良好な雇用統計を受けてFOMCでの利上げはどうなる?
3/10(金)に発表された米2月雇用統計での非農業部門就業者数は23.5万人増と予想(19.0万人増)を上回ったほか、前月も速報値22.7万人から上方修正され23.8万人増となり、あらためて労働市場の堅調さが確認されました。
先月の1月雇用統計では時間給賃金の伸びが鈍化したことがFRBの早期利上げ観測を後退させる一因となりましたが、今回は前月比+0.2%、前年比+2.8%へ改善したほか、前月分もそれぞれ上方修正されました。
総労働投入時間が前月比+0.2%と3ヵ月連続で上昇し、労働所得も前月比+0.4%と上昇しているように、所得水準の改善が明らかになり、堅調な労働市場の改善が続いていることが示されました。日本時間3/15(水)27時に発表が予定されているFOMCでの利上げはより確実となったといえるでしょう。
2月米非農業部門就業者数(万人:左軸) 失業率(%: 右軸)
- ※出所:米労働省
米時間給賃金 前年比(%:赤) 前月比(%:青)
- ※出所:米労働省
FOMCでは、政策金利目標を現行の0.5%〜0.75%から0.75%〜1.00%へ引き上げることがほぼ織り込まれており、市場の注目はFOMCメンバーによる政策金利見通し(ドッド・チャート)が前回12月時点からどれだけ上方修正されるかに移っています。
2月下旬から先々週にかけては、FRB正副議長や複数の理事、地区連銀総裁など大多数の高官が早期の利上げに前向きな意思を示し、「年3回の利上げが適切」というのがコンセンサスのようです。
3月の利上げが単純に6月利上げの前倒しに過ぎず、今年3月、9月、12月の年3回の利上げ方針に変更がないのか、または、状況次第で3月利上げ後も6月、9月、12月と今年4回の利上げに含みを残すものになるのか、イエレン議長の会見とともに今回のFOMCでのメンバーによる先行き金利見通しが注目されます。
FOMCに続くトランプ大統領 予算教書のポイントは? 直近の原油安も気になるところ…
3/16は、トランプ大統領が議会に対し2018年会計年度の予算骨子を議会に示す予定となっており(予算教書)、議会共和党とトランプ政権との関係性を探る手掛かりとなります。トランプ政権が掲げる財政拡大によるインフラ投資や減税策に対し、財政赤字拡大の懸念から景気対策に慎重な見方を示す共和党が、政権に協力的な姿勢を示すのか興味深いところです。
トランプ大統領が選挙期間中に掲げた10年間で1兆ドルの社会インフラ整備や米本国投資法(Homeland Investment Act)の導入など、大規模な税制改革が議会の理解や協力を得て円滑に進むという楽観的な見通しが高まれば、先行きのインフレ上昇期待を先取りした米長期金利の上昇で、ドル高が加速するかもしれません。
また、先週後半以降続いている、原油価格の下落が一時的な現象なのか、しばらくこうした傾向が続くのかについても気になるところです。原油価格の動向は物価見通し、インフレ見通しに大きく影響を及ぼすだけにFRBの金融政策の行方も左右しかねません。
トランプ政権の経済政策と原油価格の下落というインフレに影響を及ぼす異なる二つの要因をFRBがどう判断するのか、今後の金融政策を占う上でポイントとなりそうです。
ドル/円 115円は当面の上値なのか? 下値となるのか?
ドル/円は3/10(金)の雇用統計発表直前に115円51銭まで上昇後、114円66銭まで反落するなど、115円〜120円のレンジに移行すると確信するには心もとない状況です。
それだけにFOMCの結果を見て115円台半ばを上抜け、今年1/3の118円60銭、昨年12月の118円66銭を目指すのか、それとも115円51銭を高値に110円から115円というレンジ形成に向うのか、非常に重要なポイントに差し掛かっています。
115円が下値として意識されるのか、上値として意識されるのか、今年これからの相場を占う分水嶺になる可能性もあります。
ドル/円 日足
- ※FX総合分析チャート