年末年始の金融市場見通しを語る上での3つのポイント
① 米税制改革法案を巡る議会審議や採決の行方
② 26年ぶりの高値(23,000円台)を回復した日経平均、海外投資家の日本株投資動向
③ パウエル次期FRB議長の金融政策への基本方針
今週は11/15に内閣府から発表される7-9月期GDP速報値や、米10月消費者物価指数、小売売上高などの日米経済指標が、為替・株式市場に影響を及ぼしそうです。
11/8にNYダウは23,575ドルまで上昇(終値:23,563ドル)し、史上最高値を更新しました。
しかし、税制改革法案を巡り、米議会上下両院が法人税減税の実行時期や税率段階、さらには住宅ローン利子に対する控除上限額などを巡って異なる案を提示したことから、今後上下両院での調整が難航する可能性が嫌気され、NYダウは続落となりました。
9/4の週から10/30の週まで9週間上昇が続いていたNYダウは、先週を通じて0.5%安と週間ベースでマイナスに転じました。
議会 |
法人税減税 |
税率構造 |
住宅ローン利子控除 |
相続税 |
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上院案 |
2109年から実施 |
現状のまま |
100万ドルで維持 |
維持 |
下院案 |
2108年から実施 |
現状の7段階から |
100万ドル⇒50万ドルへ |
段階的削除 |
日本の7-9月期GDP速報値に注目が集まる
一方の日経平均は週間ベースで9/11の週から先週まで9週連続で上昇する中、外国人投資家は9/25の週から10/30の週まで6週連続で買い越しており、この間の日経平均の上昇(2,242円)を牽引しました。
しかし、11/9の日経平均は、午前中に一時468円高の23,382円と1992年1月以来の水準まで上昇したものの、午後に入り一転、390円安の22,522円まで急落しました。日経平均株価と25日移動平均線との乖離率が8%近くまで拡大、高値警戒感が強まる中、先物主導のまとまった売りが相場の振れ幅を大きくした一因のようです。
NYダウの週間ベースでの上昇が前週までの9週連続で途絶え、外国人投資家の日本株投資の勢いにも陰りが見られるようであれば、日経平均も調整局面を迎える可能性が懸念されます。
こうした懸念を払拭することができるのか、11/15に内閣府から発表される7-9月期GDP速報値が注目されます。
日本 実質GDP(前期比年率)

- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット社
市場予想は+1.5%と7四半期連続でのプラス成長が見込まれ、1999年4-6月期から2001年1-3月期までの8期連続でのプラス成長以来、約16年ぶりのプラス成長持続となるか注目されます。
内訳では、相次ぐ台風など天候不順の影響による個人消費の減少や公共投資の鈍化が予想される一方、海外向け電子部品や工作機械などの外需が成長支援を後押しすると見られています。
さらに今回の日経平均株価の上昇が今後の個人消費にプラス寄与する期待もあるだけに、来年半ばまで10四半期連続のプラス成長も見込まれています。
北朝鮮情勢の緊迫化といった波乱要因がなければ、企業収益の改善に支えられた企業の設備投資や個人消費の回復も見込まれ、外国人投資家による日本株投資の勢いは今後もしばらく続くと見られています。
日経平均、米ドル円 日足 対比(3ヵ月間)

- ※出所:Quants Research Inc.
しかし、11/9の午前中に日経平均が一時468円高の23,382円まで上昇した場面でもドル円は114円07銭までの小幅な上昇に留まるなど、日経平均の上昇が必ずしも円安支援にならないことが明らかとなっています。
また、米議会下院は、税制改革法案について11/9に委員会審議を終え、今週から本会議での審議に移ります。現状では議会下院は11/23まで、議会上院は感謝祭明けまでの法案可決を目指すとしていますが、先行きには紆余曲折が予想されていることもドルの上値抑制の一因になりかねません。
しかし、次回12月のFOMCでの追加利上げがほぼ確実視されていることがドル円の下値支援になっています。
市場の来年以降のFRBの金融政策を視野に入れながら、税制改革法案の行方がどの程度、為替・株式市場に影響を及ぼすのかを考慮しつつ、ドル高が一段と進むのかを冷静に見極めようとしているようです。
NY原油市場は一段高となるか?
原油価格はサウジアラビアの政情不安やOPECの減産再延長の思惑(OPEC総会は11/30開催)などを背景にしながら11/8には2015年7月以来、2年4ヵ月ぶりの高値となる57.92ドルまで上昇しました。

- ※出所:Bloomberg
こうした中、来年2月以降、次期FRB議長に就任するパウエル理事は、イエレン議長の金融政策を引き継ぎ『金融政策の正常化』を推進するものと見込まれています。原油価格の一段の上昇のほか、税制改革法案の行方次第ではインフレ期待が一段と高まる可能性もあるだけに、来年3回の利上げが見込まれているFRBがよりインフレ警戒を強めることになるのか注目です。
年末年始を見据え、米税制改革法案の行方や日米株式市場の動向、さらには原油価格にFRBの金融政策といった幾つかの要因の組み合わせ次第ではドル円の一段の上昇が見込まれるだけに、こうした重要な材料の変化を慎重に見極めていく必要がありそうです。