11月米雇用統計 結果を確認
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | |
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非農業部門 雇用者数(万人) | 20.7 | 14.5 | 21.0 | 13.8 | 20.8 | 1.8⇒3.8 | 26.1⇒24.4 | 22.8 |
失業率(%) | 4.4 | 4.3 | 4.4 | 4.3 | 4.4 | 4.2 | 4.1 | 4.1 |
時間給賃金 前月比(%) | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.2 | 0.5 | 0.0⇒0.1 | 0.2 |
時間給賃金 前年比(%) | 2.5 | 2.4 | 2.5 | 2.6 | 2.7 | 2.8 | 2.4⇒2.3 | 2.5 |
※出所:米労働省
先週末8日に発表された米11月雇用統計は、非農業部門就業者数が予想を上回る22.8万人増となり2ヵ月連続で20万人超の増加となりました。また、直近3ヵ月平均でも17万人増となったほか、失業率も2ヵ月連続で4.1%とほぼ完全雇用に近い堅調な労働市場を反映する結果でした。ちなみに大統領選のあった昨年11月の就業者数は16.4万人増、失業率は4.6%でした。
一方で、時間給賃金は前月比+0.2%、前年比+2.5%に留まるなど、いずれも市場予想を下回る結果となりました。労働市場がほぼ完全雇用状態にある一方、賃金の伸び悩みが指摘され低インフレの状態が示されたことで、FRBの金融政策もインフレ率上昇の予防的措置を急ぐ必要はないとの見方もあり、雇用統計直後のドル円は113円56銭から一時113円14銭へ下落しました。
さて、時間給賃金は今年1月以降確実に上昇していることが確認されているものの、前月比・前年比(変化率)のグラフと比べると違った印象を持つかもしれません。
米時間給賃金 前月比(%) 、 前年比(%)
- ※出所:米労働省
週間の平均労働時間が前月比+0.1時間増の34.5時間に上昇した結果、民間雇用者数×週平均労働時間で計算される総労働投入時間は前月比+0.5%と6月以来の高い伸びとなりました。時間給賃金が市場予想を下回る前月比+0.2%に留まる中、労働所得(総労働投入時間×時間給賃金)も前月比+0.7%とこちらも6月以来の高い伸びとなりました。それでも時間給賃金(前年比)は+2.5%と前月から上昇したものの、賃金上昇圧力の弱さが懸念される結果となっています。
しかし、就業者数の産業別内訳をみると製造業が3ヵ月ぶりの高い伸びを記録する中で耐久財産業が8月(+3.4万人)に次ぐ今年2番目の高水準となりました。住宅市場に左右され易い建設業も持ち直しが確認されています。またクリスマス商戦が本格化するには時間のある小売業の就業者数が+1.9万人と大きく上昇(前月:-2.2万人)しています。前年11月(-1.3万人)から見ても株式市場の上昇による個人消費の改善が影響しているのかもしれません。
米業種別就業者数 (万人)
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
また、現在議会で審議されている税制改革法案が可決成立すれば、企業収益の改善が期待され、インフレ期待を押し上げると同時に優秀な人材確保を競う流れとなれば、時間給賃金の上昇も期待出来そうです。
ほぼ完全雇用と言える労働市場なだけに、FOMC委員からは人口動態やネット販売の騰勢など、業種による「構造的な変化が要因の可能性」と指摘する声がある一方、「物価の停滞は一時的」との見解でまとまっており、日本時間、今週14日午前3時のFOMCでの0.25%の利上げは確実視されています。
さらにFRB議長として最後の記者会見となるイエレン議長の発言が注目されるものの、来年2月からのパウエル新議長の下、来年の政策金利見通しについて9月FOMCでは16人の委員の内、6人が年3回を主張していたこともあり、今回のFOMCで変化が見られるのか注目されます。