トランプ大統領「ドルは強すぎる」発言で、現在のドル円は?
ドル円は先週4/12(水)に110円割れとなって以降、円高の進行が止まらないまま4/17(月)の東京市場では108円13銭まで円高が進みました。
シリア、北朝鮮などの地政学的リスクの懸念のほか、4/12(水)にはWall Street Journalのインタビューでトランプ大統領が「ドルは強すぎる、低金利が望ましい」と発言したことから、米国のドル高政策が変更された可能性があると英国のメディアが報じています。
また追い打ちを掛けるように米3月消費者物価指数(前月比)が2016年2月以来のマイナスに転じたほか、エネルギーや食料品を除くコア指数(前月比)も2010年1月以来7年2ヵ月ぶりにマイナスに転じています。
さらに米3月小売売上高も2ヵ月連続のマイナスに落込んだことから、6月FOMCでの追加利上げの可能性が低下したとの見方も聞かれています。
米小売売上高(前月比, %) 推移
- ※出所:Bloomberg
米大統領選以降のドル円 (日足)
- ※出所:FX総合分析チャート
フランス大統領選・シリア・北朝鮮・・・ 直近の状況は?
4/23(日) フランス大統領選第一回目投票を前に各候補の支持率は?
4/23(日)にフランス大統領選第1回目の投票が行われます。
極右政党・国民戦線ルペン党首(14日時点の支持率:23%)、政治運動「前進」の設立者マクロン候補(同22.5%)、急進左派・左翼党のメランション党首(同19%)、さらに中道右派・共和党議員のフィヨン候補(同19%)と支持率が接近する4候補で争われます。
仮にルペン候補が勝利すればユーロ安・ドル高に向かう可能性が高く、トランプ大統領の「ドルは強すぎる」発言とは相反する結果になる可能性もありそうです。
4/23(日)の第1回目投票の結果、1位の候補者の得票数が過半数に届かなかった場合、上位2名による第2回目投票が、5/7(日)に行われ、第2回目の投票により仏大統領が決定します。4/14現在の当選確率予想は次のとおりとなっており、第1回目で落選した候補の票が流れることを受けて、マクロン候補優位と予想されています。
仏大統領選挙 当選確率予想 (4/14現在)
- ※出所:Bloomberg
シリア・アフガニスタン・北朝鮮情勢の動向は?
米軍は4/7(金)にシリアへのミサイル攻撃、4/13(木)にはアフガニスタンのIS(イスラム国)施設に非核兵器としては破壊力が最大となる大規模爆風爆弾(MOAB)を投下し、軍事力を誇示しているトランプ政権の強権的外交戦略も地政学的リスクを増幅する一因となっているかもしれません。
一方で、北朝鮮は4/15(土)の故金日成元国家主席の生誕105周年を祝う「太陽節」の軍事パレードで、新型のICBM(大陸間弾道ミサイル)や特殊部隊を初めて披露するなど軍事力を誇示し、米国から一歩も引かない対抗姿勢を全面に出しています。
北朝鮮は4/16(日)には日本海に向けてミサイルを発射したものの失敗に終わっており、一説には米軍のサイバー攻撃が実施され、妨害による発射失敗が繰り返されているとの見方もあり、北朝鮮は成功するまでミサイル発射を繰り返す可能性も否定できません。
また、来週4/25(火)には朝鮮人民軍創建85周年を迎えますが、これに合わせるように米国の原子力空母『カールビンソン』が韓国の東海岸に到着するとの報道もあり、北朝鮮情勢を巡る緊張状態はしばらく続きそうです。
北朝鮮の金正恩書記が挑発行動を自制し、朝鮮人民軍創建85周年の席上で、「米軍は我が人民軍の強大な軍事力を前に恐れをなして撤退した」と刀を収めれば緊張緩和に向かう可能性があるものの、その可能性はわずかかもしれません。
米10年債利回りは低下 今後のドル円は?
イエレンFRB議長は4/7(金)に発表された米3月雇用統計で失業率が4.5%まで改善したことに触れ、「米国経済はかなり良い状態にあり、利上げを待ち過ぎたくはない」との考えを示していました。
また、イエレン議長は「FOMCの決定は政治の影響を受けない」と断言していますが、政治・地政学的リスクが高まっている中、「年3回の利上げ + バランスシート縮小」を実行するのかが今後の注目材料となりそうです。
先週末の日本の債券市場では、新発10年国債の利回りが前日比0.005%低下の0.015%となり、北朝鮮を巡る地政学的リスクへの警戒から債券先物は4日続伸(債券利回りは低下)しています。
一方、米債券先物市場でも、米10年債利回りは2.25%と昨年11月以来の水準へ低下、日米金利差が3月のFOMCでの利上げ以降、縮小傾向が続いていることもドル円の下押し圧力につながっています。
米10年債利回り (%)
- ※出所:Quants Research Inc. チャート
ドル円の今後の水準については、トランプラリー(大統領選直後の安値101円19銭とその後の高値118円66銭)の61.8%にあたる107円86銭までの下落に備える必要があるかもしれません。