今後のユーロ相場展望(3/11)
前回2月10日付けの「今後のユーロ相場展望」でもお伝えしたように、昨年半ばから下落を続けてきたユーロも1月26日に1.1098ドルを付けて以降、2月4日に向け1.15ドル台まで反発する期間がありました。しかし、それ以降のユーロが再び1.15ドル台に戻ることはなく1.12ドル台の上値すら重いような状態が続いた後、3月5日には1月の安値も割り込んでしまいました。
今後のユーロ相場展望を1ユーロ=1ドル方向と前回お伝えした手前、ここまでの展開に限れば想定内となりますが、何故1.11ドル付近から1.15ドル台まで短期間かつ400ポイント余りの反発に終わったのかを振り返りながら、現時点(3月10日)でも引き続き1ユーロ=1ドルの見通しで良いのかを検証してみたいと思います。
ユーロ/米ドル 日足(Bid)
※出所:総合分析チャート 週足
相場振り返りと現状
1月の後半から2月初めにかけてのユーロの400ポイント余りの反発については、前回お伝えしたようにユーロの「売り疲れ」のタイミングに、それまでユーロ売りとなっていた幾つかの要因が逆にユーロを買い戻せる内容(原油価格の反発など)へと変化したことも大きな理由でした。しかし、そこからさらにユーロが上昇することができなかったのは、ユーロ買い材料の効力低下や、同じ要因や背景が再びユーロ売りと認識されるに至ってしまったことが大きな理由でした。
ユーロ売りと認識されるに至ってしまった理由 |
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1 |
原油価格の反発も期待されたほど大幅ではなく、WTI原油価格も1バレル=40ドル台の安値からは反発しているものの50ドル台に留まっている |
2 |
スイス中銀の介入再開の噂が出た後、実際にスイス中銀の介入があったとされているが、対ユーロ上限撤廃を決定する以前のレベルまで戻すには至っていない |
3 |
ギリシャ財政問題打開への期待は、ユーロ圏離脱も現実味を帯びていた中で、ユーロ圏各国がギリシャへの金融支援4ヵ月延長決定も楽観的見通しには転換できず |
上記1〜3の材料がさらにユーロ高に作用する方向に進めば良いわけですが、その可能性が比較的高いのが、
1)の原油価格の上昇が更に進むことかも知れません(実際に3月4日、サウジアラビア石油相から、需給が改善に向かうとの発言もあった)。しかし、イスラエルとイランの緊張の高まりによる地政学リスクの再浮上、イスラム国と中東産油国間の対立による石油施設への攻撃などのリスクが常に付きまとっており、恒常的にリスクオフ状態に陥る可能性を秘めているだけに、簡単にユーロ買いに転換することができません。
2)のスイス問題にしてもスイスフランが足元で直ちにリスク回避目的の避難通貨対象としての買いから逃れられるわけではなく、対スイスフランでのユーロ安傾向も継続すると思われます。
3)ギリシャ問題はさらに深刻で、4ヵ月の金融支援延長は決まったものの、支援プログラムの期限となる6月末までにツィプラス政権は支援条件の根本的な解決策を見出さなければならないのです。時間切れまでの時間は、すでに4ヵ月を割っており、依然としてギリシャのユーロ圏離脱の可能性が残っている状況です。仮に離脱が現実のものとなった場合のユーロの反応を想定するのは容易なことではありません。
3月5日の欧州中央銀行(ECB)理事会は、9日から月額600億ユーロ相当の国債などの買い入れ開始を正式決定しました。ユーロ圏19の中央銀行とECBの買い取りによって、実体経済の活性化を図るわけですが、効果が出始めるまで時間がかかることが想定済みなのか、市場の反応は冷静でユーロ相場への影響も小さく、少なくともユーロ買いの反応にはなっていません。
足許の市場は、9日からのユーロ圏財務相会合で提出される金融支援のためのギリシャの改革事項の詳細を承認するのかどうかに向かっており、ECBの国債等の買い入れの効果を見極めるには時間が掛りそうです。ユーロ安と原油価格の下落がユーロ圏経済の持ち直しにプラス効果をもたらしているのは間違いないところですが、主要貿易相手国の一つでもあるロシアの現状を考えると、それだけでユーロ安が十分に進んだとの判断を下すのも難しい状況かも知れません。
また、上記1〜3の材料だけでなく、足許ユーロの上値を抑え込んでいるのが、停戦に合意したはずのウクライナとロシア間の紛争の先行き不透明感です。原油価格が緩やかに上昇に転じていたこともあり、ウクライナを巡る東西対立の構図に終息の兆しを見出すことができれば、ロシアへの経済制裁緩和に繋がった可能性もあったはずですが、一向に両者の溝は埋まっていない状況です。
今後のユーロ動向
3月中のユーロ売りを一段と加速させる“ダメ押し”になりそうなのが、3月17−18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)になるかも知れません。市場で注目される声明文中の『辛抱強く』との文言が削除されれば、米国の早めの利上げを想定したドル買いに拍車が掛る可能性もありそうです。
唯一気になるとすれば、最近発表されているユーロ圏の主要経済指標に上振れ傾向が確認されていることでしょうか。それでも、今後もこうした指標発表に予想外の強さが見られても一時的なユーロの反発に留まるものと思われ、ユーロを取り巻いている諸条件・環境から判断すると、今回も前回同様に1ユーロ=1.05 〜1.00ドル方向への展望維持が妥当と思われます。気を付けなければいけないのが、ユーロの売りポジションが膨らんでいることによって、思いがけないユーロの反発が起こりやすいことでしょう。ユーロ相場に影響を及ぼす可能性のあるイベントや他国の経済発表時にも注意が必要です。
ユーロ/米ドル 月足(Bid)
※出所:総合分析チャート 月足
ユーロ/円 月足(Bid)
※出所:総合分析チャート 月足