来週の株式見通し(7/16〜7/19)
来週の東京株式市場は底堅い展開が予想される。東証一部の売買代金の伸び悩みは続く可能性が高いが、国内企業の4-6月期決算発表に向け業績観測などが物色の材料となる場面が目立ってくるだろう。円高を受けて週前半は下押す展開も予想されるが、上昇基調は続きそうだ。
図表1は、国際通貨基金(IMF)が7/9に発表した世界経済の成長率見通しである。米景気拡大の鈍化と中国経済の減速、欧州景気後退の深刻化を指摘し、今年の世界経済の成長率をプラス3.1%と、4月時点のプラス3.3%から下方修正した。一方、日本は過去最大規模の金融緩和策と民間需要の拡大を理由に、今年の成長見通しを4月時点のプラス1.6%(改定値1.5%)からプラス2.0%に引き上げた。国内の景況感改善や政策期待を背景に押し目買い意欲は強く、日経平均株価は5/22高値(15,627円)に向けて上値試しが続く公算が高い。
図表1:世界の経済成長率見通し(IMF)
- ※単位%、カッコは4月発表時からの変化
- 出所:2013/7/10付け日本経済新聞よりDZHフィナンシャルリサーチが作成
上海総合指数は7/5の戻り高値(2,007P)を更新し、短期的には下振れ懸念が和らいだ。7/15発表予定の中国4-6月期GDP、6月鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資などが予想を上回れば、株価の持ち直すきっかけとなる。また、米国では早期の緩和縮小観測の後退で、米長期金利の上昇が抑制される可能性がある。米長期金利上昇で弱含む傾向にあった新興国市場が逆にポジティブに反応すれば、日本株の上値を抑える要因が薄れるだろう。
反面、米長期金利の上昇一服でドル安円高に振れやすい。ドル円相場は100円を意識してもみ合いが予想され、輸出主力株が中心となって全体の大幅高をけん引できるほどではなさそうだ。
来週の米国の経済指標では、7月NAHB住宅市場指数(7/16)、6月住宅着工件数・許可件数(7/17)、6月景気先行総合指数、7月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、6月北米半導体製造装置BB レシオ(7/18)が発表される。そのほか、ベージュブックの公表、バーナンキFRB議長の金融政策についての議会証言(〜7/18)がある。一方、国内では、6月首都圏新規マンション発売(7/16)、5月全産業活動指数(7/19)など、全体的に材料視される指標発表はないといえよう。
日経平均株価の予想レンジは13,850円−14,700円。上昇基調が続く13週移動平均線(7/11現在、13,867円)を下値で意識しながらの推移が予想される。
直近の物色傾向で特徴的なのは、国内景気回復期待から陸運や建設、セメントなどの内需株物色が相対的に目立ってきた点。来週もその流れが続く可能性が高く、王子ホールディングス(3861)、トクヤマ(4043)、旭硝子(5201)、住友大阪セメント(5232)、三和ホールディングス(5929)、大建工業(7905)などに注目したい。
図表2:優位性高いのは底固めのNASDAQ総合指数(〜2013.7.10)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
図表2は、米国のダウ平均とNASDAQ総合指数(ハイテクやネット関連中心の指数)である。ダウ平均は2007年の史上最高値(14,164ドル)を更新したことで、1998年以降の動きでは拡大波動(上値は切り上げ、下値は切り下げる逆三角形)を形成中である。一方、2002年安値を切り下げた2009年3月安値からの上昇波動であるため、上値抵抗線からの反落は比較的大きな調整となる可能性が高い。
一方、NASDAQ総合指数は長期波動がダウ平均と異なる。2002年9月安値を切り上げた波動が、2007年の高値更新につながった。つまり、IT相場の反動による調整局面から新たな波動転換が確認されたことになる。NASDAQ 総合指数は2000年3月の史上最高値(5,048.62p)に向けて中長期の波動が続くことが予想され、当面はダウ平均よりも優位な展開が続くとみられる。
足元の動きでも、米主要指数のうちNASDAQ総合指数がいち早く高値を更新した。来週はインテルをはじめIBM、グーグルなどの決算がある。決算内容が好感されれば、日本のハイテク・情報通信・IT関連などに波及する公算が高い。KDDI(9433)、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(9437)、ソフトバンク(9984)などの通信株や、アイネス(9742)、富士ソフト(9749)などのITソフト関連などに注目。ハイテク株では、沖電気工業(6703)、電気興業(6706)、日本無線(6751)、アルプス電気(6770)、日本電子(6951)、日本ケミコン(6997)に注目したい。
来週の注目銘柄!
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット株価(円) |
注目ポイント |
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3861 |
590 |
369 |
製紙業界2強の一角。今期は値上げによる採算改善やブラジル子会社の寄与を織り込む。スマートフォン用フィルムなど機能材事業の拡大図る。高齢化に対応し大人用オムツの国内増強へ。株価は長期低迷からV字型ボトム完成へ。13週移動平均線からの切り返しも急速で直近高値更新にトライへ。買い残を売り残で割った信用倍率は1.14倍(7/5現在)と取り組み良好。予想配当利回りは2%以上。 |
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5232 |
470 |
293 |
国内セメント大手の一角。住友系。円安はマイナス要因であるが、セメント需要は復興需要続く。アベノミクスによる公共投資の増加が見込まれるほか、東京でオリンピックの開催決まれば、インフラ整備で需要上乗せへの連想も。株価は1989年以降の長期上値抵抗線をブレーク。13週移動平均線が26週移動平均線を上回るゴールデンクロスを通じ高値奪回へ。 |
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6703 |
340 |
175 |
中国を中心に新興国でのATM拡大期待は大きい。プリンター事業の採算改善で復活を狙う。デジタル消防無線や銀行のシステム統合、国民共通番号制度に伴う情報通信関連の収益拡大にも期待。株価は長期低迷相場からの底入れパターン。13週移動平均線をサポートに半値戻しをあっさりとクリアした。月足ローソク足では、上値遊びから一段高に期待か。 |
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6951 |
725 |
471 |
電子顕微鏡で世界首位級。主力の電子顕微鏡への引き合いは材料・化学・生物分野における研究開発から堅調。ハイエンド型も受注に寄与。電子ビーム描画装置は伸び悩むが、医療機器は中・大型病院や検査センターからの引き合い活発。株価は2003年高値を起点とした下落トレンドラインをブレーク後も順調。下への揺り戻し懸念あるが、もみ合いなら高値うかがう。25日移動平均線の上昇待ちか。 |
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9433 |
6,700 |
4,500 |
携帯電話「au」が主力の通信会社。通信設備障害は懸念材料だが、ARPU(加入者一人あたりの月間売上高)は下げ止まり、モバイルと固定のバンドル割引によるFTTHの契約純増へ。東南アジア地域との通信ネットワーク運用・保守拠点をベトナムに設立。株価は2007年高値5350円を上回り中期波動は上昇へ。上値メドは5月高値からの下げの倍返しで6700円処。信用倍率は0.84倍(7/5現在)と需給面に不安なし。配当性向は30%超をメド。 |
- 銘柄採用基準・・・ 文中の紹介銘柄の中から、時価総額が300億円以上、今期予想営業増益率が10%以上、今期予想連結PER18倍以下
- 「目標株価」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。