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外国株式投資はなぜ必要か
年金資産を運用するプロの世界では、外国株式への投資が重視されてきました。
図表1は世界最大の年金基金である、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオの推移を示しています。注目したいのは、「外国株式」への資産配分がここ数年のうちに9%から25%まで拡大している点です。
基本ポートフォリオは、現在この比率で投資しているということではなく、こうあるべきだという年金運用者の考え方が示されたもので、その中で外国株式への投資が再評価されています。
これは日本の個人投資家がご自身の資産運用を考える折にも参考になるのではないでしょうか。国内株式だけに投資している方は、いくらか外国株式に分散することを考えてみてはいかがでしょうか。
このような変化が起きてきた要因はさまざまだと思われますが、一つにはグローバル化の進展があげられるでしょう。インターネットの普及によって世界の政治・経済の結びつきが強まる中で、株式市場もグローバルに考える必要性が強まっていると考えられます。
世界の株式市場を国別の時価総額で示したものが図表2になりますが、世界における日本市場の時価総額は7.7%に過ぎず、一方で米国が37.6%を占めています。これを見ると、株式投資を行う際に日本だけに投資するというのは、かえって不自然と言えるかもしれません。
実際、アップルのiPhone、フェイスブックのSNS、アルファベット(グーグル)のネット検索、アマゾンでの買い物、スターバックスのコーヒー、マクドナルドのハンバーガー、ウォルト ディズニーの映画など、我々の日常生活にも海外企業の製品やサービスが溢れています。
自身が普段からよく使うとか、お気に入りの製品・サービスを提供する会社の株を買ってみるというのは、株式投資の最も入りやすい入口と言われますが、これは外国株についてもあてはまる時代が来たと言えるのではないでしょうか。
図表1:公的年金の基本ポートフォリオ変遷
- 注:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が公表している基本ポートフォリオ(資産種類別の組入比率)の推移です。
- ※年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)資料よりSBI証券が作成
図表2:国別の株式時価総額構成比
- 注:16/5/27時点。
- ※BloombergデータよりSBI証券が作成
世界の株式市場で時価総額上位30社をランキングしたものが図表3です。
日本人には寂しい限りですが、日本企業ではかろうじてトヨタが入っているのみです。大多数は米国企業が占め、欧州企業が5社、中国・香港企業が4社ランクインしています。
先に見た日本の年金基金や世界の株式運用を行っているプロの株式運用者達は、まず、これら企業が投資に値するかどうかから検討するわけです。日本の個人投資家であれば、この中から馴染みがあるとか、ひっかかるものがあるというところから検討してみるのもよいでしょう。
さらに、これを主要業種別(24業種分類)にみたものが図表4です。
自動車セクターでは日本に素晴らしい会社があるため、外国企業への投資は考えなくても良いかもしれません。一方、その他の業種では、日本にグローバルで見て主要な企業がないというものもあります。例えば、ソフトウェア・サービス、ヘルスケア機器・サービス、資本財などの業種ではそのような傾向が強いでしょう。
日本にも同じセクターの企業があるけれども、グローバルにダイナミックな成長が期待できる企業がないかチェックしてみるというのも良いでしょう。
図表3:世界の時価総額上位30銘柄
企業名(コード) |
国名 |
セクター |
時価総額 |
売上高 |
---|---|---|---|---|
アップル(AAPL) |
米国 |
テクノロジー・ハードおよび機器 |
600,226 |
273,743 |
アルファベットC(GOOG) |
米国 |
ソフトウェア・サービス |
553,444 |
93,567 |
マイクロソフト(MSFT) |
米国 |
ソフトウェア・サービス |
453,206 |
104,364 |
エクソンモービル(XOM) |
米国 |
エネルギー |
412,098 |
264,756 |
バークシャー ハサウェイB(BRKB) |
米国 |
各種金融 |
392,118 |
257,706 |
フェイスブック(FB) |
米国 |
ソフトウェア・サービス |
372,354 |
23,698 |
アマゾンドットコム(AMZN) |
米国 |
小売 |
368,088 |
136,083 |
ジョンソン &ジョンソン(JNJ) |
米国 |
医薬品・バイオテクノロジー |
343,437 |
84,218 |
ゼネラルエレクトリック(GE) |
米国 |
資本財 |
305,658 |
149,147 |
ウェルズファーゴ(WFC) |
米国 |
銀行 |
283,520 |
109,531 |
JPモルガンチェース(JPM) |
米国 |
銀行 |
264,570 |
120,576 |
AT&T(T) |
米国 |
電気通信サービス |
262,283 |
185,670 |
ネスレ(NESN)* |
スイス |
食品・飲料・タバコ |
260,213 |
112,050 |
チャイナモバイル(00941) |
香港 |
電気通信サービス |
253,338 |
128,772 |
ウォルマートストアーズ(WMT) |
米国 |
食品・生活必需品小売 |
245,018 |
576,610 |
ロシュ・ホールディング(ROG)* |
スイス |
医薬品・バイオテクノロジー |
242,910 |
60,566 |
中国工商銀行(01398) |
中国 |
銀行 |
242,616 |
201,876 |
プロクター &ギャンブル(PG) |
米国 |
家庭用品・パーソナル製品 |
239,061 |
80,472 |
ノバルティス(NOVN)* |
スイス |
医薬品・バイオテクノロジー |
230,471 |
58,957 |
ファイザー(PFE) |
米国 |
医薬品・バイオテクノロジー |
229,564 |
61,180 |
アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)* |
ベルギー |
食品・飲料・タバコ |
224,686 |
52,780 |
ベライゾンコミュニケーションズ(VZ) |
米国 |
電気通信サービス |
224,130 |
158,275 |
テンセント(騰訊)(00700) |
中国 |
ソフトウェア・サービス |
