北朝鮮情勢で、落ち着いていたVIX指数も急上昇
先週8/7のNYダウは22,118ドルで取引を終え、10日続伸と同時に、9日連続で史上最高値を更新しました。さらにS&Pも史上最高値を更新したほか、ナスダックも7/26に付けた史上最高値(6,422)に迫る6,383まで上昇しました。
FRBの緩やかな利上げペースを織り込みながら、恐怖指数といわれるVIX指数も9.89で終了し、10.0前後の低水準で安定した推移を続けていたこともNY株式市場の堅調な地合いを支えていました。
VIX(ヴィックス)指数とは
米国のS&P500指数を対象としたオプションの取引価格から推計される、予想変動率をもとに作成される指数です。
通常は10から20程度の値ですが、相場暴落時には30から40程度まで上昇することもあります。市場参加者の感情を反映することから「恐怖指数」とも呼ばれます。
しかし国連安保理が北朝鮮に対する経済制裁を全会一致で決定したことで、北朝鮮が「弾道ミサイルによるグアム島周辺海域への包囲射撃を検討」と応じたことから、トランプ大統領も軍事攻撃の可能性を示唆したため、穏やかな推移が続いてきた金融市場に動揺が走りました。
8/10のNYダウは、北朝鮮情勢を巡る緊迫化を背景に204ドル安の大幅下落となり、VIX指数は一時17ポイント台へと急上昇しました。
VIX指数 1年間の推移
- ※出所:Bloomberg
ボラティリティーの売りポジションを膨らませていたクオンツ系のヘッジファンドの中には、今回のVIX指数急上昇を受けて多額の損失を被ったところもあるとの観測も聞かれています。また、米国投資信託協会によると、リスク回避の動きで、株式投信から債券投信への資金流入が急速に増加しているようです。
8/11のナスダックは、前日の大幅安から反発に転じたものの7/26に付けた史上最高値から2.7%ほど下落しているほか、NYダウも史上最高値から約1%ほど下落するなど、連日史上最高値を更新していた勢いが薄れており、一時的な調整なのか見極める必要がありそうです。さらに、S&P500指数採用銘柄の約40%にあたる200社の株価が高値から既に10%ほど下落しており、米株価は調整局面入りしたのではとの見方も一部では出ています。
ただ、8/14にはS&P500指数が前週末比1.00%高、VIX指数も20%下落し、落ち着きを取り戻した気配もあります。
先の読みづらい展開が続いておりVIX指数の動きが注目されます。
北朝鮮関連の直近のイベントを確認すると、8/15に祖国解放記念日、8/21から米韓合同軍事演習、8/25に金正日前書記が軍政を開始した先軍節、そして9/9には建国記念日を控えるなど、挑発行為に打って出るための口実には事欠かない状況です。
こうした緊張によって株式市場から債券市場への資金流入が一段と続けば、NY株式市場が本格的な調整局面入りする可能性もあり、今後の進展を注意して見ていく必要がありそうです。
2017/4以降のNYダウ推移
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット