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2024-11-06 07:07:54

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【5月の米国株】「セル・イン・メイ」の中で買われている銘柄とその要因

2023/5/10
投資情報部 李 燕

5月の米国市場はこれまでのところ、「セル・イン・メイ」の様相を呈しています。今回は、その中で買われている銘柄とその背景要因を確認してみたいと思います。

図表1 主な言及銘柄 (Bloomberg銘柄名)

銘柄 株価(5/9) 52週高値 52週安値
アップル(AAPL) 171.77米ドル 176.15米ドル 124.17米ドル
マイクロソフト(MSFT) 307.00米ドル 311.97米ドル 213.43米ドル
テスラ(TSLA) 169.15米ドル 314.67米ドル 101.81米ドル
アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) 95.06米ドル 109.57米ドル 54.57米ドル
エヌビディア(NVDA) 285.71米ドル 292.20米ドル 108.13米ドル
カーニバル(CCL) 10.65米ドル 15.62米ドル 6.11米ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1 5月相場は「セル・イン・メイ」か

5月のこれまでの米国市場を振り返ってみると(図表2)、S&P500指数とナスダック100指数、およびフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)はいずれも小幅ながら下落しました。ウォール街の格言通り、「セル・イン・メイ」の様相を呈しています。

図表2 主要株価指数の騰落率

※BloombergデータによりSBI証券が作成

ただ、「セル・イン・メイ」のなかでも、投資家のリスクセンチメントの影響をより受けやすいナスダック100指数は比較的堅調でした。S&P500指数の業種別騰落率からも、ナスダック100指数の構成銘柄が多く含まれている情報技術セクターが一般消費財・サービスに次ぐパフォーマンスとなりました(図表3)。

図表3 S&P500指数の業種別騰落率

※BloombergデータによりSBI証券が作成

2 ナスダック100指数が底堅い理由と買われた銘柄

ナスダック100指数が堅調なのは、主に以下2つの要因が背景と考えられます。

1)利下げ停止期待

米連邦準備制度理事会(FRB)が2022年3月に利上げを実施してから、主要株価指数は下落しました(図表4)。それ以降の利上げ局面では、米政策金利に当たるフェデラル・ファンド金利(FFレート)の引き上げ幅もさることながら、今年に入ってからは市場が織り込むFFレートのターミナルレート(最高到達点、以下では「ターミナルレート」)が主要指数のパフォーマンスにより影響を与えています。

図表4 主要株価指数とFFレートの推移(2022年1月から)
(主要株価指数は2021年12月末=100として指数化)

※Bloombergおよび各種資料によりSBI証券が作成

たとえば、地銀破綻の直後に主要株価指数が上昇したことが、その例として挙げられます。地銀破綻を受け、利上げ停止に対する期待が高まり、ターミナルレートは3/9以降、急低下しました。その後、4月にターミナルレートが緩やかながらも上昇に転じると、主要株価指数(特に3月に上昇率が堅調だったSOX指数)は調整しました。

5月に入ってから、FRBが利上げを実施し、今後については利上げ停止の可能性を否定しなかったこともあり、ターミナルレートはFFレートの上限(5.25%)まで低下しました。ターミナルレートの水準からすると、5月の利上げが最終利上げとなる可能性も示されました。それが金利動向により敏感なナスダック100指数を下支えしました。

ただ、足元は底堅い経済指標や5/10のインフレ発表を控え、利上げ継続に対する警戒感もくすぶっています。米債務上限問題も相場の重石となっています。米債務上限問題は過去同様に解決される可能性があるにしても、不透明感も多く、時間がかかる可能性が高く、今後の動向には留意する必要がありそうです。

2)主力銘柄の決算が底堅い

図表5のナスダック100指数の主要構成銘柄を確認してみると、時価総額ベースで上位10銘柄のうち7銘柄が5月(5/9まで)に上昇しました。そのうちほとんどが直近の決算発表で市場予想を上回った決算を発表しました。決算発表後は、アナリストたちによる目標株価の引き上げも目立ちました。

