6月期ガイダンスは予想上回る -2.0%
BKR ベーカー・ヒューズ 9.4% 3.6% 4-6月期および通期の売上高見通しが市場予想上回る 1.0%
LRCX ラムリサーチ 7.5% 7.2% 4-6月期の売上高見通しは市場予想下回る、米対中輸出規制の影響を受けた一部製品は2023年後半に中国へ出荷可能となる見通し 1.2%
CSX CSX 12.1% 3.3% 1-3月期の輸送量が堅調 1.9%
CDNS ケイデンス・デザイン・システムズ 3.1% -4.3% 4-6月期の売上高見通しが予想下回る 1.0%
BIIB バイオジェン 3.5% -3.6% 通期売上高ガイダンス(中央値)が市場予想をやや下回る 0.0%
FRC ファースト・リパブリック・バンク 76.5% -49.4% 1-3月期の預金流出が予想上回る、人員削減やバランスシートの縮小を目指すと表明 -16.0%

注:1)ネットフリックス(NFLX)とテキサス インスツルメンツ(TXN)およびアルファベット A(GOOGL)はGAAPベースEPSで、それ以外は調整後EPSです。
2)決算発表後の目標株価の変動率はBloomberg集計によるものです。
※BloombergデータによりSBI証券が作成

図表4からは、決算発表で先陣を切った大手銀行の決算内容は総じて市場予想より良好で、決算発表直後の株価もそれを素直に反応したことが示されました。たとえば、JPモルガン チェース(JPM)の場合、1-3月期の純金利収入は前年同期比49%増となり、市場予想を上回り、預金も増加しました。同行はまた、通期の純金利収入見通しを上方修正しました。米地銀3行の破綻による大手銀行への影響は今のところ限定的で、むしろ大手銀行は預金流入の恩恵を受けているようです。

一方、地方銀行の場合は、地銀3行の破綻による影響は大きいことが確認されました。特に市場が注目しているファースト リパブリック バンク(FRC)は、1-3月期に市場予想を上回る預金流出となり、4/25は株価が50%近く下落しました。同行は預金流出を受け、バランスシートの縮小を目指すと表明しました。資産売却の可能性が示されたことで、4/25の米国市場では銀行危機はまだ収まっていないとの懸念が再燃しました。

銀行以外の主力株では、電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)の軟調さが目立ちました。度重なる値下げを実施してきたことで、市場では販売拡大が予想されていましたが、値下げによる販売押し上げ効果は市場予想には及びませんでした。値下げはむしろ利益率を大きく押し下げ、調整後EPSは市場予想を下回りました。

なお、決算発表会でイーロン・マスクCEOは、足元の利益率より販売拡大を重視することが将来の利益につながると説明しました。また、自社の営業利益率は依然として業界最高水準にあると強調し、値下げの継続を示唆しました。

今後の需要については、米国の金融政策やマクロ環境の不確実性も影響しているコメントしました。米金融政策の影響については利上げや高金利の環境は自動車といった耐久消費財にとって不利で、大手企業がリストラを進めている状況下では人々が自動車を買い控える動きに出やすいと説明しました。ただし、イーロン・マスクCEOは、「来年の半ばか終わりについては、非常に楽観的」との見方を示しました。

半導体株は、決算内容はまちまちで、決算発表直後の株価反応も明暗が分かれました。ラムリサーチ(LRCX)は、4-6月期売上高見通しは市場予想を下回ったものの、売上高比率が比較的高い中国への一部製品の出荷が年後半に可能となる見通しだと示しました。一方、ASML(ASML)は4-6月期売上高ガイダンスは市場予想を上回りましたが、1-3月の新規受注が予想外に低下しました。これまで決算発表を行った半導体企業4社の状況からすると、半導体産業をめぐっては、在庫調整の終了に伴う底打ち期待がある一方で、米中のマクロ環境の不確実性を背景とした先行きの不透明感も併存している状況と言えます。

なお、図表4では決算発表後から4/25までに、目標株価の変動率も確認できます。決算発表を受けたアナリストたちの目標株価の修正を反映します。一部銘柄を除けば、今のところ修正幅は限定的と言えそうです。また、4/25のファースト リパブリック バンクの急落を受け、主要指数のみならず、図表4の好決算銘柄も下落が目立ちました。

したがって、総合的にみると足元は引き続き、警戒が必要な局面と言えそうです。4/25引け後に市場予想を上回った決算を発表したマイクロソフト(MSFT)やアルファベット A(GOOGL)が、相場の流れを変えられるかどうかが注目されます。

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