米消費者物価指数と小売売上高が、株高・ドル高に戻るきっかけに!?
NYダウ、日経平均株価ともに大幅な下落
昨晩のNYダウは、先週末の330ドル高に続き410ドル高と続伸し、2/2の米雇用統計での時間給賃金の上昇を契機とした株式市場の調整に一服感が見られています。
それでも先週のNYダウは1,330ドル(5.2%安)と2016年1月以来2年ぶりの下落率となったほか、一時は直近の高値から12%超も下落したこととなります。
一般的に直近の高値から10%を上回る下落となれば「調整局面入り」と言われ、調整前の水準を回復するには相当の時間を要すると言われています。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット社
しかし、今回の調整は過去のブラック・マンデーやリーマン・ショックなどのように先行きの景気悪化が深刻化し、世界経済に多大な影響を及ぼすような衝撃的な出来事に端を発した状況とは違い、一昨年11月の米大統領選以降続いた「適温相場」の終焉が意識され始めていたタイミングに金利の上昇が加わったことが要因とされます。
NYダウの調整は日経平均株価の調整にもつながり、先週の週間下落幅は1,891円と実に9年4ヵ月ぶりの記録となりました。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット社
NY株式市場の調整に終止符が打たれるのか
2/2に発表された米1月雇用統計で時間給賃金(前年比)が2009年6月以来の高水準となる+2.9%まで上昇、税制改革による企業収益の上振れが賃金上昇に波及し、今後インフレが加速するとの見方を背景に長期金利が上昇、NY株式市場の調整へとつながりました。
先週末9日のNYダウは一時500ドル下落後に521ドル高まで反発するなど、荒っぽい値動きが続きました。一方、ドル円は108円05銭まで下落した後の反転も108円85銭に留まるなど、反発力の鈍さが目立っています。
米長期金利上昇は米国経済の堅調さの表れであり、欧州やアジア、日本にも好影響をもたらしそうです。しかし、こうしたことが、日銀の緩和政策解除への思惑につながって、日米の金利差が拡大してドル高・円安となる状況には至らず、むしろ急速な金利上昇が株式市場の調整を招きました。また、景気に悪影響を与えるとの懸念がリスク回避の動きを加速させてしまったことも、円安に戻り難くなっている要因のようです。
NY株式市場の調整に終止符が打たれるのか、今週もこの点が市場の最大の注目点です。
14日に発表される米1月消費者物価指数では、物価上昇圧力が本物なのかを確認することになりそうです。そもそも、金利上昇⇒株式市場の調整に影響した時間給賃金ですが、寒波の影響などから週平均労働時間が短縮(前月から0.2時間減の34.3時間)されたことが、テクニカル的に時間給賃金を押し上げたとの見方もあり、今回の消費者物価指数がインフレの加速を示すのか注目されます。
インフレの加速が確認される内容となればNY株式市場は一段と調整を強める可能性がある一方、予想ほどインフレの加速が認められなければ、適温相場再来への期待につながるかもしれません。
しかし、「適温相場」は景気の堅調が最低条件なだけに、同時に発表される米1月小売売上高でGDPの約7割を占める個人消費の堅調を確認する必要があります。
インフレ加速を警戒するまでの水準には至らず、個人消費の堅調さが持続されているだけの結果となれば、長期金利がもう一段上昇するとの見方が後退し、NY株式市場の調整一服との安心感から、株高・ドル高に戻すきっかけになるかもしれません。