豪ドルの見通し (政策金利は2.50%)
インフレ・経済成長の先行き見通しは下方修正
8月5日に開催されたオーストラリア準備銀行(RBA)理事会では、政策金利が現行の2.50%のまま据え置かれ、11会合連続での金融政策維持決定となりました。最近の声明文で繰り返し用いられている「金利の安定的な継続が最も賢明」との表現が今月も使われ、しばらくの間は金融政策を変更する意図が低いことが窺われます。
2014年第2四半期の豪州基調インフレ率(前年比)は2.8%へ上昇し、RBAが目標とする3%に近づきつつありますが、声明文に通貨安によるインフレ率上昇を指摘している点が見られたものの、8日に公表された四半期金融政策声明では、2014年内のコア・インフレ率は従来予想(2014年5月時点)の2.50%から2.25%へ下方修正されており、経済成長率も従来予想の2.75%から2.50%へ引き下げられました。背景として、オーストラリア国内における大規模鉱工業投資プロジェクトの終了や、2014年度(2014年7月〜翌6月)に増税と歳出の削減による個人消費の落ち込みが予想されるとの見方などがあるようです。実際に、今年8月に実施された豪消費者団体の行った消費者世論調査では、回答者の3分の1が「生活が苦しい」と回答が載せられています。
足元は、前回値を上回る信頼感指数に支えられたが・・・今後の見通しは?
8月の市場では、経済成長見通しが下方修正される中、8月7日に公表された7月の豪州雇用統計において失業率が前月比+0.4%と悪化、更に雇用者数が増加予想に反して減少した結果、豪ドル円は発表後1時間ほどで約50銭下落しました。その後、下値を試すような動きが見られたものの、8月12日の企業信頼感指数(7月)と翌日の消費者信頼感指数(8月)が前回値を上回ったことで、足元では下落から持ち直す場面も見られました。
今後のポイントとしては、豪州雇用統計や信頼感指数などの豪州の景気先行きを占う経済指標に加え、米国の金融政策に関連したイベントが豪ドル相場の方向を示していくことになりそうです。ただし、ウクライナや中東情勢などの地政学リスクの高まりを注意深く見守る必要がありそうです。

(出所:総合分析チャート 4時間足)
NZドルの見通し (政策金利は3.50%)
4会合連続して金融政策の変更を実施
前回、7月24日に開催されたニュージーランド準備銀行(RBNZ)理事会は、事前予想の通り金融政策を変更、政策金利の0.25%利上げを実施し年率3.50%としました。声明文には「インフレ期待を引き続き抑制することが重要」と記すとともに、商品価格の下落を背景とした景気の減速がみられるとの見方を示し、今後の利上げは「これまでの利上げの効果と経済指標の強さによる」としながら、過去4会合連続して変更されてきた金融政策が今後は一旦見合わせる意向を示しています。また、現在の為替レートについて「現在のNZドル高は維持できない、今後NZドルが大幅に下落する可能性がある」と記し、NZドル高をけん制しています。
主要輸出品の価格下落は気になるが、景気は良好か・・・今後の見通しは?
足元の経済情勢は、第2四半期小売売上高は前期比1.7%増加し、前期改定値とともに市場予想を上回りました。また、雇用関連指標も若干の減少がみられましたが、労働参加率は史上最高水準にとどまり、リーマンショック以降は減少傾向だった第2四半期失業率も前回値から改善を見せました。一方で、ニュージーランドの輸出金額の構成比が2割強を占める乳製品価格が下落しており、続落する場合は少なからず為替相場へ影響することが考えられます。
今後複数回の会合では金融政策が据え置かれる見通しであるのに加えて、声明がNZドル高を強くけん制したことで、目先NZドル高をためらう材料として意識されることになりそうです。しかしながら、年末から利上げを再開するとの見方が複数の市場関係者の間で囁かれていることに加え、経済指標が示す景気自体は好調であることから、国内要因が発端となってNZドルが急落する事は考えにくいようにも思われます。ただ地政学リスクの高まりに加え、米国の金融政策の変化に伴うNZドル相場の影響は十分に注意する必要があるでしょう。

(出所:総合分析チャート 4時間足)