9月6日に発表された8月の米雇用統計では、失業率が7.3%となり、2008年12月以来4年8ヵ月ぶりの低水準に低下したものの、景気動向を敏感に映す非農業部門雇用者数の伸びが+16.9万人と市場予想の18.0万人を下回る結果となった。また、過去2ヵ月分の結果が下方修正されたことを受けて、米ドル/円は99.73円から98.81円まで下落、その後一時値を戻したものの、再び軟調な動きとなり98.54円まで下落する動きとなった。・・・
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前回指標発表時(9/6)の振返り 米ドル/円

- ※出所:FX総合分析チャート 15分足
他の通貨も動きがありました。

ファンダメンタル分析とは?ニュースで聞くような経済指標を読んで相場を分析すること。特に重要な指標をいくつかご紹介! |
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米9月ADP雇用統計 前月比 (ADP発表)
今回発表 |
16.6万人 |
|
前回発表 |
17.6万人 |
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発表時間 |
10/2(水) 21:15(日本時間) |
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米9月雇用統計 非農業部門雇用者数変化 前月比 (米労働省発表)
事前予想 |
18.1万人 |
|
前回発表 |
16.9万人 |
---|
発表予定 |
10/22(火) 21:30(日本時間) |
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過去データをチャートで確認!
米雇用統計 非農業部門雇用者数月次推移(米労働省発表)

- ※Market Win24のデータを元にSBI証券が作成
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9月6日に発表された8月の米雇用統計では、失業率が7.3%となり、2008年12月以来4年8ヵ月ぶりの低水準に低下したものの、景気動向を敏感に映す非農業部門雇用者数の伸びが+16.9万人と市場予想の18.0万人を下回る結果となった。また、過去2ヵ月分の結果が下方修正されたことを受けて、米ドル/円は99.73円から98.81円まで下落、その後一時値を戻したものの、再び軟調な動きとなり98.54円まで下落する動きとなった。【図1参照】。
前回同様に、事前に発表されていた米GDP、ISM製造業・非製造業指数が市場予想を上回る結果となったことから、9月のFOMCで米緩和策の早期縮小が決定されるとの期待感が高まっていた。しかし、雇用者数の伸びが鈍化したことを受けて、緩和策の早期縮小観測に対するネガティブな思惑が広がったことも、米ドルの下げに拍車をかけたと考えられる。
【図1】米ドル/円 10分足

- 【図1】出所:総合分析チャート
非農業部門雇用者数は、6月分が+18.8万人から+17.2万人に、7月分が+16.2万人から+10.4万人にそれぞれ修正され、2ヵ月分で7.4万人の大幅下方修正となった。そして、8月分を加味すると、前月からの実質的な雇用者数の伸びは+9.5万人となった。また、6ヵ月平均値は、安定的な雇用者の伸びと指摘されていた+20.0万人を大きく下回る16.0万人(前月19.98万人)まで大きく縮小する結果となった【表2参照】。 また、民間部門の雇用者数も+15.2万人と、市場予想の+18.0万人を下回り、尚且つ過去2ヵ月分が下方修正される結果となった。
一方、製造業部門は、自動車産業など耐久財分野を中心に+1.4万人となり、6ヵ月ぶりにプラスに転じる結果となったほか、小売り、企業向け専門職、観光・娯楽、教育・医療保険サービスで伸びが確認された。そして、平均時給が前月比+0.2%(前月0.0%)、前年同月比で+2.2%と2011年7月以来の大きな伸びとなったことや、週労働時間が前月比+0.1時間(前月-0.1時間)となったことは、今後の個人消費の押し上げ要因につながるだろう。
失業率は、前月の7.4%から7.3%に低下となり、4年8ヵ月ぶりの低水準に改善した。失業者数が前月比-19.8万人となる一方、就業者数が5ヵ月ぶりに前月比でマイナス(-11.5万人)となり、労働参加率が1978年8月以来の最低に落ち込む結果となった。このことから、失業率の低下は雇用増加によるものではなく、夏の休暇時期で職探しを一時的にやめた人が増えたことにより、失業者数全体が減少したと考えられ、中身の伴わない改善と言えるだろう。
8月の雇用統計の結果は、夏場に雇用の伸びが減少するというデータ通りの結果となったと考えられる。ただ、前回同様に、米国の緩和策の縮小時期に対する思惑が強かったことから、結果に対して過敏に反応したと考えられる。
【表2】統計結果と今回の市場予想
|
9月市場予想 |
8月 |
7月 |
6月 |
5月 |
4月 |
3月 |
2月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
失業率(%) |
7.3 |
7.3 |
7.4 |
7.6 |
7.6 |
7.5 |
7.6 |
7.7 |
非農業部門雇用者数(万人) |
18.1 |
16.9 |
10.4 |
17.2 |
17.6 |
19.9 |
14.2 |
33.2 |
民間部門雇用者数(万人) |
18.2 |
15.2 |
12.7 |
19.4 |
18.7 |
18.8 |
15.4 |
31.9 |
製造業部門雇用者数(万人) |
0.6 |
1.4 |
-1.6 |
-0.7 |
-0.5 |
-0.7 |
-0.4 |
2.3 |
- 【表2】出所:SBIリクイディティ・マーケット作成
- ※市場予想は9月30日現在の平均値
前回9月のFOMCでは、9月からの緩和策の縮小開始が見送られ、尚且つ2013年、2014年の経済見通しが下方修正された。FRB議長の会見を見る限り、緩和策縮小に対する慎重姿勢が鮮明となった。また、労働市場の改善ペースが鈍化する可能性にも言及していることから、今回の雇用統計の結果は、緩和策の縮小開始時期を判断する材料というよりは、労働市場の改善ペースが順調かどうかというところに焦点が移っていると考えられる。
過去2ヵ月間は、夏場の休暇シーズンで雇用が減少する時期だったことや、自動車工場などの設備メンテナンス時期に伴う一時閉鎖など、短期的な要因が雇用統計に影響したと考えられる。ただ、9月の統計は休暇シーズンも終了していることから、雇用が徐々に回復している結果が示される可能性が考えられる。特に、失業保険申請件数が7年ぶりの低水準まで改善するなど、一部で雇用関連の改善も示されている。ただ、前回のFOMC後のFRB議長の会見で、労働市場の改善ペースが鈍化する可能性に言及されたことも影響して、市場予想はやや控えめとなっている。そして、夏場の雇用統計の最終的な集計(確定値)も出そろうことから、過去分の修正にも注目したい。また、統計の結果を受けて緩和策の縮小時期(10月、年末)に対する思惑も交錯する可能性があるため、前回並みの動きとなる可能性も想定しておきたい。ただ、現時点では、下方向よりは、上方向に動くときに変動幅がより大きくなる可能性を想定している。