日経平均株価は7月第4週(7/22〜26)、前週末比191円16銭(0.9%)高と、3週ぶりに上昇しました。米中通商協議が前進するとの期待が強まったことや、半導体市況改善シナリオの台頭が追い風になりました。ただ、東証1部の売買代金は7月、2兆円を超えた日が3営業日にとどまり、2兆円を割れる日が常態化しています。我が国の景気・企業業績は踊り場を迎えており、日本株については上値を追う勢いが乏しいように思われます。
そうした中、米国時間の7/31(水)に、米FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表が予定されています。市場では0.25%程度の利下げが確実視されていますが、仮に米国の利下げが実施された後、日米の株式市場はどう動くのでしょうか。
日経平均株価(図1)は週足ベースでみた場合、7月第2週(7/8〜7/12)および第3週(7/16〜7/19)は続落となりました。米国の金融緩和姿勢強化で円高・ドル安基調となり、それが日本の景気・企業業績について不透明感を強めました。しかし、第4週(7/22〜26)は191円16銭(0.9%)高と、3週ぶりに上昇しました。米中通商協議が前進するとの期待が強まったことや、半導体市況改善シナリオの台頭が追い風になりました。ちなみに、7/22(月)〜7/30(火)の日経平均株価の日次の動きは以下のようになっています。
7/22(月)50円20銭安・・・米国・アジアの株安が警戒されたことに加え、決算発表接近で様子見気分が強まりました。
7/23(火)204円09銭高・・・米国の半導体株高やファーウェイへの販売規制緩和の可能性が追い風になりました。
7/24(水)88円69銭高・・・米中通商協議の前進を期待した株高が優勢でした。
7/25(木)46円98銭高・・・前日の米半導体株高を受け、半導体関連株の上昇が目立ちました。5/7(火)以来の高値水準回復。
7/26(金)98円40銭安・・・決算が低調な銘柄が売られると同時に、半導体関連株にも売りが目立ちました。
7/29(月)41円35銭安・・・重要日程が目白押しの週となり、様子見気分が継続しました。実質月内最終商いでした。
7/30(火)92円51銭高・・・下方修正のファナックに一部業績の底入れを示唆する動きが見られました。
米国では、NY連銀製造業景況指数やフィラデルフィア連銀製造業景況指数など、企業マインドを示す経済指標はおおむね事前の市場予想を上回る数字になりました。個人消費の強弱を示す小売売上高や、設備投資の先行指標となる耐久財受注も好調でした。米国経済は良好な状態が続いており、米長期金利の低下は一巡し、外為市場では円高・ドル安が一服の状態になっています。そうした中、米国株が過去最高値を更新する動きになっており、日本株もその追い風を受けやすくなっています。
ただ、東証1部の売買代金は7月、2兆円を超えた日が3営業日にとどまり、2兆円を割れる日が常態化しています。7月第4週から本格化した4〜6月期の決算発表では、利益が市場コンセンサスを下回る例が多く、株価がそれに素直に反応して売られるケースも多いようです。我が国の景気・企業業績は踊り場を迎えており、日本株については上値を追う勢いが乏しいように思われます。
図1 日経平均株価は一時5/7(火)以来の高値水準を回復
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/7/30現在。
図2 NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/7/30現在。
図3 ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/7/30取引時間中。
7月下旬から8月にかけては、以下(表示は現地時間)のように重要日程が目白押しとなっています。
(1)中央銀行の金融政策の結果発表・・・・日銀金融政策決定会合(7/30)、FOMC(7/31)
(2)内外の重要企業の決算発表・・・・アップル(7/30)、ソニー(7/30)、トヨタ(8/2)、ソフトバンクG(8/7)他
(3)おもに海外の重要経済指標・・・・中国製造業PMI(7/31)、米国ISM製造業景況指数(8/1)、米国雇用統計(8/2)
これらの重要日程を通過した後は、投資家がリスクを取りやすくなると考えられます。もっとも、8月以降は投資家の夏休みも本格化してくるとみられ、市場参加者が減り、売買高や売買代金がいっそう減少する可能性があります。株式市場では注文の「板」の厚みが乏しくなり、逆に乱高下するケースも出てきそうです。
表1 今後約2週間の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
7/30(火) | 日本 | 日銀金融政策決定会合結果発表(黒田総裁会見) | 併せて「展望レポート」も発表 |
日本 | 6月失業率・有効求人倍率 | 前回失業率は2.4%、有効求人倍率は1.62倍 | |
日本 | 6月鉱工業生産 | コンセンサス(前月比)は1.8%減 | |
日本 | ★決算発表(199社) | 三菱電、アンリツ、ソニー、任天堂、三菱ケミHD、味の素他 | |
米国 | 米中閣僚級通商会議(〜31日) | ライトハイザーUSTR代表とムニューシン財務長官が訪問 | |
米国 | 5月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | ||
