スッキリとした晴れ間を拝むことのできる日が少なかった9月、株式相場でも不透明感の強い状態が続きました。円高圧力の継続や米大統領選挙の接近等が影響したと考えられます。10月相場についても、下旬から2016/4〜9月期の決算発表が本格化することや、米大統領選挙投開票日(11/8)がさらに接近することを考えると、「相場の方向感は定まりにくい」のかもしれません。よって一般的には、投資家としてもこう着感の強い状態に相応しいポジションを構築すべきなのでしょう。
しかし、市場の「慎重ムード」は長く続かず、次第に「強気ムード」が強まってくると、「オプションの『ココがPOINT!』」では考えています。したがって、構築すべきポジションも変わってくると考えられます。
教科書的には揉み合いが予想されるが・・・・・ |
前回(8/25)の「オプションの『ココがPOINT!』」では、一目均衡表の「要注意日」についてご説明しました。一目均衡表の「要注意日」とは、2本の先行スパンが交差するタイミングを指していること、「要注意日」には文字通り注意が必要であること等が説明のポイントでした。さらに、「要注意日」というのは定義上、「下落に注意すべき日」という訳ではなく、「これまでの流れが大きく変わりやすい日」として理解しておいた方が良いという点を強調させていただきました。
図2は前回のレポート以降約1ヵ月分の四本足を追加して作成された日経平均株価・一目均衡表です。それまで下落基調だった日経平均株価は「要注意日」を境に上昇に転じ、9/5(月)には17,156円まで上昇しました。「要注意日」に相場の流れが変わりやすいことが、ここでも「実証」されたことになります。
ただ、その後は下落に転じ、株価水準はほぼ「行って来い」(※注1)となってしまっています。円高圧力の継続や米大統領選挙の接近等が影響したと考えられます。一目均衡表を分析する時、転換線が基準線を下回っていることや、遅行スパンが日々線を下回りかねない水準にある現状はマイナス材料と理解されます。それに対し、日々線がクモの上にあることはプラス材料と理解されます。一目均衡表を見る限りでは、日経平均株価の強弱感を決めにくいのが現状です。10月相場についても、下旬から2016/4〜9月期の決算発表が本格化することや、米大統領選挙投開票日(11/8)がさらに接近することを考えると、方向感は生じにくいかもしれません。
なお、日経平均株価の予想変動率を示唆する日経平均VI先物(※注2)は9/6(火)に28.90まで上昇したものの、9/29(木)午前中の段階では20.50まで低下してしまっています。これを教科書通りに理解すればやはり、「10月相場はあまり動かない」と考えるべきなのかもしれません。
※注1 「行って来い」〜株価が一時的に上昇した後に元の水準まで下落してしまうこと
※注2 日経平均VI先物〜数字が大きい程、日経平均は大きく変動すると市場が予想していることを示唆
図1:日経平均株価・一目均衡表(日足)
- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2016/9/29取引時間中。
【ココがPOINT!】市場のムードが「慎重」から「強気」に転換する場合は? |
「10月相場はあまり動かない」と言われる中でも、日経平均株価は以下の3つの理由から「上昇トレンド」に転じる可能性があると、「オプションの『ココがPOINT!』」は考えています。
(1)日銀が金融政策で「新しい枠組み」を決め、それが奏功して脱デフレが進む可能性があること
(2)OPECが報道の通り、原油減産を実現できれば、原油価格の上昇や日本のデフレからの脱却が可能になるとみられること
(3)今後、決算発表や米大統領選等の重要日程を消化し、次第に不透明感が晴れる可能性があること
日銀の金融政策については、賛否さまざまに見方が分かれているとみられます。しかし、マイナス金利の深堀りをしなかったことや、イールドカーブをこれまでよりスティープ化する方針が示されたこと、日銀が買い入れるETFについてTOPIX連動型の比率を高めることになったこと等、銀行にとってはプラスの内容が多くなっています。銀行への風が向かい風から追い風に変われば、銀行から企業・家計へマネーが流れやすくなり、脱デフレに近づくと考えられます。
また(2)については、報道の通り減産が進めば、原油価格が上昇しやすくなるので、日本の物価が上昇しやすくなると考えられます。ちなみに、WTI先物価格は前年同月比で、2016/1〜3月期が30%下落、2016/4〜6月期が21%下落でしたが、2016/7〜9月期は3%程度の下落に済みそうです。2016/10〜12月期は前年同期の一日当たり平均相場が1バレル42ドル台だったことを考えると上昇に転じる可能性もありそうです。ちなみに、原油価格が上昇すると日本の経常黒字が減る要因になるため、円安・ドル高が進みやすくなります。
こうした中、10月下旬以降は2016/4〜9月期の決算発表が本格化する予定です。円高を背景に業績予想の下方修正が増えそうですが、その分悪材料の織り込みが進むと理解されます。残る重要日程は米大統領選挙(11/8)ということになり、その結果は読み切れませんが、その前に日経平均株価が上昇場面を形成する可能性は十分ありそうです。
こうした中、投資家が取るべき戦略としては、現物株の買いや、オプション取引であればコールの買いが想定されます。しかし、ここであえて「プロテクティブ・プット」を構築することもひとつの手であると考えられます。
「プロテクティブ・プット」は図2に例示したように、現物株の買いとプットの買いを組み合わせたものです。その合成損益図はコールの買いと同じになっています。
現物株ポジションをすでに構築している投資家が新たにプットの買いを組み合わせることで、株価の値下がりをヘッジすることができます。この戦略の注意点としては、「保険料」としてのプットの買いにコストがかかることですが、日経平均VI先物がいまだ低水準であることに表れているように、市場はいまだ相場の大きな変動に懐疑的なようです。そのため、プット・オプションのプレミアム価格もその分安く済んでいると考えられます。
図2:「プロテクティブ・プット」の例
- ※日経平均公表データをもとにSBI証券が作成。日経平均オプション2016/10月限について、プット・オプション(権利行使価格16,250円)を85円、現物株(日経平均)を16,250円で各々1単位ずつ買い付け、SQまで保有したと仮定した場合の推定合成損益図(諸コストは除く)を示しています。