激動の2014年度下半期!2015年度も荒れ相場?!
2014年度振り返り
昨年10月29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が量的緩和の終了を発表したのとは対照的に、10月31日の日銀金融政策決定会合は、追加の金融緩和を決定しました。このため、当時109円台で推移していたドル円に急激な円安バイアスが掛かり、12月8日には121円86銭まで円安が進行しました。その後、約3ヶ月間ドル円がこの時のドル高水準を上回ることはなく、むしろ、急速に進んだ円安に対する警戒感もあって、一時115円57銭まで反落する場面もありました。
12月にドルが高値と安値を付けてから今年2月までの間は、115円台後半から120円台後半の比較的狭いレンジ内での値動きが続きました。また、この時期の為替市場で大きな材料となったのは、10月初旬には90ドル台だった原油価格が11月に60ドル台、さらに2015年初には50ドル割れまでと、下落に歯止めが掛からなかったことでした。
そして1〜3月期最大のサプライズとも言えるのが、1月15日のスイス中銀による対ユーロ上限レートの撤廃でした。後に「スイスショック」と名付けられ、スイスフランが対ユーロで1.2000から0.8500まで買い進まれ、ドル円も115円台にまで下落する事態を招きました。
その後、このスイス中銀の決定が引き金になったのかは別にして、各国の中央銀行は競うようにして緩和政策を推進、1月末には原油価格が44ドルにまで下落したこともあり、原油安の進行によるインフレ率の低下が各国のデフレ警戒感を強めました。さらに、カナダ中銀と豪準備銀行が市場予想に反して緩和策の実施に踏み切ったことを皮切りに、1月だけでも世界各国で20回以上の緩和策が実施されました。欧州中央銀行(ECB)も例外ではなく、1月の理事会で国債の買い入れを中心にした緩和策の導入を決定しユーロ安が大幅に進みました。
昨年10月の日銀による追加緩和は、実施当初こそインパクトが強かったものの、今では日銀の緩和策に対して、もはや限界説まで囁かれるようになってしまいました。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに向けての金融政策がECBや日銀とは対極にあり、中長期的なドル高感に変化はないとする見方に支えられるように、3月に入ってドル円は一時122円04銭まで上昇しました。
米ドル/円 日足
※出所:FX総合分析チャート 日足
ユーロ/円 日足
※出所:FX総合分析チャート 日足
ユーロ/米ドル 日足
※出所:FX総合分析チャート 日足
しばらくは「ドル高」容認?今後の相場展開を予想!
4月から6月頃までの為替相場展望ですが、インフレ期待の低下に影響を与える原油価格が下げ止まるのか、一段安となるのかが大きなポイントです。さらには米国の利上げ開始を睨んでの新興国通貨の値動きも鍵になって来るでしょう。
3月17〜18日のFOMCでは、声明文から『辛抱強く』との文言が削除された一方で、先行きの景況判断が下方修正されました。さらには成長率やインフレ見通しなどの四半期経済予測も下方修正されています。市場は引き続き6月ないし9月の利上げ開始を見込んでいるようですが、労働関連指標以外の経済指標に足踏み状態を示す内容の発表が相次いでいることが、一抹の不安材料になっています。それでも市場はFRBの利上げ開始を織り込み始めている状況に変化はなく、金利上昇のみならず米国の金融正常化そのものが改めて評価されることによるドル高見通しに異論を挟む余地は少ないと思われます。財政が健全なドイツは、国債利払いコストを軽減できると同時に、ユーロ安による輸出に対する恩恵も手伝って、企業も低コストでの社債発行も可能になっています。逆にドル高が米国の輸出企業の業績にとってマイナスになると言ったドル高をけん制する声も聞こえ始めていますが、3月18日のFOMC後のイエレンFRB議長の「ドル高は米国経済の強さを一部反映したものである」との発言を文字通りに受け止めれば、足許の1ユーロ=1.05ドルや1ドル=121円は、依然容認できる範疇の認識にあると思われます。従って、過度なドル高による米国の経済成長の陰り、企業業績の下振れの兆候が確認されるまでは、ドル高が容認されるものと思われます。
相変わらず雲行きの怪しいギリシャ問題やロシアとウクライナの問題を抱えるユーロは、ドル・円・ユーロの主要3通貨の中でも最も弱く推移する可能性が高く、1.10ドル付近を高値に1.00ドルに向けて緩やかな下落を続けると予想します。
日本国内では、大企業を中心に2年連続のベアが実施される見通しとなっており、実質賃金の上昇にも期待が高まっています。消費者物価指数が昨年4月の消費税増税の影響から解放され、日銀の追加緩和の可能性が小さくなるにせよ、成長力への期待と同時にデフレ脱却に向けた力強さが失われずに進めるのか、いよいよ正念場を迎えています。各企業の業績やコーポレートガバナンスの改善を背景にした株価上昇、すなわちアベノミクスの成長戦略の効果が確認されることで、海外投資家からの信頼がさらに高まることになれば、日本売りが背景となる悪い円安進行のリスクが後退するかも知れません。
4月から6月頃までは、一時的に振れるような場面があっても、居心地が良いとされる1ドル=120円を挟んで上下2〜3円程度に収まるような相場が暫く続くと思われます。