予想を大幅に上回った雇用統計結果
先週末の米7月雇用統計は、非農業部門就業者数が25.5万人増と予想(18.0万)を上回ったほか、6月分(29.2万)、5月分(2.4万)もそれぞれ上方修正されました。
さらに時間給賃金も前月比+0.3% (前年比+2.6%)と4月(+0.4%)以来の水準を回復するなど堅調な労働市場の回復基調の継続を確認する結果となりました。
米雇用統計非農業部門 就業者数(万人)
直近3ヵ月の月平均就業者数は19.3万人増となった一方で昨年の月平均22.0万人増を僅かながら下回っています。しかしながら昨年の失業率(5.28%)と比べ、今年は4.9%と、5.0%を下回る完全雇用に近い水準を考慮すれば就業者数増加の僅かな減少は問題視するほどではないと思われます。さらに業種別就業者数の変化を見ると建設業の数値が(前月比+1.4万)、前月(‐0.3万)から4ヵ月ぶりに増加に転じたほか、運輸・倉庫関連が増加しています。その一方で小売業が前月+2.6万から+1.5万へ低下している点からは、ネット販売の増加を裏付けているとも推測され、ネット販売を含めた堅調な個人消費(4−6月期個人消費:前期比+4.2%)が雇用拡大につながっているといった見方もあるなど広範な業種で雇用の回復が個人消費の改善に寄与していることが明らかとなっています。
米雇用統計主要業種別 就業者数
6月(万人) |
7月(万人) |
|
---|---|---|
資源・エネルギー |
-0.7 |
-0.7 |
建設業 |
-0.3 |
1.4 |
製造業 |
1.5 |
0.9 |
民間サービス産業 |
25.4 |
20.1 |
専門・企業サービス |
5.3 |
7.0 |
小売行 |
2.6 |
1.5 |
教育・医療 |
5.8 |
3.6 |
娯楽・宿泊 |
5.2 |
4.5 |
運輸・倉庫 |
-0.7 |
1.2 |
金融 |
1.5 |
1.8 |
政府関連 |
3.3 |
3.8 |
こうした結果を後押ししているのが賃金上昇で、前月比+0.3%と前月(+0.1%)から上昇。
平均労働時間も週34.5時間と前月から0.1時間上昇しており、総労働所得も前月の+0.3%から7月は前月比+0.8%へ上昇しています。
米時間給賃金 前月比(%)
今回の雇用統計の結果を受けたNYダウは2週間ぶりの高値(18,543ドル)へ上昇したほか、ナスダックやS&P500はそれぞれ史上最高値を更新して取引を終了しています。労働市場の改善が個人消費の先行きに安心感を与え、企業の設備投資を下支えすることにつがっていることも年内の利上げ観測を高めているようです。アトランタ連銀が算出するGDPナウ(GDP成長率予想)は、7−9月期の成長率見通しを+3.8%へ引上げるなど米国経済の先行きに楽観的な見通しを示しています。仮にこうした好調なペースでの成長が年内も続くことになれば、2016年の米GDPは概ね+2.0%成長につながり、潜在成長率(2.0%)を回復するとの期待も年内の利上げ観測の根拠となっています。
7月雇用情勢インデックスやFRB労働市場情勢指数、さらに今週末12日に発表の米7月小売売上高で米国経済の底堅さを改めて意識されれば、今月26日に各国中央銀行総裁らが一同に会すジャクソンホールで行われる経済シンポジウムでのイエレン議長の講演で『年内利上げ』に前向きな発言への期待がさらに高まることになるかもしれません。
ただ、こうした利上げ観測が一段と高まることがNY株式市場の上昇の足かせになるのか、株価収益率が17倍まで上昇するなど高値警戒感も出始めているNYダウの値動きも含め、ドル円が本格的な反発基調に転じることになるのか市場動向をしばらく注視する必要がありそうです。