株式市場で中国のネット企業が台頭、世界のネット市場はアルファベット、フェイスブック、アマゾン、アリババ、テンセントの米中5強時代に入ったと言えそうです。グローバル投資家にとっては誰もが無視できない存在になったと言えそうです。そこで、今年5月に続いて再び、中国のネット企業をまとめてご紹介いたします。
図表1:注目銘柄リスト
銘柄 | 株価(10/24) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
アリババ グループ ADR(BABA) | 173.70ドル | 184.70ドル | 86.01ドル |
テンセント(騰訊)(00700) | 347.40香港ドル | 356.40香港ドル | 179.60香港ドル |
百度(バイドゥ)ADR(BIDU) | 264.00ドル | 274.97ドル | 159.54ドル |
JD ドットコム ADR(JD) | 38.52ドル | 48.99ドル | 23.38ドル |
微博(ウェイボー)ADR(WB) | 95.83ドル | 108.30ドル | 40.12ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
中国のネット企業が台頭、米中5強時代に |
世界の株式市場で、中国のネット企業の台頭が目立っています。
中国のインターネット企業については、5月31日掲載の「「FANG」銘柄の上昇は中国のネット銘柄にも波及!?」で特集しましたが、その後アリババグループとテンセントが大幅な株価上昇となって、世界の時価総額10位にランクインしたことが内外メディアで広く報道されました。
グローバルに株式投資を考える投資家にとって、中国のネット企業は無視できない存在になったと考えられます。そこで、再度中国のインターネット企業に焦点を当ててレポートいたします。
まず、中国のネット企業が世界でどのような位置にあるか、確認してみましょう。図表2は世界のネット企業(Bloombergの業種分類で「eコマース」「ネットメディア」「ネットベースサービス」の企業)を、時価総額順に上位15社をリストアップしたものです。
国別には、中国7社、米国5社、南ア1社、日本1社、韓国1社と、驚くべきことに中国が最も多いという結果になりました。さらに、ナスパーズ(南アフリカ)の時価総額の大部分は、保有するテンセント株式(33.2%を保有)の価値からなるというオマケまでついています。
また、この表を見て気がつくのは、1〜5位までと6位以下に4倍以上の大差がついていることです。世界のネット企業は、米国企業と中国企業による5強時代に入ったということができそうです。
中国のインターネット企業が台頭している背景として、以下が挙げられるでしょう。
(1)世界の21%を占める7.3億人のネットユーザーを擁する市場の大きさ、
(2)政府による規制で米国企業との競争が制限されたことから規模の大きいネット企業が育った、
(3)インターネットの利用が他国よりも進んでいる分野があるとみられる、
(3)については、中国のネット小売市場は5.2兆元(約84兆円)に達し、世界全体の47%を占めるとのシンクタンクの推計があり、世界で最も利用頻度が高い市場となっているようです。他にも利用度合がハイレベルに到達している分野があると考えられます。
さらに、中国のインターネット普及率は16年末時点で53%に過ぎないこと、アリババとテンセントは海外展開を志向していること、また、両社は豊富な資金で数多くの有望ベンチャーに投資していることから、成長はまだまだ途上である可能性が高いと考えられます。
株価も好調なものが多くあります(図表3)。16年初を基準に大手のアリババとテンセントは2倍以上、不祥事で低迷していたバイドゥも4-6月期決算後に騰勢を強めています。また、ライブ動画市場が盛り上がっているウェイボーは16年に2倍になった後、17年にも既に2倍に上昇しています。
米国のネット企業をまとめた「FANG」に対して「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセントの頭文字)という言葉も使われ始めているようです。米国のグローバル大手に投資する上でも、目が離せない存在になったと言えそうです。
図表2:世界のインターネット企業(時価総額上位)
国籍 |
銘柄(コード) |
主力事業 |
時価総額 |
|
---|---|---|---|---|
1 |
米国 |
アルファベット(GOOGL) |
ネット検索 |
6,765 |
2 |
米国 |
フェイスブック(FB) |
オンラインコミュニティ |
4,974 |
3 |
米国 |
アマゾン ドットコム(AMZN) |
eコマース |
4,642 |
4 |
中国 |
アリババ グループ ADR (BABA) |
eコマース |
4,434 |
5 |
中国 |
騰訊(テンセント)(00700) |
ゲーム(オンラインコミュニティ) |
