「抵抗ライン突破」の意味を考える |
図表1:2本の上値抵抗ラインを上放れてきた日経平均株価
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
日経平均株価が「上値抵抗ライン」突破の様相を呈してきた背景には、為替相場、特にドル・円相場がドル高・円安方向へ回帰してきたことがあげられます。
図表2に示しました通り、12月下旬以降、米長期金利が2.2%近辺から、本年1月末の1.6%台まで急低下しました。強いと言われていた米労働市場で賃金上昇の兆しが見えなかったことや、住宅関連指標で弱めの数字が増えたこと、原油安を背景にエネルギー企業の収益悪化が目立ったこと等が背景です。米国の金利が低下すると、日米金利差(米国の金利から日本の金利を引いた数字)が縮小しやすくなり、ドル安・円高につながる傾向があります。図表2で、マル印で囲った部分でも、米金利低下と合わせドル安・円高となっています。ドル安・円高は日経平均株価にとって逆風になりやすく、日経平均株価の上値を抑える要因になったとみられます。
しかし、2月に入り、米長期金利は上昇に転じ、ドル・円相場もドル高・円安方向に転じました。2月6日に発表された1月の米雇用統計では、過去分である11〜12月分の雇用者数が14万7千人も上方修正されたことに加え、時間当たり賃金も予想以上に上昇し、米労働市場が実は強かったことが明らかになりました。それを受け、米長期金利の上昇が続き、2月11日にほぼ1ヵ月ぶりとなる2%台を回復し、それと合わせるように、ドル・円相場が120円台を回復することになりました。
今後もドル高・円安が進めば、また、少なくとも為替がある程度安定を取り戻せば、日経平均株価は上値を取りやすくなると考えられます。米国では10〜12月期の決算発表が終わり、企業業績の面から悪材料が出てくるリスクは低下するとみられます。原油価格(WTI先物)は9月末の1バレル91ドルが、12月末に53ドルと3ヵ月に4割も下がった訳ですからエネルギー企業にとっては、10〜12月期は非常に厳しい四半期だったとみられます。今後は、エネルギー価格下落の経済全体に対するプラスの部分が表面化してくる可能性が大きく、その面でも米国経済の強い面が出てくると予想されます。
こうした事情は日本も似ています。10〜12月決算は商社や石油元売等で、原油価格下落の負の部分の影響が先行したとみられます。今後はそのプラスの部分も表面化してくるとみられますので、日経平均株価は「保ち合い放れ」から、18,000円以上での推移に変わる可能性も十分ありそうです。
図表2:2本の上値抵抗ラインを上放れてきた日経平均株価
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
リスク要因はないのか? |
最も主要なリスク要因は、ギリシャ問題となるかもしれません。1月25日の同国総選挙で、緊縮財政に反対する勢力が政権を握った結果、ドイツを中心とするユーロ圏諸国と軋轢が生じています。ギリシャが財政再建を進める代わりに、ユーロ圏がこれを援助するといった枠組みが崩れ、ギリシャがユーロ圏から離脱するリスクが恐れられています。こうした懸念を反映し、ギリシャ国債の利回りは再び上昇傾向となっています。(図表3)
ただ、以前に比べれば海外からギリシャへの融資は減っており、欧州の金融システムが打撃をこうむるリスクは限定的であると思われます。また、安全網が整備されている点も、前回の危機の時とは異なるようです。そもそも、欧州の金融システムが不安視されているなら、図表4にもあるように、ドイツのDAX指数が今年に入り、史上最高値を更新していることの説明がつきにくくなります。
無論、ギリシャ問題でユーロ安が進み、ドイツの輸出に追い風が吹く可能性があります。同様に、ユーロ圏の量的緩和が、ドイツにとっては「too much」(効き過ぎ)の面があり、同国で「バブル」を誘発する可能性はあります。ただ、それにしても、仮に、欧州金融システムに不安が強いならば、DAX指数の最高値更新まではなかった可能性があります。
ギリシャ問題は、リスク要因ではあるものの、おもにユーロ安・円高を通じて日経平均に影響を及ぼすと考えられ、ドル・円相場ほどには重要度は低いとみられ、日経平均への影響も限定されるとみられます。
図表3:ギリシャ10年国債利回りの推移(%)
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
図表4:ドイツDAX指数
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
オプション取引での戦略・留意点は? |
図表5:日経平均コール・オプション(2015年3月限・権利行使価格18,000円)のプレミアム推移
- ※日経平均オプション取引データをもとにSBI証券が作成。最新データは2015年2月12日ですが、その終値は反映されていません。
「日経平均株価が上放れてきた可能性が大きい」と考えるのであれば、中心的な戦略となるのは、コール・オプションのロング・ポジション(買い持ち)になる可能性が大きいとみられます。無論、2月13日で「2015年2月限」はSQとなりますので、2015年3月限が主な検討対象となります。
同限月のコール・オプション(権利行使価格18,000円)でみた場合、日経平均18,000円未満の水準では、本質的価値がなかった訳ですから、日経平均株価の上昇というプラス要因はあったものの、時間的価値の減少という言うマイナス要因が強く影響していましたので、プレミアムはほぼ横ばいで推移してきました。しかし、今後、上放れが明確になってくれば、上昇余地が大きくなってくると予想されます。
より保守的に運用するのであれば、日経平均上昇過程で下落しやすくなる権利行使価格17,500円前後のプット・オプションの悪目を拾うことができれば、攻守バランスのとれたポジションにすることが可能です。いずれにせよ、ここからは、ボラティリティが高まってくる可能性が大きいので、リスク管理に十分注意しつつ、慎重な対応を心掛けたい所です。
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