ユーロ圏、ドイツ、米国、英国の消費者物価指数
- (注 *英1月は予想値)
- ※出所: 米労働省、ユーロ圏、ドイツ、英国統計局
先週10日に発表された米1月消費者物価指数(CPI)は前年比+7.5%と市場予想(+7.3%)を上回り、1982年以来40年ぶりの上昇を記録しております。
一方、ユーロ圏およびドイツ(HICP)はいずれも前年比+5.1%と米国(+7.5%)や英国(予想:+5.4%)と比べ上昇率は低く抑えられています。こうした要因として挙げられるのが、ドイツでは、大幅に上昇した住宅価格が消費者物価指数の対象外となっているほか、フランス政府は4月の総選挙を控え、エネルギー価格を統制する動きに加え、農業助成金制度を導入するなど、物価上昇の抑制策が講じられている影響があると見られます。
また、ウクライナ情勢への警戒から天然ガスや原油価格の上昇もあり、公表される数値ほど欧米間でインフレ率の開きが大きいとは考えにくいとの見方があることを認識する必要があるかもしれません。
いずれにしても米FRBや英中銀とともにECBも含め、各国中銀が掲げるインフレ目標の2.0%から大きく乖離している事実からすれば、FRBや英中銀の金融政策正常化に向けた動きから遅れをとっているECBも年内に正常化に向けた利上げに転じるとの見方は予想以上に早まる可能性もあるかもしれません。
さらに、年初から数週間見られたNY株式市場の調整は、昨年7−9月期の企業業績がコロナ禍以前の2019年の水準から40%近く増加したことが、過去のモノとして捉え、今後も同様もしくはそれ以上の収益を計上することに対する疑心暗鬼が一因となりました。
FRBが3月に0.25%もしくは0.50%の利上げを開始し、その後も継続的に利上げを実施すると同時にバランスシートの縮小も含め、正常化を急ぐことへの警戒も聞かれます。10日発表の米CPIを受け、米10年債利回りは2.0%を超えるとともに、2年債利回りも1.60%台へ上昇しております。
長短金利差の縮小から徐々に逆イールドへ向けた警戒感とともに、米経済のリセッションへの懸念が強まることになれば再びNY株式市場が調整に見舞われる可能性も懸念されます。FRBが今後のFOMCで市場との対話を通じながら、いかにNY株式市場に端を発する資産デフレへの警戒感を抑制するか注目されます。
ウクライナ情勢を巡る警戒継続
ウクライナ情勢を巡り、先週末12日の米露首脳による電話会談は平行線を辿ったものの、今後も対話継続で一致したほか、今週も独露首脳会談も含め、政治的解決を求める動きもあり、一旦はリスク回避が緩和されるかもしれませんが、引き続き突発的事態も含め、警戒感を緩めることは難しいのが現状です。
また、米政府の高官は緊迫度が一層増しているウクライナ情勢を巡り、「今週中にもロシアがウクライナへの侵攻を始める可能性がある」と警戒感を強めていることが、ユーロの上値を抑制しており、情勢次第ではユーロの一段の下落につながる可能性もあり、北京オリンピック閉会以降の動向に注意が必要です。
EUR/USD
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
ユーロは、先週10日の米消費者物価指数発表直後の下落から、ポジション調整によるドル売りを背景に一時1.1495ドルまで反発。1月14日及び2月4日の高値(1.1483ドル)を上回る場面が見られたものの、結果的に日足・雲の上限(現状:1.1438ドル)からの上値の重さが意識され反落しております。
MACDもシグナルを下抜けるか微妙な状況にあり、日足・雲の下限や基準線(1.1317ドル及び1.1308ドル)を下値支持線として下げ止まるか注目されます。
一方、前述の通り、インフレに対する欧米の差が数値以上ではないとすれば、仮に今後ウクライナ情勢を巡る警戒が後退して以降、先週10日の高値(1.1495ドル)や心理的節目とされる1.1500ドルを上抜ける可能性もあり、ウクライナ情勢次第といった現状から進展が見られるか注目されます。
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