米3月雇用統計 結果を確認!
就業者数は予想を下回るも、堅調を維持
4/6に発表された米3月雇用統計では、就業者数が予想を下回り、過去12ヵ月で2番目に低い伸びに留まった一方、過去3ヵ月の平均は20.1万人と堅調を維持しました。
また、失業率も6ヵ月連続で4.1%と低水準を維持するなど、堅調な労働市場の持続が確認されました。
時間給賃金は、前月比+0.3%、前年比+2.7%と前月からの改善が示されたものの、過度なインフレ加速を懸念するには至らず、FRBの年3回利上げペースを維持するとの見通しを検証する結果となりました。
10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
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非農業部門 雇用者数(万人) | 27.1 | 21.6 | 17.5 | 17.6 | 32.6 | 10.3 |
失業率(%) | 4.1 | 4.1 | 4.1 | 4.1 | 4.1 | 4.1 |
時間給賃金 前月比(%) | -0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.3 | 0.15 | 0.3 |
時間給賃金 前年比(%) | 2.3 | 2.5 | 2.7 | 2.8 | 2.6 | 2.7 |
※出所:SBIリクイディティ・マーケット
3月雇用統計結果 のポイント
・就業者数は過去1年で2番目の低水準ながらも直近3ヵ月平均は20.1万人増と堅調
・失業率は6ヵ月連続で4.1%と完全雇用状態を維持、堅調な労働市場の持続を確認
・時間給賃金(前年比)は前月の2.6%から2.7%へ改善も、インフレ加速懸念は見られず
・物品生産部門就業者数は前月10.6万人増から1.5万人増へ鈍化、建設業も1.5万人減
・トランプ政権の鉄鋼・アルミの関税制裁措置の影響も就業者数鈍化の一因か?
・雇用統計の影響以上に、米中貿易問題への懸念から株安に
雇用統計の発表を踏まえて講演したパウエルFRB議長や、次期NY連銀総裁に内定しているサンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁は、「労働市場は強い」「賃金の伸びは労働市場が過剰に逼迫していないことを示している」「失業率は来年までに3.5%に低下すると予想している」など、労働市場の堅調さに自信を滲ませました。
こうした状況を踏まえて、「インフレは中期的に2%前後で安定するだろう」「今後2年間、漸進的利上げを継続できると確信している」などとして、今回の3月雇用統計を踏まえても尚、FRBの利上げ見通しに変化がないことを伺う結果となりました。
非農業部門雇用者数(万人)の推移

- ※出所:米労働省
米時間給賃金 前月比(%) 、 前年比(%)

- ※出所:米労働省
今後の注目点は!?
今回の雇用統計では、就業者数の伸び悩みについて、悪天候や前月の大幅増の反動との見方が聞かれた一方、物品生産部門の雇用は1.5万人増と、2月の10.6万人増から大きく後退したほか、建設業の就業者数も1.5万人減少したことが主な要因との見方もあります。
建設業は、大量のアルミや鉄鋼を使うというのも偶然ではなく、トランプ米大統領が3月初めに鉄鋼・アルミの対中関税について制裁措置を発表したことで、米中貿易問題が雇用者数の鈍化につながったのではとの見方もあります。こうした点には注意しながら、今後の雇用統計を見ていく必要があるかもしれません。
米中を中心にした通商問題を巡る制裁措置については、5/15に米公聴会を開き、米企業からの意見聴取も踏まえ、発動実施か否かの結論に至るまでには、まだ時間を要するとみられています。それまで、米中ともに最小限の影響に留まるよう水面下での交渉が続くと思われます。
こうした動きを前に、今月中の発表が見込まれる米財務省による為替報告書で、為替操作国に中国を認定するのか注目されます。一方、中国も人民元安を誘導するような行動に出る可能性もあるだけに、引き続き市場の注目点となりそうです。
米中通商問題を巡る両国要人らの発言に揺れるNY株式市場ですが、今週から始まる1-3月期主要企業決算では、税制改革の恩恵によって増収増益が見込まれることから、株式市場の下値支援となると思われるだけに、NY株式市場が安定を取り戻すのか注目です。
さらにはFOMC議事要旨や米3月消費者物価指数を受けてインフレ見通しに変化が見られるのか、米債入札を含めて債券市場の動向が注目されそうです。