FOMCは想定どおり利上げ 来年の政策金利見通しも上方修正
12/14のFOMCでは、予想通り昨年12月以来一年ぶりに0.25%の利上げが実施されました。
イエレン議長は、先行きの景況感見通しについては、前回9月時点からほぼ変わらずの小幅な上方修正に留める一方で、政策金利見通しは市場予想(年2回)を覆す来年3回の利上げ予想を示しました。
こうした結果を受けた米債券市場は2年債利回りが7年ぶり、10年債利回りが2年ぶりの高水準へ上昇したこともあり、ドル円は12/15(木)に今年2月初旬以来、10ヵ月ぶりとなる118円66銭まで円安が進んでいます。
また、ユーロは13年ぶりの安値となる1.0366ドルへ下落するなど、米国と欧州や日本との金融政策の方向性の違いや金利差拡大を背景にドル高が進んでいます。
FOMC政策金利見通し (2017年末、2018年末)
- 出所: SBIリクイディティ・マーケット社
FOMCメンバーによる政策金利見通しでは、2017年末の政策金利見通しの予想中央値が1.375%、2018年末が2.125%といずれも年3回の利上げを見込んでおり、大方の市場予想とされた年2回の利上げ予想を上回る結果となりました。
その他、2017年、2018年、2019年の実質GDP、失業率、個人消費支出のFOMC見通しは次の結果となり、いずれも前回9月から若干上方修正されました。
FOMC 実質GDP見通し(2017年末、2018年末、2019年末)
- 出所: SBIリクイディティ・マーケット社
FOMC 失業率見通し(2017年末、2018年末、2019年末)
- 出所: SBIリクイディティ・マーケット社
FOMC 個人消費支出(前年比) 見通し(2017年末、2018年末、2019年末)
- ※ 変動の大きな食品・エネルギーを除いた、PCEコアデフレータ
出所: SBIリクイディティ・マーケット社
トランプ政権でドルの堅調地合いはしばらく続きそう
イエレン議長は会見の中で、次期トランプ政権が掲げる財政政策について、判断するのは時期尚早と述べた一方で、減税策によって労働生産性が押し上げられる可能性に言及しており、次期政権の市場への影響を協議したことを明らかにしています。
さらに今後の政策運営の実効性次第では、さらなる利上げの可能性を示唆したことも、ドルの上昇に拍車を掛けたと思われます。
来年1/20にトランプ氏が第45代米国大統領に就任しますが、議会では財政政策や減税政策などこれまでトランプ氏が掲げてきた政策を中心に審議が進み、早ければ秋にも具体的に政策の一部が実施されることになります。
「期待」と「現実」との乖離、さらにドル高進行に対する米産業界からの懸念などに次期政権がどのように対応するのか注目されます。
さらに「雇用第一主義」を掲げるトランプ次期政権が、失業率が4.6%とほぼ完全雇用の状況下で、かつ、インフレ期待が高まる中での積極的な財政政策が、FOMCで示された来年3回(0.25% x 3)の利上げ以上に加速される可能性もあるだけに、ドルの堅調地合いはしばらく続きそうです。
その一方で保護主義的な貿易政策や財政赤字拡大懸念などにどのように対処していくのか注視していく必要がありそうです。
ドル円 週足チャートでは「三役好転」を確認
- 出所: FX総合分析チャート ドル円 週足
ドル円は昨年来高値・安値の61.8%(115円60銭)を明確に上抜けたことで心理的節目とされる120円を目指すとの見方も聞かれています。
ドル円の週足チャートを見ると、12/5の週に一目均衡・週足の雲を上抜けた後も上昇を続け6週連続して円安が進んでいます。
さらに、(1)雲を上抜け (2)遅行線(26週前の水準)を上抜け (3)転換線が基準線を上抜け
という、テクニカル面でいわれる「三役好転」が確認されていることもあり、円安が長期化するという見通しを強めているとも言えます。