米中通商問題が引き起こす製造業のコスト増
5/23発表の米5月製造業・サービス業PMIはいずれも予想比下振れとなったほか、5/24発表の米4月耐久財受注も予想を下回りました。
さらに、企業の設備投資の先行指標として注目される米4月コア資本財受注(非国防、航空機を除く)も前月比-0.9%と予想(-0.3%)を下回り、前月(+0.3%)から低下しました。
明らかに米中通商問題の影響が製造業のコスト増につながっており、先行き不透明感から設備投資を手控える動きが強まっていると思われます。
米製造業PMI サービス業PMI
- ※出所:Markit
米耐久財受注 前月比(%)
- ※出所:米国勢調査局
逆イールドから脱却できない状況
仮に、トランプ政権が中国からの輸入品3250億ドル相当に25%の関税を課す第4弾が発表することになれば、こうした製造業の指標は一段と悪化する可能性があります。
一方、6月の大阪で開催されるG20で米中首脳会談が実現し、通商交渉が合意に達した場合でも、即時の関税撤廃は難しいとされています。
ファーウェイを巡る事実上の禁輸措置の影響が残れば、半導体関連製品や部品供給に携わる企業の設備投資や生産活動の回復に時間を要する可能性もあるだけに、米国経済の先行きが懸念されます。
こうした影響から、米債券市場では10年債利回りが一時2.30%割れへ低下、5/24の10年債利回りの上昇も2.32%に留まり、2年債利回り(2.17%)との長短金利が縮小、さらに3ヵ月物T-Billの2.34%との長短金利差も5/23に逆転、逆イールドから脱却できない状況が続いています。
加えて、FRBの政策金利の予想中央値(2.35%〜2.375%)を下回ったことと合わせ、米経済の景気後退への懸念が台頭していることも、ドル円の上値抑制の一因となっています。
ドル円の下値目処は?
ドル円は、5/24に109円28銭まで下落、5/14の安値(109円15銭)や5/13の安値(109円02銭)が意識されます。
こうした中、5/24の月例経済報告での政府による景況感では、前月の「輸出や生産の一部に弱さが見られる」との表現から「一部に」との文言が削除され、景気判断が2ヵ月ぶりに下方修正されたものの、景気は緩やかに回復しているとの判断を維持しました。
しかし、ドル円が109円割れとなれば、3月の日銀短観で示された大企業・製造業の2019年度の事業計画の前提となる想定為替レート(108円87銭)が意識される可能性もありそうです。
今年秋に予定される消費税増税の再度の先送りを巡る議論にも影響が及ぶ可能性があり、ドル円の動向には注意が必要です。
さらに、108円87銭を下回った場合、トランプ大統領の対中追加制裁の影響から窓空けとなった5/6の高値(110円96銭)から、5/13安値(109円02銭)までの下落幅(1円94銭)を5/22高値(110円67銭)から引いた108円73銭が下値目処として意識されます。
仮に、この水準を下回った場合には、4/24高値(112円40銭)から、5/13安値(109円02銭)までの下落幅(3円38銭)を、5/22高値(110円67銭)から引いた107円29銭まで、円高が進行するリスクに備える必要があるかもしれません。