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目玉政策のないトランプ大統領 自らの成果を強調か!?

2019/2/12
提供:SBIリクイディティ・マーケット社

一般教書演説では、融和や譲歩を印象付ける発言

先週行われたトランプ大統領の一般教書演説は、新たな材料はなかったと冷ややかな見方がある一方で、トランプ大統領自身、2020年大統領選再選に向け、終始、融和や譲歩を印象付ける発言が目立つ内容となりました。

全体の演説の中で、メキシコ国境の壁建設についてが19%、次いでシリアを中心に中東問題が9%、経済が7%、刑事・司法問題が6%、貿易問題が5%となりました。

演説の途中、トランプ大統領が南米からの集団移民について話を始めた際、民主党議員からざわめきが起こりました。大統領の後ろに座るペロシ民主党下院議長が片手を軽く挙げ、ざわめきを制しながら、トランプ大統領の不法移民の問題について話を進める中、ペロシ議長はメモに目を通す抗議の姿勢(本来であれば大統領の演説に耳を傾けるのが礼儀)を静かに示していたことも印象的で、民主・共和両党による静かな争いが垣間見られました。

こうした中で、トランプ大統領は史上最長となった政府系機関の一部閉鎖について言及することはありませんでした。無益な争いを止め、米国が一つとなることが重要であると述べた際には、民主・共和両党議員から「USA!USA!」と声が挙がるなど、議場内にも一体感がみられました。

さらに、トランプ大統領は、昨年の中間選挙で当選した史上最多となる女性議員の躍進を喜ばしいことと歓迎の意向を示すなど、民主党との対立姿勢を封印しました。

一方、壁建設について、当初は分厚いコンクリート製の壁を国境全体に建設する意向でしたが、演説で示されたのは、1.国境警備隊が必要とする重要拠点へ限定、2.コンクリート製の壁ではなくフェンス など、当初から譲歩が見られる内容となりました。

一方、民主党が求めている不法移民の子供達、「ドリーマー」と呼ばれる残留資格についての言及はありませんでした。
壁建設を巡る暫定予算案は2/15に期限切れを迎え、再度の閉鎖となるのか、もしくは非常事態宣言を宣誓してでも壁建設に固執するのか、2/15までに民主・共和両党に歩み寄る姿勢が見られるか注目されます。

また、米国経済は過去2年間に経済的繁栄を享受してきたと大統領就任以降の成果を強調、さらに、インフラ投資の重要性に言及した一方、昨年の演説で示した1.5兆ドル規模との具体的な金額を明示することはありませんでした。国境の壁建設費用を捻出するため、もしくは財政赤字を懸念したものとの観測も聞かれています。

米中通商交渉の行方は?

さらに、米中通商交渉について、「中国の不公平な貿易に是正を求める」としたものの、具体的な追加制裁の可能性についての言及はありませんでした。

2/14−15に北京で行われる米中閣僚級による通商交渉を前に、2/11から次官級による協議が再開されており、今回の交渉で進展が見られれば、3/1の関税引上げの猶予期限の延長につながるとの観測もあるだけに、交渉の行方が注目されます。

少なくとも、1月の次官級協議では、中国側が米国からの農産物などの輸入増を示し、不均衡是正に努める意向を表明しました。

トランプ政権による対中貿易の関税引上げによって、大豆などの対中農産物輸出が大幅に減少し、多くの農家が影響を受けたこともあり、農産物の対中輸出再開は、2020年大統領選に向けた対策の一つとも言われています。

いずれにしても、3/1の関税引上げの猶予期限を前に、中国側からの輸入拡大を一層進める一方、知的財産権や中国政府による国有企業への補助金問題などについては継続協議として、3/1以降の関税引上げ猶予期限を延長し、関税引上げを回避するとの楽観的な見方も聞かれます。

そもそも、2/27-28に中国と比較的近いベトナムで2回目の米朝首脳会談が開催されることから、米中通商問題に一定の進展を確認した上で朝鮮戦争の終結宣言、北朝鮮の核廃棄に向けた確約のほか、習近平国家主席との米中首脳会談を通じた米中通商問題での進展を強調するなど、トランプ大統領自らの成果を強調することになるかもしれません。

昨年10月以降のドル円推移(日足)

  • ※出所:SBIリクイディティ・マーケット

トランプ大統領の政権運営はどうなる!?

NYダウは昨年10月初めに史上最高値を更新する27,000ドル手前の水準まで上昇したものの、パウエルFRB議長によるタカ派的な金融政策を嫌気し、12月下旬には22,000ドル台へ下落しました。

それに伴い、ドル円も114円55銭を高値に、その後は12月に110円00円まで下落しました。

しかし、FRBはハト派的政策に転換し、先週もトランプ大統領とパウエルFRB議長との非公式な会食が行われ、NYダウは25,400ドル台へ上昇するなど、NY株式市場は安定を取り戻しつつあります。ドル円も年初1/3の105円割れまでの下落から、昨年12/31の高値である110円47銭を上抜けています。

それだけに、米中通商交渉による関税引上げや、予算案を巡る政府系機関閉鎖によるNY株式市場の下落を避ける観点からも、何一つ目玉政策のないトランプ大統領が、引き続き堅調な米国経済の成長やNY株式市場の持続的な上昇をサポートできるのでしょうか。ドル円の動向と併せ、トランプ大統領の政権運営の行方が注目されます。

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