米国株式市場
足元の日米株式市場では、米国と中国及び欧州連合(EU)との貿易摩擦への懸念が重石となる展開が続く。米国市場では、中国によるハイテクなど重要産業分野への対米投資制限を検討していることが報じられたことで、貿易摩擦への警戒感から大幅に下落する場面がみられた。トランプ大統領が、中国による対米投資制限について対米外国投資委員会(CFIUS)の役割強化での対応を選択して強硬措置を避けたことや原油相場の上昇、欧州連合(EU)首脳が移民問題で合意に至ったことによる政治リスクの後退などポジティブな要素も散見されているが、前述の貿易摩擦への根強い警戒感から上値の重い展開が続く。
図1:直近1年のNYダウチャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図2:直近1年のNASDAQチャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
東京株式市場
国内株式市場でも同様に、積極的な売買が手がけにくい状況となっている。円高の一服や日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ観測によってリバウンドの動きは度々あったものの、自律反発の域を脱してはいない。東京エレクトロン<8035>やファナック<6954>といったハイテク株のほか、メガバンクや自動車関連銘柄には6月末から7月初旬にかけて年初来安値を割り込む銘柄が多くみられ、景気敏感株はさえない動きが続いている。物色としても、内需・ディフェンシブ銘柄のほか、ファーストリテイリング<9983>など日経平均寄与度の高い一部の値がさ株が日経平均を支えている結果、NT倍率は6月21日に2000年4月以降で最高となる12.96倍まで急上昇している。相場全体としてけん引役を欠くなか、JASDAQ平均やマザーズ指数も共に年初来安値を直近で更新しており、個人投資家も売買を手控えているとみられる。
図3:直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図4:直近1年のマザーズ指数チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
6月米雇用統計予想
6月の非農業部門雇用者数は、前月比+19.8万人程度、失業率は5月と同じ3.8%と予想されている。失業率は労働参加率が伸び悩んでいることから、上昇する可能性は低いとみられている。平均時給の伸び率は5月実績(前年比+2.7%)を上回る+2.8%と予想されているが、インフレ加速につながる3%超の上昇率とはまだ差がある。それでも平均時給の伸びが市場予想と一致した場合、インフレ加速の思惑はやや強まり、リスク選好的なドル買いが活発となる可能性がある。
米金融政策の見通し
次回のFOMC予想:8月1日(日本時間2日午前3時結果発表)
米連邦準備制度理事会(FRB)は7月31−8月1日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で金融政策を決定する。足元のインフレ率(5月のコアPCE)はFRBの目標水準である2%に到達していること、雇用市場の拡大は続いていることから、利上げ継続の方針が改めて表明される見通し。次回のFOMC会合では、政策金利であるFFレートの誘導目標水準は現行の1.75%-2.00%に据え置きとなる見込みだが、FOMC声明は今年4回の利上げ見通しに沿った内容になると予想される。米国株式の反応は無視できないが、年4回の利上げペースは維持されることから、ドルは底堅い動きとなる可能性が高い。
図5:直近1年のドル円チャート(日足)
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米国:11月6日に米議会中間選挙
11月6日に行われる米議会中間選挙に向けて共和・民主両党の候補者を決める予備選が今年3月より行なわれている。6月5日までに注目度が高いカリフォルニアを含む13州で予備選挙が実施されており、今後は8月7日にミシガン州など4州、9月12日までにルイジアナ州を除く全ての州で予備選挙が実施される予定となっている。
中間選挙では下院議会435議席中、民主党が多数派になるためには23議席を共和党から取り戻す必要がある。移民、中絶へのアクセス制限、環境規制緩和などのトランプ政権の政策に対する強い批判を背景に民主党は11月の中間選挙で多数派となる可能性は残されている。共和党は上下両院で過半を握っているが、民主党は上院で2議席積み増すことができれば過半数を奪取できる。専門家の間ではニュージャージー州での勝敗は大変重要であり、民主党がここを落とした場合、下院での過半数獲得は困難になるとの見方が多いようだ。
日本:9月20日に自民党総裁選の投開票実施の見通し
自民党は総裁選について、9月7日告示・20日投開票の日程を軸に調整する方針を固めた。最終的には8月に開く党総裁選挙管理委員会で協議されるが、9月20日に総裁選が実施される可能性が高い。自民党は昨年、党則を改正し、総裁任期を「連続2期6年」から「連続3期9年」に延長している。今回の総裁選では安倍首相の3期連続当選の可否が最重要ポイントになるが、現時点では3選がコンセンサスになっている。また、石破元幹事長、野田総務相が立候補に強い意欲を見せており、岸田政調会長も立候補を検討している。なお、7月16−17日に石破派が研修会を予定している。国会閉会後の7月26−27日には岸田派が研修会を開催予定。野田総務相は7月下旬以降に政策集を発表するとみられている。
日米の重要政治日程が難なく消化されれば、年後半からのマーケットにはポジティブに影響すると思われる。それまでは景気指標や、企業業績を確認しながらの慎重な投資が求められるだろう。足元の下落は8月中まで尾を引くことが考えられるため、それまではセリングクライマックスや下落の底を確認できてからの売買再開でも遅くないだろう。
提供:フィスコ社