日銀政策会合では物価見通しの下方修正はあるか?
7/7に日銀は「指値オペ」を5ヵ月ぶりに実施すると共に、中長期国債買入れの増額をあわせて実施しました。
緩和政策からの出口論が浮上しているECBや、バランスシートの年内縮小開始が現実味を帯びつつある米FRBと比べると、日銀と欧米中銀の金融政策の方向性の違いが一段と鮮明になっています。
今週7/20(木)の日銀政策会合後の黒田日銀総裁の会見では、長期金利上昇の抑制に対する強い意気込みと同時に、成長率見通しや物価見通しの引き下げについて言及があるかが注目されます。
6月末に公表された5月の消費者物価指数は前年同月比+0.4%(除く食料品)、0.0%(除く食料品、エネルギー)となり、依然として日銀の掲げる2.0%の物価目標から大きく乖離した状況です。2%の物価目標の達成時期の見通しも従来の「2018年頃」から6回目の「先送り」となる可能性もありそうです。
日銀の金融政策は緩和継続の見通しで、主要国の引き締めに向かう動きとは方向性が異なっているため、円安バイアスがかかるといった見方が多く聞かれています。
一方で英国やECB、さらに先に利上げを決めたカナダ中銀も含めて、利上げが持続的なものではなく一過性であるとすれば、過度な円安期待をすべきではないとする見方もあり、黒田総裁の会見に対する市場の反応に注目です。
ユーロ圏6月消費者物価指数は伸び悩み、ECB理事会ではユーロ高のけん制あるか?
6/27の会見でドラギECB総裁は、「デフレ圧力はインフレに変換された」と発言したことで、「金融緩和の解除に向けて、道筋が意識された」と捉えられ、ドイツを中心に欧州各国の長期金利は上昇基調に転じています。
一方で、7/17(月)に発表されたユーロ圏6月消費者物価指数(前年同月比 改定値)は+1.3%となり、前月(+1.4%)から低下し今年最低となったことで鈍化傾向を強めています。
ユーロ圏 消費者物価指数 前年同月比(%)
- ※出所:Eurostat
市場では9月のECB理事会で来年以降の債券買入れ額の減少開始を明言するのではないかとも見られており、ユーロは7/18午前の東京市場で今月7/12に付けた昨年5月以来となる1.1489ドルを上回る1.1537ドルまで上昇しています。
先週末の7/14に発表された米小売売上高や消費者物価指数の鈍化によるドル売りの影響もあり、ユーロは堅調な推移が続いています。
こうした中で7/20の理事会では、ドラギ総裁が債券買入れの縮小について、これまでより踏み込んだ発言をするのか、あるいは物価上昇の鈍化がユーロ高など為替要因によるものとしてユーロ高をけん制するのか、発言内容に注目です。
FRBのバランスシート縮小はうまくいくのか?来週7/27はFOMC、8月はジャクソンホールで講演
先週、イエレンFRB議長は半期に一度の金融政策を巡る議会証言で「インフレは目標を下回って推移」、「インフレを注意深く見守っていく」として、年内の再利上げを左右するインフレの見通しに慎重な見方を示しました。
利上げを決定した6月FOMC後の会見では、「低インフレは一時的」と述べていただけに、1ヵ月の間に強気姿勢が一転弱気に転じることになりました。一方で、バランスシート縮小を年内に開始する方針には揺るぎはないようです。
現実化しつつあるFRBのバランスシート年内縮小開始に対して、JPモルガン・チェース銀行のダイモンCEOは、
「過去、誰も経験したことのない量的緩和の縮小に対して、事態がどのように進展するのかを知っているかのように振る舞っているものの、実際、どうなるのかは誰も解らない」
と警鐘を鳴らしています。
現状では、FRBはバランスシート縮小開始から一年後の月間削減額を500億ドルとしていますが、果たして月間500億ドルもの削減(年間で6000億ドル=約67兆円)が金融市場に影響しないと言い切ることができるのか懸念があります。
バランスシート縮小が開始されるとFRBが再投資を止める分の償還金は財務省が支払うことになりますが、財務省はこの資金を市場から調達(=資金吸収)することになります。この新たなオペレーションが金融市場に全く影響しないと言い切れるのか、イエレン議長が市場と上手く対話できるのかが焦点となりそうです。
イエレン議長は8/24-26に米・ワイオミング州、ジャクソンホールで開催される経済シンポジウムの講演でバランスシート縮小について、より具体的な言及をするかもしれません。
市場の一部では9月のFOMCでバランスシート縮小を決定し、10月から開始と予想されていますが、来週7/27のFOMCで、より具体的な道筋が示されるのかが注目となりそうです。