2017/08/29
提供:三菱UFJ国際投信
「投資環境ウィークリー」8月28日号より抜粋
先週は米欧の株価が前週比で反発したものの、朝鮮半島を巡る地政学リスクや米政治の混乱が意識され、市場は神経質な動きを続けました。週初21日に米韓合同軍事演習が始まると北朝鮮は「核戦争に向けた無謀な一歩」と批判。しかし、翌22日に米太平洋軍司令官が「外交的解決を望む」と発言、緊張はやや緩みました。
米政治混乱が続く中、9月末までに暫定予算を成立させ政府機関の閉鎖を回避できるか、9月末から10月半ばまでに債務上限の引上げか一時停止を行い米国債のデフォルトを回避できるかに注目が集まります。上下院と大統領を同一政党(共和党)が占めており、通常なら問題は生じないはず。しかし、今回は共和党内の分断と大統領と議会共和党との対立が生じており平時とは言えません。先週23日には、 同大統領がメキシコ国境の「壁」の建設費用確保のために議会への圧力が必要なら政府閉鎖も辞さないと発言(上下院の共和党指導部はこの考えを否定)。リスク回避の動きが強まり米欧株価が下落し米10年債利回りは低下しました。
従来と同様、最終的には瀬戸際で合意が成立し最悪の事態が回避されるとみられるものの、そこに至るまでは大統領による不規則な発言も加わり市場の変動性が高まるでしょう。大型減税やインフラ投資等への期待は一層低下。9月末にかけて政府機関の閉鎖や米国債のデフォルトが回避されただけでも、市場はこれを歓迎し、低迷していたリスク資産価格を回復させる可能性が高いでしょう。
政治混乱が続く米国を始め、欧州や主要新興国でも景気は順調に拡大、政治リスクがくすぶる中でも本格的なリスク回避は起こりづらい模様です。先週の米ジャクソンホール会議では、イエレン米FRB議長が金融政策見通しに関わる見解を示さず。タカ派的な発言を警戒した市場には安心感が広まり、米10年債利回りは低下、米ドルが対円・ユーロで下落しました。ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁も、金融刺激策の解除には慎重さが必要と7月の記者会見とほぼ同様の見解を示すに留まり、先週最大のイベントは無難に終わりました。今週は、米雇用統計や米ISM製造業景気指数など重要指標をにらみつつ金融政策動向を探る展開となるでしょう。26日には北朝鮮が短距離ミサイル3発を発射するなど、地政学リスクや米政治リスクは容易に後退せず、当面市場はやや不安定になると予想されます。
◆米国:1日の米雇用統計(8月)では、平均時給の前年比が+2.6%と前月の+2.5%を僅かに上回るに留まり、改善する雇用下でも上がらない賃金が確認されるでしょう。1日のISM製造業景気指数は56.5と前月の56.3より改善すると見込まれるものの、年内の米利上げへの確信を高めるには至らないと考えられます。
◆中国:31日の製造業PMI(8月)は51.3と前月の51.4より小幅に鈍化する見込みです。9月は銀行の譲渡性預金(NCD)の大量償還が控えており短期金利の変動が増すでしょう。当局が市場の動揺を抑え込めるかに注目が集まります。(入村)
今週・来週の主要経済指標と政治スケジュール
8/28(月) |
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(欧)独、仏、伊、スペイン首脳会談 |
8/29(火) |
(日)7月 家計調査(実質消費支出、前年比) |
8/30(水) |
(米)パウエルFRB理事 講演 |
8/31(木) |
(日)政井日銀審議委員 講演 |
9/1(金) |
(日)4-6月期 法人企業統計調査(設備投資、前年比) |
注)上記の日程及び内容は変更される可能性があります。
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