英EU離脱が及ぼす日本への影響
先週末17日(金)に英フィナンシャル・タイムズ紙が集計した主要世論調査の結果によると、依然としてEU離脱支持派が48%と残留支持派の43%を上回る状態が続いています。英オズボーン財務相は、英国がEU離脱となればGDPを3.6%程度押下げ、2年以内に50万人から80万人が失業、ポンドの大幅下落により物価が上昇、インフレ調整後の労働所得は3%程度減少して労働者一人あたり年間800ポンドの賃金カットに相当するような経済的打撃を被るとする調査結果を公表しています。さらに日本への影響に対する試算は以下の通りとなります。
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英EU離脱が及ぼす日本への影響 |
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日経平均株価 |
1,000円〜3,000円程度の押し下げ |
ドル/円 |
2円〜6円程度円高にシフト |
GDP |
0.1%〜0.8%程度の押し下げ |
仮に英国がEU離脱を決定した場合、ドル/円は100円を割れるまで円高が進む可能性があるほか、欧米株式市場の混乱の影響から日経平均にも1,000円〜3,000円程度の下押し圧力がかかると推測されています。しかし株価下落によってGPIFの運用方針上の日本株保有比率が下限に迫ると想定される14,500円程度まで下落すれば、13兆円近い日本株の買い需要が発生すると見られ、この水準が下値の一つのメドになると言われています。
ここで2014年9月18日のスコットランドの英国からの独立の是非を問う国民投票を振り返ってみましょう。当時も今回の国民投票と同様に「出口調査」は実施されず、固唾をのんで開票結果を見守りました。同年9月初旬の世論調査では、独立賛成派と反対派が拮抗していたためポンドは対ドルで下落傾向になっていました。しかし、投票日の前日からポンド買戻しの動きが強まり、開票直前には当時の高値付近まで反発したものの、独立に反対する現状維持派が勝利すると、ポンドは一転して再度下落に転じています。
当時は英国経済自体が決して盤石ではなく、ポンドは1.70ドルからの下落基調を続けており、こうした中でスコットランドの独立機運が高まって、国民投票を迎えた経緯があります。
今回、英国の国民投票でも離脱・残留支持が拮抗している世論調査を踏まえ、直近のポンドは、2014年9月当時の動きと似たような動きとなっています。因みに、スコットランド国民投票は55%が独立反対に投票し、世論調査とは異なる結果となりました。
果たして、今回の国民投票がどちらに転ぶか、政治相場特有の不透明感が高まる中で今週前半は様子見姿勢が強まり、流動性の低下も懸念されるだけに、一つ一つの報道に敏感に反応するような値動きには注意が必要かもしれません。
国民投票スケジュール
最後にもう一度、英国のEU離脱の是非を問う国民投票の開票スケジュールについて復習しておこうと思います。
まず現地23日(日本時間24日午前6時頃)に全ての投票所で投票が締め切られます。出口調査は英国の法律に基づいて実施されないことから、投票率などを考慮して思惑的に為替市場が大きく振れる可能性があるかもしれません。
さらに同日の日本時間午前9時には最初の開票結果が公表され、離脱か残留かを巡ってこの時間を前後して市場への影響が大きくなる可能性もあります。そして概ね日本時間の正午から全ての投票所での開票結果が明らかになる午後3時頃までには大勢が判明されることから、為替市場の流動性低下を中心に、神経質な値動きとなりそうです。