4,245 |
6 |
南アフリカ |
ナスパーズ(当社取扱なし) |
ポータル |
1,050 |
7 |
米国 |
プライスライン グループ(PCLN) |
旅行代理店 |
949 |
8 |
中国 |
百度(バイドゥ) ADR(BIDU) |
ネット検索 |
923 |
9 |
米国 |
ネットフリックス(NFLX) |
オンデマンド動画 |
833 |
10 |
中国 |
JD ドットコム ADR(JD) |
eコマース |
549 |
11 |
中国 |
網易(ネットイーズ) ADR(NTES) |
ポータル |
361 |
12 |
日本 |
ヤフー(4689) |
ポータル |
271 |
13 |
中国 |
Cトリップドットコム ADR(CTRP) |
旅行代理店 |
249 |
14 |
韓国 |
NAVER Corp (035420) |
ポータル |
233 |
15 |
中国 |
微博(ウェイボー)ADR(WB) |
オンラインコミュニティ |
210 |
- 注:時価総額は10/23(月)時点です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:中国のインターネット企業の株価
- 注:図表2にリストアップした中国のネット企業の株価推移です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
米中のネット大手を比較してみる |
Eコマース、オンラインコミュニティ、ネット検索の各分野で世界を席巻する米中のネット企業を比較してみます。
〇eコマース アマゾン VS アリババ
グローバル展開しているアマゾンの時価総額が4,642億ドルに対して基本的に中国のみのアリババが4,434億ドルと接近していることには意外感がありますが、これは中国のeコマース市場が他国と違う高いレベルに発達していることが背景と見られます。
アリババのeコマース総取扱高(中国のリテール市場のみ)は、17年3月期に5,470億ドルに達します。一方、アマゾンのeコマース売上(全世界計)は16年12月期に1,238億ドルです。
アマゾンは総取扱高を公表しておらず、第3者の販売に関する配送サービスのみ計上されている部分があるため厳格な比較はできませんが、総取扱高はアリババのほうがかなり大きいと推定されます。このため、アリババがアマゾンの時価総額を逆転する可能性は十分あると言えるでしょう。
一方、アマゾンは取扱カテゴリーを絶え間なく拡大しつつあり、また、英独日と進出した海外でも成功を収めた実績があり、成長面ではアマゾン優位と言えそうです。
アリババはこれまで海外展開で目立った成果を挙げられていませんが、現地のオンライン小売企業「ラザダ」に出資して進めている東南アジア市場が一つの試金石と見られています。
eコマース以外では、アリババはアマゾンの後を追うようにクラウド、ネット動画に展開しています。両社のライバル関係は引き続き注目を集めそうです。
〇オンラインコミュニティ(SNSとメッセンジャー) フェイスブック VS テンセント
フェイスブックは「Facebook」や「Instagram」をグローバルに展開して、中国を除くグローバル市場で圧倒的なオンラインコミュニティを構築、テンセントはインスタントメッセンジャーの「QQモバイル」、対話アプリの「微信(WeChat)」、SNSの「QZone」を中国で展開しています。
この両社の事業展開は大きく異なっています。フェイスブックは売上の97%が広告収入と、狭い事業領域にしか展開しておらず、それでも高成長を持続できており、非常に手堅い事業展開と言えるでしょう。
一方、テンセントはオンラインコミュニティでの消費者へのリーチを生かして多方面に事業展開しています。広告収入は18%に過ぎず、オンラインゲーム47%、SNSの課金収入24%、その他(モバイル決済の「テンペイ」などを含む)11%となっています。
フェイスブックは、「メッセンジャー」や「ワッツアップ」などの収益化の行方が注目されます。「Facebook」では、利用者に不快感を感じさせずに広告を増やすのは難しくなっているようです。今後は、事業領域を広げていく可能性が注目されます。
テンセントはアリババ同様、やはり海外展開が注目されます。自社で展開するモバイル決済の「テンペイ」や、出資しているシェア自転車の「モバイク」、配車サービスの「滴滴出行」など数多くのベンチャー企業から、グローバルサービスとなるものが出てくるか注目されます。
〇ネット検索 アルファベット VS バイドゥ
アルファベットは、グローバルのネット検索シェア(中国を含むシェア)で6割以上、バイドゥは中国のネット検索で7割以上のシェアを有し、ネット広告収入では、アルファベットが世界トップ、バイドゥが中国トップです。
両社とも検索連動型広告を中心とした広告収入が売上の大半を占め、アルファベットは88%、バイドゥは91%が広告収入と、両社の事業モデルは似ています。
