12月に利上げする方針を維持する姿勢を示す可能性は?
先週のドル円は、11日の東京市場で108円台前半から動き出し、同日のニューヨーク市場であっさり109円台に乗せていたものの、7月下旬から9月8日までずっと続いたドル売り・円買い基調を考えると、まさか週末までに111円台までドル買いが進むと予想出来た人は数少なかったように思われます。
ドル円が111円台まで上昇した背景は、米連邦準備理事会(FRB)の12月利上げは先送りになっていたとの市場の見方が、今週の連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBが12月に利上げする方針を維持する姿勢を示す可能性が高まったとして米長期金利が上昇したことが大きかったようです。
そのため、21日の東京時間の未明に発表されるFOMCの声明でタカ派的な姿勢が示されなければ、ドル円に大幅なドル売り・円買い調整が入る可能性もあります。
もっとも今回のFOMCではイエレン議長の会見も予定されており、今後の金融政策やバランスシートの縮小開始などについての発言によって先行きの米長期金利がどう動くかにも影響を受けることになりそうです。
FOMCの声明文に、税制改革を巡る議会運営の内容も含まれるのか?
先週の米議会は、ハリケーン・ハービーによるテキサス州を中心とした被害への救済法と併せて、今月末に期日が迫っていた債務上限問題を上下両院で12月まで延長することを可決しています。
トランプ大統領は、就任以降8ヵ月経過したにも関わらず財政政策、オバマケア代替改正法案、税制改革など何一つ成果を上げることが出来ずにいましたが、ハリケーン被害の災いを持って比較的容易に債務上限問題可決に転じさせたことで、これまで未消化だった法案成立に向って一気に動き出す兆しすら見え始めています。
税制改革法案の骨子は来週25日に公表され、年内の法案成立に向けて議会も政権と前向きに動き出そうとしています。低インフレに悩むFRBにとっても、税制改革に道が開かれることになれば企業の労働生産性の向上にもプラス効果となるだけに、賃金上昇にも期待が持てることになります。
FOMCの声明文の中に、税制改革を巡る議会運営の行方にも触れるような内容が含まれるのか、或いは直接イエレン議長が発言をするのかにも注目です。
バランスシートの縮小開始決定の際、株式市場・為替市場への影響が注目!
トランプ大統領にとっては全くもって迷惑以外の何物でもなかった北朝鮮問題も、12日の国連安保理で対北朝鮮制裁案が全会一致で可決されたこともあって、NYダウ、ナスダック、S&Pは揃って史上最高値を更新しています。
そのためFOMCでバランスシートの縮小開始が決定された際には株式市場の反応が注目されると同時に為替市場への影響が気になるところです。
先週、ムニューシン財務長官は「FRBの独立性に敬意を表するが経済成長を懸念しており、景気押し上げを目的に税制改革や規制緩和、さらに貿易赤字の是正に対処している中で、現在インフレは問題になっていない」とFRBの緩和解除にけん制とも受け取れる発言をしています。
この点でも今回のFOMCが財務長官発言の影響を受けずに、どのような決定を下すことが出来るのかも注目となりそうです。
FOMCの決定同日に、ドラギ総裁の発言に要注意!
ドル円は米長期金利動向の影響を最も大きく受ける傾向にありますが、この一週間ではカーニー英中銀総裁の「今後数カ月で利上げが必要になる可能性がある」との発言から英国債金利が上昇。
ポンドが急上昇したことによる影響も少なくなかっただけに、FOMCの決定がある同日の講演で、ドラギECB総裁がECBの出口戦略に絡めたユーロ高を懸念するような発言を繰り返すかどうかにも注意が必要でしょう。
為替市場ではFRBの12月の利上げ確率が相当低下していただけに、やはり12月利上げの可能性の確証が得られるかどうかが最大のポイントかも知れません。