219,576 |
21,161 |
ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSA)* |
オランダ |
エネルギー |
219,460 |
298,349 |
コカ-コーラ(KO) |
米国 |
電気通信サービス |
211,981 |
52,709 |
ペトロチャイナ(00857) |
中国 |
エネルギー |
211,703 |
316,330 |
シェブロン(CVX) |
米国 |
エネルギー |
211,327 |
136,751 |
ビザA(V) |
米国 |
ソフトウェア・サービス |
208,012 |
17,139 |
トヨタ自動車(7203) |
日本 |
自動車・自動車部品 |
185,426 |
284,031 |
オラクル(ORCL) |
米国 |
ソフトウェア・サービス |
183,491 |
44,828 |
- 注:ブルームバーグワールドインデックス(5049銘柄)の時価総額上位銘柄です。売上高は過去12か月、銘柄名の「*」は当社の取り扱いがないことを示します。2016/5/25時点のデータです。
- ※BloombergデータよりSBI証券が作成
図表4:主要セクターの時価総額上位企業
企業名 | 時価総額 (億円) |
---|---|
ソフトウェア・サービス | |
アルファベット | 553,444 |
マイクロソフト | 453,206 |
フェイスブック | 372,354 |
テンセント(騰訊) | 219,576 |
ビザ | 208,012 |
メディア | |
ウォルトディズニー | 178,756 |
コムキャスト | 167,269 |
ナスパーズ* | 67,979 |
チャーターコミュニケーションズ | 65,870 |
タイムワーナー | 63,606 |
銀行 | |
ウェルズファーゴ | 283,520 |
JPモルガン チェース | 264,570 |
中国工商銀行 | 242,616 |
中国建設銀行 | 173,466 |
バンク オブ アメリカ | 169,584 |
企業名 | 時価総額 (億円) |
---|---|
テクノロジー・ハードおよび機器 | |
アップル | 600,226 |
サムスン電子 | 172,648 |
シスコシステムズ | 160,227 |
EMC | 59,886 |
キヤノン | 41,573 |
消費者サービス | |
マクドナルド | 119,252 |
スターバックス | 89,280 |
カーニバル | 41,550 |
ラスベガス サンズ | 40,767 |
ヤム ブランズ | 37,133 |
ヘルスケア機器・サービス | |
ユナイテッドヘルス | 139,955 |
メドトロニック | 125,164 |
アボット ラボラトリーズ | 62,580 |
エクスプレス スクリプツ | 52,089 |
ストライカー | 46,142 |
企業名 | 時価総額 (億円) |
---|---|
半導体・半導体製造装置 | |
インテル | 163,514 |
台湾セミコンダクター* | 135,418 |
クアルコム | 90,626 |
テキサスインスツルメンツ | 66,682 |
ブロードコム | 66,165 |
資本財 | |
ゼネラルエレクトリック | 305,658 |
3M | 113,588 |
シーメンス | 101,496 |
ハネウェルインターナショナル | 96,407 |
ユナイテッドテクノロジーズ | 92,600 |
医薬品・バイオテクノロジー | |
ジョンソン&ジョンソン | 343437 |
ロシュ ホールディング* | 242910.5 |
ノバルティス* | 230470.7 |
ファイザー | 229564.4 |
メルク | 172269.7 |
- 注:ブルームバーグワールドインデックス(5049銘柄)の時価総額上位銘柄です。銘柄名の「*」は当社の取り扱いがないことを示します。2016/5/25時点のデータです。
- ※BloombergデータよりSBI証券が作成
日本の株式市場だけを見ていると、株式投資でおもしろいのは「中小型株」であって「大型株」はつまらないと思われている方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、世界の時価総額の4割弱を占める米国市場では、大企業が売上を拡大して株価も上がるというのが日本市場と比べて際立った差異です。図5-8は、米国の代表的な大企業の過去10年の株価と売上推移を示しています。売上がダイナミックに拡大して、株価も何倍にもなっている銘柄が多いことに気が付かれるでしょう。
会社が大きくなると成長率を測る分母が大きくなるため、成長率が落ちて当たり前というのが日本の常識かもしれません。しかし、米国の大企業はグローバル展開やM&Aによって高い成長を長く続けられるケースが多いのです。
もちろん、M&Aによらないオーガニック成長(既存の経営資源による成長)は重視されています。しかし、M&Aを成功させて成長することも同様に価値あることとして評価されています。
(1)買われる企業(および従業員)を納得させるブランドや経営力
(2)文化の異なる企業を運営していく経営力
(3)シナジーを生み出していく経営力
少し考えただけでも、M&Aを成功させるには以上のような経営力が必要でしょう。これをさらに国際的に行おうとするとそのハードルが高いことは想像に難くありません。
また、逆に分割したほうが市場での評価が高まる場合は、会社を分割するということも頻繁に起こっています。株主価値を最大化するためには、会社を小さくすることも厭わないのです。
日本の社会常識からするとなかなか抵抗のあることですが、米国では「株式会社は株主のためにある」ということが徹底しているためにこのようなことが実現しています。さらに、流動性の高い労働市場の存在が前提です。
社会の制度や慣習と結びついているためになかなか日本では同じようなことが起こりえないと言えます。そこに簡単に色褪せることのない米国企業の投資先としての魅力があると言えそうです。
図表5:米大手企業の株価推移(1)
図表6:米大手企業の売上推移(1)
図表7:米大手企業の株価推移(2)
図表8:米大手企業の売上推移(2)
- 注:図表5のフェイスブックの株価は12年5月末を100、図表6のフェイスブックの売上は12年度を100としています。
- ※図表5-8:BloombergデータよりSBI証券作成
- ※上記実績は過去のものであり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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