FOMCは、市場の失望感を増幅させる結果に
パウエルFRB議長は、今年10/2の講演で「米国経済は極めて良好」との認識を示した上で、「低失業率にもかかわらず、インフレ率が小幅な上昇に留まっていることは、歴史的に見て異例なこと」「緩やかな利上げ継続が必要」との見解を示していました。
こうした発言を踏襲するようにFOMCでは利上げを決定、さらに一部から予想されていた「更なる段階的な利上げ」の声明文の文言も削除されませんでした。加えて、記者との質疑応答の中で、FRBの保有する米国債の保有圧縮のペースを変更することはないとするバランスシート圧縮に対する発言が、ハト派的声明を予想していた市場の失望感を増幅させる結果となりました。
12/19の債券市場では10年債利回りが2.777%へ、2年債利回りも2.638% へ低下、2年債と10年債との利回り格差は0.139%と2007年以来となる水準まで縮小しました。
12/24の債券市場では10年債利回りが2.738% 2年債利回りが2.561%と長短金利差は0.177%と、12/19と比べ若干広がったものの、依然として縮小傾向が続いています。イエレン前FRB議長は以前、「逆イールドと景気後退との相関関係は認められるものの、逆イールドを発端に景気後退が起こったのではない」との考えを示したことがあります。パウエルFRB議長も「長期金利の低下には様々な要因が関係している」とした上で、長短の金利動向は注視するものの、逆イールドが原因で景気後退に陥ることはないとの考えを示しています。
しかし、2年債利回りと10年債利回りとの逆イールドの状態は、1989年〜1990年にかけての最初のケースに続き2000年の2回目、さらに、2006年〜2007年に3回起こった記録が残されています。直近、2006年〜2007年の逆イールドの後、2008年のリーマンショックに至ったほか、2000年の時もITバブル崩壊前にこうした現象が生じており、景気後退との因果関係を無視する訳にはいかないとの警戒感が根強いのも事実です。一説にはFRBの過度の引き締めに対する警鐘として注目する見方もあるようです。
NYダウは記録的な下落が続く
NYダウは12/19のFOMC前に381ドル高の上昇から下落に転じ、351ドル安で取引を終えたほか、12/20も464ドル安とパウエルショックの影響が続き、12/21に414ドル安、さらに短縮取引となった12/24も653ドル安と、FOMCの12/19以降の4日間で1883ドルと、約8%の大幅下落となりました。12月月間で、昨晩まで3,746ドル安(14.6%安)の記録的な下落が続いています。
FOMCを終えて以降、米議会では暫定予算案を巡る民主・共和両党の対立が表面化し、一部政府系機関の閉鎖につながったほか、再開に向けた進展はみられないまま、こうした閉鎖の状況が長期化することで実体経済への影響を懸念する声も聞かれます。
さらに、来年1月に再開される日米通商交渉での米国の基本方針が発表され、為替操作防止法を協議する予定とも報じられています。
12/25の日経平均株価は1010円安の19,115円まで下落、ドル円も110円を割れると、6/28安値(109円97銭)、8/21安値(109円78銭)、6/27安値(109円69銭)、6/26安値(109円37銭)などの下値を意識する必要があるかもしれません。