東京株式市場は引き続き反発局面にあるように見受けられます。日経平均株価は3/19(木)の取引時間中に16,358円19銭の安値を付けた後は上昇基調に転じ、5/11(月)には一時、20,534円88銭まで上昇しました。世界的に、大規模な財政政策や金融政策等が出揃う中、多くの国で経済活動の再開を模索する動きが強まり、景気底入れへの期待が高まっていることが大きな要因であると考えられます。
こうした反発局面はいつまで続くのでしょうか。日経平均株価はいくらぐらいまで戻るのでしょうか。さらに、中期的な株価の方向性についてはどう考えられるでしょうか。
東京株式市場は引き続き反発局面にあるように見受けられます。日経平均株価は3/19(木)の取引時間中に16,358円19銭の安値を付けた後は上昇基調に転じ、5/11(月)には一時、20,534円88銭まで上昇しました。世界的に、大規模な財政政策や金融政策等が出揃う中、多くの国で経済活動の再開を模索する動きが強まり、景気底入れへの期待が高まっていることが大きな要因であると考えられます。
日経平均株価は1/17(金)高値から3/19(木)安値まで7,757円76銭(約32%)の下落となっていました。その後、3/19(木)安値から5/11(月)高値までは4,176円69銭(25.5%)の上昇となり、下げ幅に対する戻り率は53.8%と、とりあえず「半値戻し」を達成した形になっています。一般的には、高値からの下落率が20%を超えると「弱気相場」であるとの考え方があります。それに沿えば、現在は中長期的な「弱気相場」の中での一時的な反発局面という位置づけになりそうです。
なお、月足ベースでとらえた場合、4月は1,276円68銭(6.7%)の上昇で、4ヵ月ぶりの上昇となりました。上昇率は日経平均株価の16営業日連続高(10/2〜10/24)が記録された2017年10月の8.1%以来の大きさとなります。当時は夏から秋口にかけて、米国が大型ハリケーンという災害に相次いで襲われましたが、その悪影響が心配したほどではなかったことが影響しました。今回は世界的感染症によるダメージからの回復局面であり、その意味で状況は似ているといえるかもしれません。
もっとも、5/8(金)に米国で発表された同国の雇用統計(4月)では、非農業部門雇用者数が前月比2,050万人減と過去最大の減少となり、失業率も戦後最悪の14.7%まで上昇するなど、経済指標は軒並み壊滅的な悪化を示しています。新型コロナウイルス新規感染者の増加ペースは一時に比べ、鈍ってきたものの、実数の感染拡大は続いており、戻り相場の「賞味期限」については、慎重に吟味する必要がありそうです。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/4/27〜2020/5/12)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
4/27(月) | 19,783.22 | +521.22 | WTI原油先物価格続伸や日銀の金融緩和強化を好感。決算発表終了で上がる株も。 |
4/28(火) | 19,771.19 | -12.03 | 4/17(金)の小天井に接近し、利益確定売りが増えやすくなる。 |
4/30(木) | 20,193.69 | +422.50 | 経済活動再開の思惑でNYダウ(4/29)が532ドル高。売買代金3兆円台乗せ。 |
5/1(金) | 19,619.35 | -574.34 | 4/1(水)の851円安以来の大幅安。2万円&半値戻し回復で達成感。米中対立を懸念。 |
5/7(木) | 19,674.77 | +55.42 | 中国の貿易統計が思ったほど悪くなかったことを好感。 |
5/8(金) | 20,179.09 | +504.32 | NY株高の流れを好感。 |
5/11(月) | 20,390.66 | +211.57 | 米国で雇用2,050万人減も織り込み済み。4/30高値を上抜け、一目均衡表「3役好転」 |
5/12(火) | 20,366.48 | -24.18 | トヨタの決算発表等があり一進一退。NYダウ先物の下落も懸念材料。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
★図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2020/5/12取引時間中。
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2020/5/11現在。
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/5/12取引時間中。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
5/11(月) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(4/27)おもな意見 | |
