大方の結果予想は?
11/6に、世界が注目する米中間選挙が実施され、日本時間の11/7午後にも結果が判明すると言われています。
大方の予想では、議会上院を共和党が現状の過半数を維持する一方、下院では民主党が巻き返し、過半数を奪還すると見られています。
しかし、選挙戦終盤になるに従って、下院でも共和党が民主党に迫る勢いを見せるなど、民主党のリーダー不在が共和党の追い上げを許している状況です。
上院では、仮に共和党、民主党が共に50議席となった場合でも、副大統領が兼務する上院議長の裁決で法案可決が可能となるため、共和党は議決権を握れることになります。議会では、予算編成や法案制定の権限があるだけに、共和党が過半数を奪われることになれば、議会運営はもちろん、トランプ政権の経済運営にも影響を及ぼします。
一方、上下両院ともに現状勢力のまま共和党が過半数を維持すれば、2020年の大統領選に向けてトランプ大統領再選に前進することになります。
フロリダ、アリゾナ、モンタナ、ミズーリ、インディアナ、ネバタ、ジョージアなど、いくつかの州で接戦が続いており、トランプ大統領も11/5まで各地を訪れ、最後の支援を訴える予定です。

※出所:SBIリクイディティ・マーケット
失業率改善の評価が鍵を握る!?
トランプ大統領はウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、オバマ前大統領の雇用創出の功績は、FRBの低金利政策によって水増しされているとし、オバマ政権時代の数字は「いかさまだ」と述べています。
一方、オバマ前大統領も、「今の米経済は好調だと言うが、いつから始まったものか?冗談じゃない、真実を語るべきである」と牽制しています。
実際、オバマ前大統領の2期目には、就業者数が平均21.7万人増加しているのに対し、オバマ前大統領退陣後の就業者数は平均19.3万人の増加となっています。
しかし、11/2に発表された10月雇用統計の人種別の失業率を見ると、黒人の失業率は10月に6.2%へ改善し、史上最低を記録したほか、白人(3.3%)と黒人との失業率差も2.9%と、統計開始以来最低まで縮小しています。さらに、ヒスパニック系も4.4%、女性も3.4%と改善が進んでおり、労働市場の改善が確実に進んでいることが確認されています。
黒人層などの失業率改善を評価し、これまで中間選挙で投票に向かうことが少なかった層が共和党に投票することになると、選挙結果にも影響を及ぼすかもしれません。
さらに、中間選挙を前に発表された米10月雇用統計の失業率は、48年ぶりの低水準と並ぶ3.7%となり、4ヵ月連続で4.0%を下回る低水準を継続するなど、労働市場の逼迫が賃金上昇にも影響を及ぼし始めたことが確認されました。
平均時給は、前年同月比3.1%増と、2018/9の2.8%増を上回り、2009/4以来の3.0%台回復となるなど、大幅な上昇となりました。
賃金の著しい上昇は、企業が労働力の確保にしのぎを削る中で、今後も止まりそうにないと見られています。
5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | |
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非農業部門 雇用者数(万人) | 26.8 | 20.8 | 16.5 | 27.0 | 13.4 | 25.0 |
失業率(%) | 3.8 | 4 | 3.9 | 3.9 | 3.7 | 3.7 |
時間給賃金 前月比(%) | 0.3 | 0.1 | 0.3 | 0.3 | 0.3 | 0.2 |
時間給賃金 前年比(%) | 2.7 | 2.7 | 2.7 | 2.9 | 2.8 | 3.1 |
※出所:SBIリクイディティ・マーケット
米時間給賃金 前月比(%) 、 前年比(%)

※出所:米労働省
金融市場はどのような反応を示すか?
ウォール・ストリート・ジャーナルが実施した世論調査では、トランプ大統領の支持率は2018/10中旬時点で、2018/9の44%から47%へ上昇し、大統領就任以降で最高を記録しています。さらに、こうした失業率の改善や賃金上昇がトランプ政権の政策の成果であるとの見方となれば、共和党支持の追い風につながるだけに注目されます。
2018/10中旬時点の世論調査で、共和党・民主党に投票する決め手として、「ヘルスケア」が約3割、次いで「経済・雇用」と回答されています。決して無視することのできない論点だけに、今回の雇用統計結果も無視できるものではなさそうです。
仮に事前予想通り、上院を共和党、下院を民主党がそれぞれ過半数を制した場合でも、下院で共和党が民主党と10票差以内に迫る結果となれば、善戦したとしてトランプ政権の安定を揺るがす事態には至らないと言われます。
また、貿易問題を巡る不均衡是正には民主党も支持する考えが多く、日米貿易を巡る問題に厳しい対応を迫る場面があるかもしれません。
一般的には、共和党が上下両院の過半数を制した場合に、政策期待による金利上昇、NY株も大幅に上昇しリスク選好の中、ドル高に向かうと見られています。共和党が上院を制し、民主党が下院を制した場合でも、共和党に大差をつけることがなければあまり大きな反応はなく、好調な米国経済を背景にしたファンダメンタルズ中心の相場に回帰していくとの見方が一般的とされています。
万が一、上下両院ともに民主党が過半数となれば、トランプ政権の政策運営に大きく影響を及ぼし、株式債券市場の不安定化を招くことになると予想されますが、可能性は低いとされています。
果たして、金融市場がどのような反応を示すのか、日本時間11/7の午後にも判明する結果に注目です。