主力のネット検索の分野は、それぞれグローバル市場、中国市場で安定した地位を確保していることから、大きな変動要因になりにくいと見られます。このため、時価総額は7倍以上と大きく開いていますが、この差は簡単には縮まらないとみられます。
一方、今後の成長を託して注力している分野でもAI、自動運転、クラウドと両社は似通っていていますが、ここには両社の関係を変える可能性があって、動向が注目されます。
注目企業をご紹介 |
図表2にリストアップした企業から、eコマース、SNS・ゲーム、メディア・検索の各カテゴリーのトップ企業である、アリババグループ、テンセント、バイドゥに加え、テンセントとウォルマートとの協力でアリババに挑戦しているJDドットコム、中国での「ライブ動画配信」ブームに沸くウェイボーをご紹介いたします。
市場:米国(NYSE) |
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決算期 |
売上高(億人民元) |
(前年比) |
純利益(億人民元) |
(前年比) |
EPS(人民元) |
18.3予 |
2,374 |
50% |
804.5 |
98% |
32.2 |
19.3予 |
3,158 |
33% |
1,090.8 |
36% |
43.4 |
株価(10/23):177.32ドル |
予想PER(18.3期):36.5倍 |
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注:予想PERは、人民元建の予想EPSを1ドル=6.6400人民元でドル換算して計算しています。 |
市場:香港 |
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決算期 |
売上高(億人民元) |
(前年比) |
純利益(億人民元) |
(前年比) |
EPS(人民元) |
17.12予 |
2,316 |
52% |
636 |
64% |
6.66 |
18.12予 |
3,122 |
35% |
810 |
27% |
8.53 |
株価(10/23):348.60香港ドル |
予想PER(18.12期):34.8倍 |
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注:予想PERは、人民元建の予想EPSを1香港ドル=0.8508人民元で換算して計算しています。 |
市場:米国(NASDAQ) |
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決算期 |
売上高(億人民元) |
(前年比) |
純利益(億人民元) |
(前年比) |
EPS(人民元) |
17.12予 |
860 |
22% |
161.3 |
38% |
46.6 |
18.12予 |
1,059 |
23% |
206.9 |
28% |
60.3 |
株価(10/23):264.90ドル |
予想PER(18.12期):29.2倍 |
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注:予想PERは、人民元建の予想EPSを1ドル=6.6400人民元でドル換算して計算しています。 |
市場:米国(NASDAQ) |
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決算期 |
売上高(億人民元) |
(前年比) |
純利益(億人民元) |
(前年比) |
EPS(人民元) |
17.12予 |
3,631 |
40% |
39.2 |
黒字転換 |
2.22 |
18.12予 |
4,678.3 |
29% |
77.9 |
99% |
4.79 |
株価(10/23):39.00ドル |
予想PER(17.12期):54.0倍 |
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注:予想PERは、人民元建の予想EPSを1ドル=6.6400人民元でドル換算して計算しています。 |
市場:米国(NASDAQ) |
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決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
10.3 |
57% |
3.30 |
147% |
1.43 |
18.12予 |
14.8 |
44% |
5.17 |
56% |
2.23 |
株価(10/23):95.48ドル |
予想PER(18.12期):42.8倍 |
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- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。