トランプ大統領がドル高容認!?
トランプ大統領は、8/16に「米経済の強さを背景に、米国へドルが流入している」とツイートし、ドル高を歓迎しているとも取れる考えを表明したほか、クドローNEC(国家経済会議)委員長も、「強いドルは米国に対する信頼の表れ」としてドル高を容認する発言を行っています。
1ヵ月前の7/20には、トランプ大統領は「中国や欧州は通貨を操作し、金利を低くしている」と投稿、こうしたツイートはドル高牽制として受け止められ、ドル円は113円台から111円台へと下落した経緯があります。こうした発言に対し、ムニューシン財務長官が「強いドルは米国の国益にかなう」と発言し、トランプ大統領の「ドル高牽制・ドル安誘導」を否定していました。
こうした発言の変化は、11月の中間選挙が迫る中で、議会改選(上院100議席の内35議席、下院435全議席改選)に向けて、上下両院で共和党が過半数を占める現状を維持するためとの観測も聞かれます。
トルコで拘束中の米国人牧師は、キリスト教福音派に属しており、同氏の釈放を強く求めていることも、トランプ大統領の最大の支持基盤であるキリスト教福音派の支持固めにつながるとの思惑があるとも言われています。
トランプ大統領は、ドル安政策によって物価が上昇し、悪いインフレの上昇につながれば、FRBの緩やかな利上げペースが加速しかねないとの指摘のほか、米国が巨額な対外純債務国であり、資金調達にとってドル安は好ましくないとの考え方を強めているのかもしれません。
ドルインデックスの推移
※出所:SBIリクイディティ・マーケット
ドルインデックスは、ユーロ、円、ポンドなどの主要通貨に対するドルの総合的な価値を指数化したもので、先週、昨年6月以来の高値を更新しました。
経済のファンダメンタルズを背景に、FRBの金融政策は「正常化から引き締めへの移行期」にあり、英国やECB、さらに日銀との方向性の違いを明確にしていることも、ドル堅調の支援要因につながっています。
パウエルFRB議長の講演に注目集まる
英国は、EU離脱交渉を巡る先行き不透明感が強く、合意無き離脱(ハードブレグジット)への警戒感から、利上げがポンド高に結びつかない状況です。
また、来年夏までは現状維持の金融政策を続けるとするECBの金融政策との比較においても、FRBは年内あと2回の利上げを行うとの予想が根強く、違いがあることは明白な状況です。
今週、日本時間8/23午前3:00にFOMC議事要旨が発表されるほか、8/23から8/25の3日間開催される米ジャクソンホールでの経済シンポジウムで、パウエルFRB議長が日本時間8/24の晩に講演を行う予定となっています。今回の講演内容は、FOMC議事要旨に沿ったものになると見られており、議事要旨が注目されています。
8/1のFOMC声明文を6月FOMCと比較すると、景気の総合判断が「堅調なペース」から「強いペース」へ、家計支出についても「伸びが加速」との表現が「伸びが加速した」へ上方修正されています。
また、先行きの金融政策に関する文言にも変更は見られず、金融政策スタンスはなお「緩和的」であり、政策金利の「一段の緩やかな引き上げ」を示唆しています。
パウエル議長は、7月中旬の半期に一度の議会証言で、「現時点では緩やかな利上げ継続が最善」と述べたほか、通商問題の影響に対する懸念を表明していたことから、これらの点を巡る議論の詳細が、今回公表される議事録の注目点の一つになると思われています。
また、8/22-23に開催される米中通商協議では、米中両国の対話路線が進展し、貿易戦争の懸念が後退するのか、あるいは追加関税を巡る報復合戦が再燃し、収束の気配が見られない泥仕合の様相となるのか、8/24のパウエルFRB議長の講演にも微妙な影響を及ぼすかもしれません。
さらに、米国一強との影響が招いたトルコリラや南アランド、インドネシアルピアなどの新興国通貨の下落と決して無関係ではないとの指摘もあるだけに、こうした点がFRBの金融政策に影響を及ぼす可能性に言及があるのかも含めて、パウエル議長の講演が注目されます。