日本 | ★決算発表〜ソフトバンク、三菱重工、三菱電機 | 発表予定社数は240社 | |
5/12(火) | 中国 | 4月生産者物価/消費者物価 | |
日本 | ★決算発表〜本田技、トヨタ、NEC | 発表予定社数は261社 | |
米国 | 4月消費者物価 | ||
米国 | FOMC結果発表(日本時間30日未明) | ||
5/13(水) | 日本 | ★決算発表〜ソニー | 発表予定社数は338社 |
5/14(木) | 日本 | ★決算発表〜三菱地所 | 発表予定社数は530社 |
5/15(金) | 中国 | 4月工業生産/小売売上高 | |
日本 | ★決算発表〜日立製、ヤマトHD | 発表予定社数は565社 | |
5/18(月) | 日本 | 1〜3月期GDP | |
日本 | ★決算発表〜パナソニック、ソフトバンクG | 発表予定社数は46社 | |
5/19(火) | ドイツ | 5月ZEW景況感調査 | 350社のドイツ企業に景況感をアンケート |
米国 | 4月住宅着工件数 | ||
5/20(水) | 日本 | 3月機械受注 | |
米国 | FOMC議事要旨(4/29発表分) | ||
5/21(木) | 日本 | 4月貿易統計 | |
米国 | 4月中古住宅販売件数 | ||
米国 | 5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ||
米国 | ☆決算発表〜エヌビディア | ||
5/22(金) | 日本 | 4月全国消費者物価 | |
日本 | ★決算発表〜富士フィルム | ||
中国 | 全人代開幕 |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 6/16(火)、7/22(水)、9/17(木)、10/29(木)、12/18(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/10(水)、7/29(水)、9/16(水)、11/5(木)、12/16(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/4(木)、7/16(木)、9/10(木)、10/29(木)、12/10(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表3の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
前項でご説明したように、東京株式市場は引き続き反発局面にあるように見受けられます。そうした中、日経平均株価をテクニカル的に分析すると、5/11(月)に明確に「三役好転」の形になったことが確認できます。すなわち、
(1)遅行スパンが日々線を下から上に、上抜ける
(2)転換線が基準線を下から上に、上抜ける
(3)日々線が「クモ」の上に、上抜ける
という3つの条件が成立したことで、株式相場は当面テクニカル的に「強気局面」に転じたことになります。もっとも、高値から32%も大きく下げて、中長期的に「弱気相場」に転じた後の「三役好転」であり、総合的には強弱対立した形になりますので、その戻りのメドについては、慎重な吟味が必要です。
ちなみに、日経平均株価が1/17(金)高値から3/19(木)安値まで7,757円76銭下落したことに対し、黄金分割比率を参考にした0.618倍戻すと考えると、戻りのメドは21,152円と計算されます。一方、日経平均株価がPBR1倍の「解散価値」水準まで回復すると仮定した時は21,021円(5/11現在)という計算が成立します。これらを総合して考えた場合、「日経平均株価21,000」が重要な目標ラインとしてクローズアップされてくると考えられます。
仮に、当面発表される経済指標の数字が相当に厳しいものであっても、新型コロナウイルスの新規感染者数が減り続け、経済活動再開の道筋が明確になってくれば、21,000円をさらに超えて上昇する可能性も出てくるでしょう。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、先進国においても、容易に鎮静化はしない可能性があります。また、少なくとも、新興国では当面感染の拡大が続き、それが様々な角度から先進国経済にも影響を及ぼしてくると考えられます。したがって、日経平均株価が仮に21,000円まで到達した後は、慎重な見方をしておいた方が正解のように思われます。
なお、日本の新型コロナウイルスの感染については、退院者数の増大が加速しているという前向きな変化があります。したがって、日経平均株価が大崩れする可能性は後退してきたように思われます。
図4 日経平均株価(日足)・一目均衡表〜「3役好転」が成立
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成