“ヘルスケア物色と米連邦最高裁判決、反転の17日”
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22日と23日のパウエルFRB議長の上下院銀行委員会での議会証言が当面の相場の流れに大きな影響を与えているようだ。
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22日には、FRBが40年ぶりの高水準で推移するインフレ抑制に「強くコミット」しており、景気後退リスクがあっても物価抑制に全力を傾けているとした。この発言は市場が警戒していたほどの「超タカ派」ではないとみられ、長期金利の変動が落ち着き始めた。同時に「米経済のソフトランディングの達成は非常に難しい」とも述べたことから、景気後退リスクが懸念され始めた。23日には「積極的な金融引き締めが失業率の上昇を招くリスク」にも言及した。
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米国株においては、業績が景気の変動に影響されにくい業種として、医薬品やバイオ・保険といったヘルスケアを含め、日用消費財など生活に密着した事業を行い利益とキャッシュフローが安定している「ディフェンシブ」銘柄が挙げられる。もう一つは、今や世界中の生活における基本的なインフラとなったクラウドサービスやデータセンター、スマートフォンなどに係る大手ハイテク株である。ただし、大手ハイテク株は「グロース」投資として先の長い将来の成長期待が株価に先行して織り込まれてきた経緯があることから、株価上昇には長期金利の低下の支援が必要だろう。
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このようにヘルスケアなどディフェンシブ銘柄が買われやすい背景の下、米連邦最高裁が24日、人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を50年近くぶりに覆す歴史的判断を下した。中絶の権利は元々が保守とリベラルで米国世論を二分する高度で微妙な価値観の問題であるが、現在の各州の知事や州議会から見て全米の半数以上の州が中絶を禁止または制限する可能性が高いとみられている。政治・宗教の価値観とは別に、株式市場は早晩より多くの女性が早期から計画的に避妊を開始するための医薬品を利用する可能性に目を向け始めるのではないだろうか。新型コロナに係るワクチンや飲み薬への需要が経済再開の世界的な進展ととともに減速している中で、ヘルスケア業界にとっての新たな需要となり得よう。
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17日は、株価指数の先物とオプションに加えて個別株の先物とオプションの4つについて特別清算指数(SQ値)で最終決済を行う「クアドラプル・ウィッチング」だった。ダウ工業株30種平均(ダウ平均)は17日に1月第1週の過去最高値から19.7%下落した水準で反発。コロナ禍発生前の2020年2月高値を僅かに上回って反転上昇に転じた。WTI原油先物価格も17日以降に下げ足を強めたことで株価の下げ圧力となっていたインフレ悪化見通しも改善の余地がある。リバウンド相場の環境は17日に整っていた面があろう。(笹木)
- 6/28号では、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)、ケロッグ(K)、ヌー・ホールディングス[ケイマン諸島](NU)、オルガノン(OGN)、ファイザー(PFE)、ビザ(V)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄の騰落率(6/24現在)
主要企業の決算発表予定
6月29日(木) | マコーミック、ゼネラル・ミルズ、ペイチェックス |
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6月30日(木) | マイクロン・テクノロジー、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、コンステレーション・ブランズ |
主要イベントの予定
6月28日(火) |
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6月29日(水) |
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6月30日(木) |
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7月1日(金) |
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7月4日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は6/24現在であり、変更される可能性があります。