欧州 政策金利 |
発表時間 |
12/3(木)21:45(日本時間) |
前回値 |
0.050% |
事前予想 |
- |
次回ECB理事会で追加緩和策発表はある!?
直近の動向と2015年を振り返る
前回10/22の欧州中央銀行(ECB)理事会は、直接的な金融政策変更はないにしても、量的緩和に向けて何らかの布石を打ってくると思われていました。そして、結果は大方の予想通り政策変更はなく、声明文には、ECBのスタッフ経済見通しが発表される12月の理事会で現在の緩和策の効果を再検証すると記されており、ドラギ総裁も理事会後の会見で預金ファシリティー金利の引き下げなど、あらゆる選択肢について協議したことを認めました。その為、12月理事会での追加緩和策の決定が事実上予告されてしまったこともあり、焦点は追加緩和が国債等の買い入れ規模の拡大、買い入れ対象債券の拡大、あるいは追加利下げにまで踏み込むのかに移っています。
前回発表時の値動き(ユーロ/円)
- ※出所:FX総合分析チャート 15分足
ECBは今年1月の理事会で緩和拡大を発表、当初の目的であるインフレ率を目標の2%付近まで押し上げるべく、3月の理事会で2016年9月末までに1兆ユーロ(約136兆円)規模の債券を買い入れる施策を開始しました。国債の買い入れによる利回り低下によって1.04ドル台までユーロ安が進行しましたが、米FOMCが早期の利上げに慎重な姿勢を示したことで米国債利回りの低下を招き、ドル売りが優勢となったことからユーロは1.10ドル台半ばへ反発しました。その後、4月にユーロは再度1.05ドル台へ下落したものの、概ね1.08ドルから1.14ドルを中心にしたレンジ内の値動きが続きました。この間、ユーロを取り巻いた主な材料は、(1)ギリシャのデフォルト懸念と沈静化、(2)米FRBの早期利上げ観測の後退、(3)ユーロ圏経済のデフレ懸念の後退と再燃、(4)中国株の大幅下落や人民元切り下げを背景にした中国経済の後退懸念、世界同時株安、などが挙げられます。
しかし、10月のECB理事会以降、状況は一変しました。ドラギ総裁はじめ複数のECB要人から追加緩和に前向きな発言があり、その背景を裏付けるように、それ以降のユーロ圏のインフレ関連指標は低調な結果に留まっています。また、11/4に開催された米議会下院でのイエレンFRB議長の議会証言を契機に米国の利上げ観測が高まり、10月の米雇用統計も極めて強い内容を示しました。これにより、改めて欧米の金融政策の方向性の違いが鮮明となったことでユーロは再度1.06ドル台に下げ、今年3-4月時期の相場を再現するような値動きとなっています。それでも12/3の理事会で現行の政策を据え置く可能性がないわけではありませんが、敢えて緩和策実施を想定した上で、その選択肢とその可能性について記してみたいと思います。
2015年の主な値動き(ユーロ/米ドル)
- ※出所:FX総合分析チャート 日足
追加緩和策の選択肢と可能性
政策 |
種類 |
内容 |
可能性 |
---|---|---|---|
政策金利 |
預金リファイナンス金利 |
現行0.05% ⇒ ? |
小 |
限界貸出金利 |
現行0.30% ⇒ 0.15% |
小 |
|
中銀預金金利 |
現行▲0.20% ⇒ ▲0.30% |
中 |
|
QE拡大 |
買取プログラム期間延長 |
2017年前半頃まで延長 |
大 |
買取対象債券の拡大 |
ドイツ州債やギリシャ債など |
小 |
|
買取債券の増額 |
月額50〜100億ユーロ |
中 |
|
対象拡大 |
買取債券利回り下限 |
下限の解除 |
小 |
買取債券年限制限 |
年限の撤廃 |
中 |
- ※SBIリクイディティ・マーケット作成
上記のうち為替へのインパクトが大きくなるのは、中銀預金金利のマイナス金利幅の拡大や預金リファイナンス金利の引き下げだと思われます。しかし、米FRBの12月利上げの可能性が高まり、足許のユーロが1.07ドル付近(2015/11/20現在)で推移していることを考慮すると、さらなる景気悪化に備え、来年まで利下げは温存する可能性もあるかも知れません。やはり、今回実施の可能性が最も高くかつ有効なのは、現在の債券買取りプログラムの期限である2016年9月末を半年程度延長するという選択肢ではないかと考えます。ただし、市場はこの変更策については相当織り込んで来ているようで、期待するほどのユーロ売りには繋がらないかも知れませんが、それでも影響は少なからずあるでしょう。また、買取り対象となる債券の種類、利回りの下限条件、残存期間年限などの変更・拡大も緩和策として十分に機能するはずだと思いますが、個別の細かい内容にはチェックに時間がかかるため、発表直後の対応は難しいかも知れません。
年末年始のユーロ展望はECBが重要な鍵
年末から来年前半に向けてのユーロ展望については、12/3の理事会決定が重要な鍵になると思われますが、欧米金利差の拡大や調達通貨としての位置づけを考慮すれば、ユーロ安が継続、パリティー(1ユーロ=1ドル)を目指すと見るのが現実的であるように思われます。ただし、足許のユーロは2014年夏前の1.40ドルに近い水準から既にユーロ安が25%ほど進んでおり(同じ期間のドル円相場も25%ほどの円安になっている)、一部には既に充分下落が進んだとの見方もあり、むしろ買いのタイミングを待っている人たちもいることには注意が必要でしょう。同様に通貨先物市場でもユーロの売り持ちが相当膨らんでいることも頭に入れておくべきでしょう。11/11には、中銀預金金利のマイナス幅拡大に加え、ECBが資産買い入れの対象に地方債を含めることを検討していることも関係筋の話として明らかになっています。気掛りだった前回10/22の理事会の議事要旨からは、デフレリスクや景気回復の弱さや原油安が意識され、政策委員会の一部メンバーは既に10月に緩和策の拡大を望んでいたことも判っています。これらに加え、今回の仏パリでの同時多発テロによる観光収入を中心とした欧州経済全体への影響、さらには独フォルクス・ワーゲン(VW)の排ガス不正問題の影響による自動車産業への下振れ懸念を考えれば、ECBが緩和策の拡大にシフトする可能性が高いと思われます。11/20、ドラギ総裁はフランクフルトでの講演でも「インフレ率をできるだけ早急に引き上げるためやるべきことをやる」と表明し、12/3の理事会で決定すると繰り返しています。中期的にじっくりとポジションを持てる方々にとっては、12/3の理事会で何らかの追加緩和が実施されることになれば、それは絶好のユーロ売りの機会なのかも知れません。
- ※出所:ブルームバーグ
「欧州中央銀行(ECB)金融政策発表」とは
「欧州中央銀行(ECB)金融政策発表」とは、ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)が、原則として6週間に1回(2015年〜)の理事会で、そのときの経済状況から政策金利をはじめとする「金融政策」を決定し、発表することです。下旬に開催される2回目の理事会では金利を変更しない、と決めています。大きな変更があった場合にはマーケットに与える影響が大きいので、とても注目されています。