注目の日銀政策決定会合に向けて
日銀金融政策決定会合 |
発表時間 |
1/23(火)昼頃(時間未定) |
為替市場は円高が進む
1/9に日銀が公開市場操作で残存期間が10年超25年以下、25年超の利付国債買入れ規模を前回からそれぞれ100億円減額しました。市場では日銀が緩和解除に向けた地均しに動き始めたとの見方が広がり、為替市場が円高に反応したほか、欧米の長期債利回りも上昇しました。
昨年12月時点でのマネーサプライの増加量(前年同月比)は42.6兆円に留まり、2013年4月の異次元緩和実施以降、最低の増加幅になっており、緩和解除に向けた一連の流れが続いているとの思惑を高める結果となりました。市場ではステルス・テーパリングの思惑から、ドル円は円高が進んでいます。
米ドル/円(日足)
- ※出所:Quants Research Inc.
ECB理事会議事要旨受けユーロ高に
1/9の欧米主要各国の債券市場でも長期債利回りが上昇、米10年債利回りは昨年3/15以来10ヵ月ぶりとなる2.55%に迫る水準まで上昇しました。また中国が米国債投資の減額・停止を検討との報道も、米長期金利の上昇につながりました。
さらに、1/12には米2年債利回りがリーマンショック以来となる2.02%へ上昇、2年債‐10年債との利回り格差が縮小(長短金利のフラット化)したことからドル安につながり、ドルの対主要通貨での強弱を示すドル・インデックスも昨年一年を通じての最低水準を下回る水準まで低下しています。米国税制改革法案によって、今後インフレ率の上昇とともに賃金の伸びが加速すると見込まれています。実際、一部の企業は賃上げや1000ドルのボーナス支給に踏み切るなど、賃金の増加ペースは加速する可能性が囁かれています。こうしたことから、FRBは今年3回ではなく4回の利上げの可能性を指摘する声が意識され始めていることも、米2年債利回りの上昇につながったと言われています。
また、1/11に公表されたECB理事会議事要旨では、2018年初めからガイダンスの緩やかな変更を検討する可能性が指摘されており、フォワードガイダンスの変更やインフレ圧力への言及があったこともユーロ高への契機につながりました。
ユーロ/米ドル(日足)
- ※出所:Quants Research Inc.
今後の注目点は!?
世界経済の好調さは主要各国の株価指数上昇に表れ、NYダウ、ナスダック、S&PはFTSE100とともに史上最高値を更新しているほか、日経平均株価も26年ぶりの水準を回復しています。少なくとも米税制改革法案によって米国の成長率は上振れが期待されるほか、1/9に公表された世界銀行による2018年の世界経済の成長率予想は、従来の+2.9%から+3.1%へ上方修正されています。
しかしながら、今後、米国の長短金利差(イールド・スプレッド)の逆転への可能性も含め、2017年〜2018年の反動から2019年の世界経済の成長持続に確信が持てないといった不透明感が生じていることも事実です。欧米をはじめ豪・カナダなどの各国中銀が緩和政策からの出口をどのように探り、どのように政策に反映させるのか、さらにはいずれ訪れるであろう景気変調をどの程度意識するのかが、今後の注目点となるでしょう。
こうした中、日銀では今年3月に岩田・中曽両副総裁が任期満了を迎えるほか、4月には再任が囁かれてはいるものの、黒田総裁も任期を迎えます。日経平均株価が26年ぶりの高値を回復、賃上げも予想されるなど景気回復の実感が徐々に裾野を拡大する中で、内閣府が公表する景気動向指数の基調判断では、景気回復期が「いざなぎ景気」を上回り戦後2番目の長期間に渡っています。
来年2019年の世界経済が減速するなど景気変調に転じたり、北朝鮮問題に急を要する事態が発生するようなことになれば、現状の日銀の金融政策では景気刺激策などの選択肢が殆ど残されていないのが現状です。
しかしながら、政策の変更は緩やかなものであっても短期的な弊害はある程度想定する必要があります。それだけに、消費者心理や株価指数が上向くなど好調が続く現状と同時に、日銀正副総裁の人事異動が迫るこの時期の政策の変更は、市場への影響を最小限に留める好機かもしれません。
企業業績の上振れが期待される中、110円台までの円高を契機に一段の円高加速につながるのか、あらためて110円台後半での底堅さの確認につながるのか、来週22-23日の日銀政策決定会合に向けた政策スタンスに注目です。