ハト派寄りの金融政策の姿勢を一段と強める
3/21のFOMCでは、12月時点での年内2-3回の利上げ観測から一転、3/7のECB理事会での決定に続き、FRBでも年内利上げ見送りの公算が高まったほか、今年の政策金利見通しやインフレ見通しも12月FOMC時点から下方修正されました。
政策金利見通し(ドットチャート)でも、3/17のFOMC委員17人の内11人が年内据え置きを予想しました。12月時点では年内2回の利上げ予想が5人、年内3回の利上げ予想が6人という状況であったため、急速な変更に至った点は大きな驚きとなりました。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
加えて、資産縮小を今年9月で終了する意向を明らかにするなど、ハト派寄りの金融政策の姿勢を一段と強める格好となりました。
12月FOMCでは「段階的利上げの継続」が示されていたものの、1月には「忍耐強い様子見」へ転換、さらに今回の決定について、市場では「忍耐強く、政策金利を据え置くことが妥当」へ一段と踏み込んだとの声が聞かれています。
パウエルFRB議長は、会見の中で「米国経済の見通しは明るい」との発言していたものの、トランプ政権による減税効果による景気拡大は見込めず、昨年のような高成長は難しいと見られています。
3/28に発表される米10-12月期GDP確報値は、改訂値(前期比+2.6%)から+2.4%へ下方修正されると見られており、1-3月期は一段の低下となりそうです。
米GDP 前期比(%)
- ※出所:US Bureau of Economic Analysis
注目は米主要企業の決算や、米中通商交渉の行方
また、パウエルFRB議長は、米2月雇用統計での時間給賃金が前年比+3.4%と2009年4月以来の高い伸びを記録したにもかかわらず、2月消費者物価指数は前年比+1.5%、エネルギーと食料品を除いたコア指数でも+2.1%に留まるなど、物価上昇につながらない点について触れ、「インフレの低下圧力は、大きなチャレンジ」と発言しており、低金利下での金融政策の難しさを示したと受け止められました。
FRBの金融政策見通しでは、年内の利上げ見送り、来年2020年に1回の利上げで頭打ちとなるとの予想が現実的と言えそうです。
FOMCを受けてのNY株式市場では、3/20のNYダウが長期金利の低下を嫌気した金融株の下落などを背景に141ドル安となりました。3/21には切り返し216ドル高と反発したものの、3/22に460ドル安と大幅に下落、ナスダックも196ポイント安、S&Pも54ドル安と揃って大幅に下落しました。
3/22に日本の10年債利回りが2年4ヵ月ぶりの低水準となる-0.007%へ低下、さらに独3月製造業景況指数が2012年8月以来の44.7と好不況の節目とされる50.0を3ヵ月連続で下回ったほか、ユーロ圏の製造業PMIも47.6と2ヵ月連続の50.0割れ、独10年債利回りは2016年10月以来となる-0.017%とマイナス圏へ低下しました。
こうした中で、米3月製造業PMIも2017年6月以来の52.5へ低下、米10年債利回りも一時昨年1月以来となる2.41%台へ低下したほか、2.439%で取引を終えた米10年債利回りに対し、米3ヵ月物T-Bill(財務省短期証券)はこれを上回る2.452%と2007年8月以来、11年7ヵ月ぶりに長短金利差が逆転しました。
NY株式市場では、3/21にナスダックが7,838ポイントと昨年10/4以来の高値まで上昇したほか、S&Pも2,854ドルと昨年10/9以来の高値まで上昇しました。しかし、金利低下を好感したNY株式市場の上昇は期待できず、むしろインフレ期待の後退や景気減速への懸念が上値を抑えることになるかもしれません。
再来週から始まる米主要企業の1-3月期決算や、3/28-29に北京で再開される米中通商交渉の行方が、トランプ大統領の再選に向けた足掛かりとなるのか注目されます。