米国 | 6月中古住宅販売仮契約 | ||
米国 | 7月CB消費者信頼感指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | AMD、エレクトロニック・アーツ、アップル他 | |
7/31(水) | 日本 | ★決算発表(413社) | 花王、武田、NEC、パナソニック、TDK、村田製、三菱UFJ他 |
中国 | 7月製造業PMI | 中国企業のマインドは? | |
米国 | ☆決算発表 | GE、クアルコム他 | |
米国 | 7月ADP雇用統計 | 雇用者数の市場コンセンサスは14.8万人 | |
米国 | FOMC結果発表(パウエル議長記者会見) | 0.25%の利下げがメインシナリオ? | |
8/1(木) | 日本 | ★決算発表(124社) | アサヒ、協和キリン、小野薬、日本製鉄、ローム他 |
米国 | 7月ISM製造業景況指数 | 6月51.7から7月は52.1(市場コンセンサス)に? | |
8/2(金) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(〜6/20)議事要旨 | |
日本 | ★決算発表(208社) | トヨタ、ホンダ、ヤフー、住友商、三井不他 | |
米国 | 7月雇用統計 | 市場コンセンサス(非農業部門雇用者数)は15.5万人増 | |
8/5(月) | 日本 | ★決算発表(135社) | 大成建、三菱重、ソフトバンク他 |
米国 | ISM非製造業景況指数 | ||
8/6(火) | 日本 | 6月現金給与総額 | |
日本 | 6月景気一致(先行)CI指数 | ||
日本 | ★決算発表(180社) | キリンHD、ダイキン、三菱地所、NTT他 | |
8/7(水) | 日本 | ★決算発表(230社) | 大林組、MS&AD、ソフトバンクG |
日本 | JPX400定期入替銘柄公表 | ||
日本 | 日銀金融政策決定会合(7/30発表分)おもな意見 | ||
8/8(木) | 中国 | 7月貿易収支 | |
日本 | 7月景気ウォッチャー調査 | ||
日本 | ★決算発表(374社) | 富士フィルム、資生堂、ユニチャーム他 | |
8/9(金) | 日本 | 4〜6月期GDP | |
日本 | ★決算発表(697社)〜最大のヤマ場 | 東レ、ブリヂストン、リクルートHD、日本郵政、東京海上他 | |
8/12(月) | 日本 | ◎東京市場は休場 | 「山の日」の振替休日 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | 2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) | 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) | 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) | 1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
米国時間7/31(水)(日本時間では8/1未明)に、FOMCの結果発表が行われます。市場では政策金利(上限)が現在の2.5%から0.25%引き下げられ、2.25%になるとの見方が支配的です。一部では0.5%引き下げられるとの見方も残っています。なお、本年末の政策金利(上限)の水準としては、1.75%または2.0%とみる向きが支配的なようです。市場は0.25%ずつ2〜3回の利下げがあるとの見方が中心的になっています。
株式市場はこれまで、米国の金融緩和姿勢を好感し、米国株は主要3指標が過去最高値を更新。それを追い風として日本株も堅調に推移してきました。仮に、今回のFOMCで利下げが実施された場合、株式市場は買い優勢になるのでしょうか。
図4は過去40年間の米政策金利(上限)とS&P500、TOPIXの動きを1枚の図にまとめたものです。ここにもあるように、米国の利下げがあれば、必ずしも米国や日本の株式が上昇するとは限らないのです。ただ、米国で複数回の政策金利引き下げが実施された場合、最初の利下げ実施後1ヵ月のパフォーマンスは、日本株、米国株ともに平均で数%の上昇になっており、一応利下げは追い風と考えることができます。
特に赤丸で示したように、FRBが実際の景気悪化に先行して予防的に利下げを行った場合、株価は上昇しやすいというデータになっています。今回も、米国の経済指標が大きく悪化した訳ではなく、米中貿易摩擦等の影響を勘案した予防的利下げが想定されており、株価には追い風になる可能性がありそうです。
ただ、仮に米国経済指標に悪化を示す材料があまり出ない場合、本当に今後何回も政策金利を引き下げられるかどうかは微妙な所です。むしろ、米国が政策金利を何回も引き下げているような世界経済は、多くの国で景気が悪化し、その分株価も上がりにくくなっているかもしれません。すなわち、市場が米政策金利引き下げシナリオであまりにも楽観的になった場合、機敏に利益確定売りを入れていくことも必要になると考えられます。
図4 過去40年のTOPIX(左)、S&P500(左)と米政策金利(上限・右・%)
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。赤い矢印はおもな政策金利引き下げ開始時期。赤丸は「予防的利下げ」とみられる政策金利の引き下げ局面。