10月は2日に年初来高値24,448.07円(取引時間中)を付けた後、米長期金利上昇による影響や世界経済減速への懸念が強まるなか、26日に取引時間中としては3月29日以来、約7ヵ月ぶりに21,000円を割り込む展開となった。この急ピッチの調整により、日経平均は月間で9%もの下落率を記録したが、その後は11月初旬にかけて持ち直す格好となっている。
アジア株の持ち直しや円相場の弱含みが追い風となったことに加え、本格化する国内主要企業の決算発表を受けて、業績下方修正を発表したもののボトムアウトと捉えられたファナック<6954>や、好調な業績が確認されたソニー<6758>、アドバンテスト<6857>など、これまで売り込まれていたハイテク関連株を中心に買い戻された。トランプ米大統領の発言を受けて米中貿易摩擦への懸念が和らぐなか、東京市場には目先の底入れムードも広がりつつあり、日経平均は11月2日に10月24日以来となる22,000円台を回復している。
図1 直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
共和党の上院支配維持、民主党の下院支配は想定内で株価安定、ドルは下げ渋る展開に
今回の中間選挙では30歳未満の有権者の投票率が上昇した。民主党内で社会主義派が増加することにより党が分裂し、民主党自体が弱体化する可能性はあるものの、トランプ大統領の政権運営に大きな問題は生じないとみられている。民主党の下院支配による株式市場へ影響は比較的軽微と予想される。
共和党の両院支配が失われることで米国金利の先高観は若干後退する可能性があるが、トランプ政権の重要政策であるインフラ整備法案は民主党が下院を支配しても最終的に承認される可能性は高いと予想される。このため、長期金利が反落する可能性は低いと想定されている。為替については中間選挙が事前予想に近い結果になることから、リスク選好的なドル買いはやや一服する見込みだが、米国株式は落ち着いた動きを見せると予想されており、株安を警戒したリスク回避目的のドル売り・円買いが広がる可能性は低いと予想される。
図2 直近1年のドル円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図3 直近1年のドル円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日銀金融政策決定会合について
次回の日銀金融政策決定会合:政策金利は据え置きの予想
日本銀行は10月30−31日開催の金融政策決定会合で、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続することを賛成多数で決定した。日銀は「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2018年度から2020年度の物価上昇率見通し、従来予想からいずれも0.1ポイント引き下げた。経済成長率の見通しは2018年度が1.5%から1.4%へ下方修正した。2019年度と2020年度については従来と同じ0.8%としている。
次回(12月19−20日)開催の金融政策決定会合では政策金利のフォワードガイダンスについて、2018年度以降における物価見通しを引き下げていることから、「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」ことを再確認するとみられる。長期国債買い入れについては、現行のペースである年間約80兆円の維持が決定される見込み。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)の買い入れ方針も変更なしと予想される。
米FOMC会合について
今回のFOMC会合:政策金利は据え置きの予想
米連邦準備制度理事会(FRB)は11月7−8日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、金融政策を決定する。(日本時間9日午前4時に結果発表)政策金利(FFレートの誘導目標水準)は現行の2.00%−2.25%に据え置きとなる見込み。9月26日に公表した最新の経済見通しでは2018年の実質国内総生産(GDP)の伸びは+3.1%なるとの予想が示されたものの、2019年は+2.5%、2020年は+2.0%、2021年は+1.8%に鈍化すると予想されている。インフレ率は今後数年間は+2%近辺で推移すると予想されている。
FRBは現在の金利水準は緩和的とは言えないと判断しているとみられる。政策金利は将来的に「中立的な金利水準」と見做されている3%程度まで引き上げられる見通し。労働市場はかなりひっ迫していることやトランプ政権は新たな減税策を検討していることから、FRBは遅くとも2019年末までに政策金利を最低でも3%まで引き上げることを計画しているとみられる。国内外の経済情勢に重大な変化がない場合、次回12月18−19日開催のFOMC会合で0.25ポイントの追加利上げが決定される見込み。
欧州中央銀行(ECB)金融政策について
次回のECB理事会:金融政策は現状維持の予想
欧州中央銀行(ECB)は10月25日開催の理事会で、主要政策金利の据え置きを予想通り決定した。成長見通しは悪化したとの見方が示されたが、景気下支えを主たる目的とした量的緩和(QE)を以前からの予定通り年内に終了する方針を確認した。利上げ開始時期については来年夏以降となる可能性が高いことを示唆している。なお、ECBが保有している債券の償還資金については再投資を当面継続する。
次回12月13日の理事会では、償還後3ヵ月以内に再投資を行う現行の規則を緩和するかどうかを含めて、再投資に関する規則などが決定される見通し。ECBが利上げ開始時期を明示する可能性は低いが、直近においてインフレ加速を示すデータは少ないことから、「現行の金利水準を2019年夏にかけて据え置く」との見解が再提示されるとみられる。イタリアの財政問題については次回理事会まで何らかの進展があると予想されるが、ECBはイタリアを支援しない方針を明確にしており、多くの市場関係者はイタリアの財政問題がECBの金融政策を制限するようなことはないと考えている。
金融政策・政策金利の決定スケジュール
日本銀行
- 12月19-20日:日本銀行金融政策決定会合開催
米連邦準備制度理事会(FRB)
- 11月7-8日:連邦公開市場委員会(FOMC)会合
- 12月18-19日:連邦公開市場委員会(FOMC)会合
欧州中央銀行(ECB)
- 12月13日:ECB理事会開催(総裁の記者会見予定)
図4 直近1年のユーロ円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
中間決算を受けた日経平均予想EPSの推移とPER13倍、14倍、15倍時の日経平均株価と今後の予想
11月6日投開票の米中間選挙は大方の予想どおり、上院では与党・共和党が過半数の議席を維持する一方、下院では野党・民主党が過半数をなった。「ねじれ議会」となったことでトランプ米大統領の政権運営が焦点となる。トランプ政権の重要政策であるインフラ整備法案の成立などに大きな影響はないとみられているものの、自身の大統領再選に向けて外交面で強硬姿勢を強めるとの懸念もある。そうした場合、マーケットがどう反応するのか注目される。
一方、国内に目を向けると3月期決算企業の中間決算発表が続いている。全体としては強弱入り混じる内容で、市場では「ネガティブサプライズが多い」との見方もあるが、注目されたトヨタ自動車<7203>が業績上方修正を発表したこともあり、日経平均の予想EPS(1株あたり利益)はじりじりと切り上がっており、7日時点の予想EPSは1,772.54と過去最高水準となっている。7日時点の集計ではPER(株価収益率)13倍での日経平均はおよそ23,043円となり、現行の株価水準ではなお割安感から水準訂正の余地が残ると考えられる。また、PER14倍では24,815円、PER15倍では26,588円となる。
外部環境の不透明感が残るなかではバリュエーション水準の大幅な上昇は期待しにくいが、通商問題の解消に向けた進展、企業業績の順調な進捗などが確認されれば、中長期的にこの水準まで株価上昇するポテンシャルを秘めていることは念頭に置いておきたい。
提供:フィスコ社