FOMC 政策金利 |
発表時間 |
9/17(木) 27:00 (日本時間) |
米FOMC、利上げ開始か否か
直近の状況分析
7月FOMCの声明文の中で『労働市場がさらに幾分改善し、中期的なインフレ率の2%目標への回帰に合理的な自信が得られる場合に、FOMCはFF金利の誘導目標の引上げが妥当になる』と示されました。
9/9に発表された米7月JOLT求職件数が予想を上回る575.3万件と統計開始以来の最高を更新。先週末の雇用統計では2008年4月以来となる5.1%まで低下した失業率、前月比+0.3%まで上昇した時間給賃金、そして前日の9月雇用情勢インデックスや8月労働市場情勢指数など、労働市場の安定的拡大が明らかとなりました。FRBが完全雇用と想定する失業率5.2%-5.0%の水準に達したことで、労働市場のたるみがほとんど解消されたことになります。
JOLT求職件数の結果を受け、9/16-9/17のFOMCでの利上げの可能性が高まったとして米10年債は一時2.25%台、2年債利回りは2011年4月以来となる0.76%まで上昇しました。
労働市場の安定的拡大を示す主な経済指標推移
こうした状況下、10日付のWall Street Journal紙は『Fed Wavers on September Rate Rise』 と利上げの決定に揺らいでいる、と依然利上げのタイミングを決めかねている現状を報じています。一方で大手米銀の中には『ハト派的利上げ』に踏み切ると予想しているところもあり、直前まで予断を許さない状況が続くものと思われます。
9月の利上げを見込むとの主張の根拠のひとつが、利上げに対する不透明感の払拭によって市場を早期に安定化させたいということ。
8/24にNYダウが取引開始直後に1,000ドル以上の下落となった翌8/25、フィッシャーFRB副議長が『経済指標次第では9月の利上げもありうる』と発言しました。この発言はフィッシャー副議長からTV局側へ持ちかけたとされるインタビューの中での発言だったことから、市場の先送り観測を修正する意図があったとの見方も聞かれます。
一方で物価見通しに関する文言、『中期的なインフレ率の2%目標への回帰に合理的な自信が得られる場合』を巡る利上げ時期の予想が分かれるポイントになっているようです。実際今年に入って以降の食料品、エネルギーを除くコア・消費者物価指数(前年比)は1.6%から1.8%で推移し平均でも1.74%に留まっており、2%には及んでいないのが現状です。しかし、ここで注意すべき点は2%の物価目標への回帰が『中期的』観点から見てどうか、ということです。8月下旬のジャクソンホールでの講演でフィッシャーFRB副議長は『インフレ期待が安定している中、インフレを抑制していた要因が後退するにつれ、インフレ率が上昇していくと考える相応の理由が存在する』と表明しています。景気回復や労働市場の改善が担保できるかどうか、これが『合理的自信』を左右していると言えるかもしれません。
今回の焦点
市場が混乱する中ではFRBは動かない、との見方が一般的ですが、失業率が完全雇用を示しただけに利上げの根拠となるといわれているほか、9/4−9/5のトルコ・アンカラでのG20で米国の『緩やかな利上げ』への根回しも終了、FRBは利上げに踏み切ると予想する向きも聞かれます。ラガルドIMF専務理事はG20で「FRBは利上げ前に雇用と物価の強さを確信することが必要」と早期利上げを牽制したものの、こうした見解を押し切り、早期の利上げを実施することで市場にくすぶっている不透明感が払拭するのか注目されます。
これまでイエレンFRB議長をはじめ、FRBメンバーからは『利上げ開始』という表現を用いずに『金融正常化』という表現を恣意的に使っていると言われています。裏を返せば『非正常化』から一刻も早く脱したい、といった思いがあるのでは?との憶測も聞かれています。
イエレンFRB議長が主張してきた『経済指標次第、年内利上げが適切』との発言に変更がないことから、年内利上げは9月、10月、12月の3度のFOMCのいずれかに絞られています。
今回のFOMCでの利上げが見送られるとすれば、市場への影響を軽減する意味からも、「会見の中で利上げを既成事実化すると同時に『引締め開始』ではなく『正常化』への一歩であることを強調、10月に発表される9月の雇用統計を待って10月に利上げを開始する」との説も聞かれています。昨年10月のイエレン議長の会見のないFOMCで『量的緩和終了』を決定している経緯を考えると10月開始説も説得力があるかもしれません。折しも中国発の世界同時株安の混乱から依然癒えていない金融市場の現状を考えると9月より10月との見方も十分に考えられるのではないでしょうか。
問題は中国経済の懸念を背景に世界的に株式市場が不安定となり、ドル高・人民元安が進行するなど米国経済の懸念材料が新たに加わったことです。11日に発表された米・9月ミシガン大消費者信頼感指数は85.7と2014年9月以来の低水準となり、一部には中国経済の減速による株価下落が消費者心理を低下させたとの見通しも聞かれています。『合理的な自信』が得られるのか否か、すなわち中国の景気減速の影響が米国企業の生産活動の減速を通じ、労働市場の改善に影響を及ぼすことにつながるのか、この点の見極めの判断をどのように下すのかが大きなポイントとなりそうです。 『金融正常化』への一歩を先送りしていることが市場の不透明感を増幅させていると認識すれば9月、より慎重に捉えているとすれば10月、もしくは12月での利上げ判断となりそうです。
余談になりますが、昨年10月のFOMCでFRBは量的緩和終了を決定しました。その翌日、日銀は追加緩和に動き、日米金融政策の違いが強調されたことで円安・株高が進むと同時にFRBの量的緩和という変更のインパクトを緩和させた経緯があります。仮に今週9/16-9/17のFOMCで政策変更が先送りされ、10/27-10/28のFOMCで利上げが決定されることになれば、少なからず市場に影響を及ぼすことが想定されるだけに、これを緩和する意味からも10/30の日銀政策会合で追加緩和を行い、昨年10月同様、日米の金融当局が協調して金融政策変更の衝撃を和らげるといった可能性も興味深いシナリオかもしれません。
前回発表時(7/29)の振り返り(米ドル/円 30分足)
- ※出所:FX総合分析チャート 30分足
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FOMCとは
日本でいう日銀の金融政策決定会合に相当する委員会のことで、現在の景況判断と公開市場操作(政策金利の上げ下げや為替レートの誘導目標)の方針が発表され、アメリカの株式市場や為替レート、世界の金融マーケットに大きな影響を与えます。基本的に6週間ごとの火曜日、年に8回開催されます。