図表5 ナスダック100指数構成銘柄の上位10銘柄(時価総額ベース)の株価動向と要因

銘柄コード Bloomberg銘柄名 4月騰落率 5月騰落率(5/9まで) 主な要因 直近決算発後から目標株価の変化率(5/9まで)
AAPL アップル 2.9% 1.2% 5/4に市場予想を上回った決算(iPhone販売も予想上回る)を発表。 4.5%
MSFT マイクロソフト 6.6% -0.1% 4/25に好決算を発表した後、大幅高に。5月初めは高値警戒感でほぼ横ばいに。 8.7%
GOOGL アルファベット 3.5% 0.0% 4/25に市場予想を上回った決算を発表した後、上昇したものの、株価モメンタムはマイクロソフトに比るとやや弱い。決算発表会で経営陣がAIの導入や効果についてマイクロソフトよりは慎重なコメントを出したことが背景のもよう。 2.3%
AMZN アマゾン・ドット・コム 2.1% 1.1% 4/27に発表した決算内容(特にクラウド部門)が市場予想を上回った。ただ、クラウド部門の増収率は4月に鈍化したことが明らかになり、決算発表直後は株価が下落する場面もあった。 1.1%
NVDA エヌビディア -0.1% 3.0% 4月の調整を経て、5月初めは押し目買いが入ったもよう。ただ足元は、競合のAMDの株価モメンタムがやや強い。マイクロソフトがAMDの人工知能(AI)プロセッサー分野への進出に協力していると報じられたことがきっかけ。 5/25に決算発表の予定
META メタ・プラットフォームズ 13.4% -2.9% 4/26に市場予想を上回った決算を発表した後、急騰。ただ、5月に入ってからは利益確定売りが優勢に。 16.0%
TSLA テスラ -20.8% 2.9% 4月に急落後、5月初めは見直し買いがみられた。今年に入ってから値下げを続けてきたが、足元では中国市場で値上げを実施。上海工場での出荷台数が4月に7.5万台超えになったことも買い材料視された。 4/19に決算を発表
PEP ペプシコ 4.7% 1.7% 4/25に予想を上回った決算を発表した後、上昇。足元では増配発表が買い手掛かりとなったもよう。 4.6%
ASML ASMLホールディング -6.4% 1.0% 5月に入ってから自社株買いを実施。 4/19に決算を発表
AVGO ブロードコム -2.3% -1.3% 同社による仮想マシン技術の米VMwareの買収計画について懸念しているもよう。マイクロソフトのアクティビジョン買収を英国が阻止したことが背景。 3/2に決算を発表

※Bloombergおよび各種資料によりSBI証券が作成

3 S&P500指数の中で買われた銘柄、半導体は生成AI関連がけん引

S&P500指数の業種別騰落率(図表3)では、一般消費財・サービスと情報技術が比較的堅調でした。両セクターの上昇率トップ5銘柄は、図表6の通りです。クルーズやホテルなどリオープン関連銘柄と半導体株の堅調さが目立ちました。

図表6 一般消費財・サービスと情報技術セクターの上昇率上位5銘柄

銘柄コード Bloomberg銘柄名 5月騰落率(5/9まで) 主な要因 直近決算発後から目標株価の変化率(5/9まで)
S&P500 一般消費財・サービス
RCL ロイヤル・カリビアン・クルーズ 17.6% 1-3月期の決算内容が市場予想を上回った。 6.9%
CCL カーニバル 15.6% 同業2社が予想を上回る決算を発表し、連れ高した。 3/27に決算を発表(次回は6/23の予定)
GRMN ガーミン 5.9% 1-3月期の決算内容が市場予想を下回ったが、会社側は通期ガイダンスについて従来予想を維持した。 2.1%
MAR マリオット・インターナショナル(メリーランド) 5.7% 1-3月期の決算内容が市場予想を上回った。 3.5%
NCLH ノルウェージャンクルーズライン・ホールディングス 5.7% 1-3月期の決算内容が市場予想を上回った。 -0.7%
- S&P500 情報技術
ON オン・セミコンダクター 9.5% 1-3月期の決算内容と4-6月期ガイダンスが市場予想を上回った。 1.5%
AMD アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD) 6.4% 1-3月期の決算内容は市場予想を上回ったが、4-6月期ガイダンスは市場予想を下回った。ただ、マイクロソフトが同社の人工知能(AI)プロセッサー分野への進出に協力していると報じられ、買い材料となった。 2.9%
FTNT フォーティネット 5.3% 1-3月期の決算内容が市場予想を上回ったほか、同社は通期ガイダンスを上方修正した。 1.7%
CTSH コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ 3.2% 1-3月期の決算内容が市場予想を上回った。 0.6%
NVDA エヌビディア 3.0% 4月の調整を経て、5月初めは押し目買いが入ったもよう。ただ足元は、競合のAMDの株価モメンタムがやや強い。マイクロソフトがAMDの人工知能(AI)プロセッサー分野への進出に協力していると報じられたことがきっかけ。 5/25に決算発表の予定

※Bloombergおよび各種資料によりSBI証券が作成

一方、図表6のように主力の半導体関連銘柄が堅調だった割に、SOX指数の軟調さ(図表4)が目立ちます。背景には、パワー半導体のオン セミコンダクター(ON)と、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)やエヌビディア(NVDA)などの生成AI関連銘柄が買われた一方、生成AIとは直接的な関連が薄くスマートフォンやパソコン向け半導体と関連性がより高いクアルコム(QCOM)やマイクロン テクノロジー(MU)が大きく下落したためです。

半導体業界をめぐっては、在庫調整が終盤に近付くとの期待が強かったですが、1-3月期の決算からは半導体市況の底打ちはずれ込む可能性があることが示唆されました。足元は生成AIに対する期待が関連銘柄の株価を支えている側面が強い状況です。生成AIはいわば今後の成長(グロース)分野であり、世界経済が大恐慌に陥らない限り、関連銘柄はグロース株として注目に値すると考えられます。ただ、足元は5/10のインフレ動向に対する警戒などを背景に高値警戒感も意識されやすいかもしれません。

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