英EU離脱問題の行方は?
10/17-18のEU首脳会議では、英EU離脱交渉に向けた具体的な進展が見られず、交渉の難航をあらためて印象付けた格好となりました。
10/19には、英EU離脱問題に関して、メイ首相がアイルランド国境問題で主張してきた要求を取り下げる用意があるとしたほか、「各論は別としても、総論として離脱交渉は95%既に決着している」と議会で説明すると報じられ、離脱交渉の進展期待が再浮上しています。
英ハント外相とEUのバルニエEU離脱首席交渉官は、ともに離脱交渉の合意成立に向けた道のりの険しさに言及したものの、合意期限が実質的に12月へ延期されたことで、離脱交渉に関する目先の悲観論は一旦緩和されたとの見方が聞かれました。
@英国とEUとの間で離脱条件の詳細を定めた離脱協定や政治宣言の締結
A英議会での離脱協定の承認
が目先の焦点となりそうです。
EU交渉官が設定する「最終合意期限」が12/25となっており、これに向けて11月中にも臨時のEU首脳会議開催があるのか、開催されなければ12/13-14のEU首脳会議に持ち越されることになります。また、合意されても、英議会の承認が必要となります。
1998年のイースターに北アイルランドとアイルランドとで和平合意が締結、北アイルランド人は英国籍かアイルランド国籍、あるいはそのいずれも取得できることになりました。さらに、検問所もなくされ、国境地域での通商もスムーズに行われてきました。
英メイ政権は北アイルランドの民主統一党に支えられている事情があります。EUが主張する北アイルランドだけを関税同盟に留める案では、通関手続きが必要となり、事実上、英国と北アイルランドとの間に国境が必要となります。これに、民主統一党は英国の分断につながるとして強く反発しています。
一方、アイルランドは、EU加盟によって英依存経済から脱却すると同時に、英国との関係も改善してきましたが、英EU離脱によって北アイルランドとアイルランドの国境がそのまま英国とEUの国境になってしまうことに戸惑いを隠せないほか、英国とアイルランドとで対立する構図が懸念されています。
EU側は、北アイルランドを通商上、EUの管轄下に残すとの見解を主張し、北アイルランドとアイルランドの境界に税関を設けるべきであると主張しているのに対し、英メイ首相や首相と閣外協力している民主統一党は、こうしたEU側の案を受け入れることは出来ないと主張し、対立が続いています。
アイルランド問題が解決出来なければ、英国は永久にEU離脱後もEUのルールに縛られる中途半端な離脱を続けることになってしまいます。英EU離脱交渉は欧州経済にも影響が及ぶ可能性があるだけに、今後の行方が注目されます。
7月以降のEUR/ USD 日足チャート
※出所:SBIリクイディティ・マーケット
予断を許さないイタリア財政問題
イタリアの財政問題を巡る不透明感は依然根強く、イタリアの国債利回りが上昇する中、EUで経済・財務分野を担うモスコビシ欧州委員は、イタリアの2019年の予算案を巡る協議で、イタリアとの対立を和らげることに前向きな発言をしました。また、イタリア政府が財政赤字のGDP比率を従来から2.1%へ引き下げる方針との報道もあり、ユーロは1.1534ドルへ反発しました。
しかし、週明けの東京市場では10/19の高値を更新できず、上値の重い動きとなっています。イタリアの予算案を巡っては、10/22にイタリアが欧州委員会に再提出、来週10/29の欧州委員会での判断に委ねられることになり、財政規律に準拠していないと判断された場合、11/19までに再度の修正案の提出が求められます。
いずれにしても、欧州委員会での承認を経て、イタリア議会で予算案が採決されるまで予断を許さない状況が続くことになります。
不安定な状況下で開催されるECB理事会
10/25のECB理事会では、資産買い入れの満期償還金再投資プロセスについて発表を行う可能性があるとされるものの、英EU離脱交渉問題やイタリアの財政問題など、足許の市場動向が不安定なことを踏まえ、発表を12月に先送りする公算もあるとも見られています。
資産買い入れ満期償還金再投資の手法に一切の変更がない場合は別として、イタリアが予算案を巡り神経質な状況にある中、ECBが何らかの決定を下せば、ユーロ圏周縁国では政治的側面に起因してユーロの振れ幅が上下大きくなる可能性も否定できません。
そのため、ECBの資産買い入れ再投資に関する決定を12月に延期することで、量的緩和の終了が織り込まれていく過程で、金融の安定性が脅かされる可能性を見極め、対策を講じることが出来るのではないかとも言われています。
いずれにしても、今週はユーロの材料が目白押しで、週末には独ヘッセン州議会選挙も控えています。バイエルン州議会選挙での与党大敗したことへの警戒感があり、ユーロは10/16に付けた1.1620ドルを上抜けることができなければ、上値の重い展開を続けることになるかもしれません。