来週の株式見通し(2021/3/22〜3/26)
来週(2021/3/22〜3/26)の日経平均株価の予想レンジは29,600円〜30,500円。高止まりが続く米長期金利の一段の上昇や米中関係の緊迫化などがリスク要因となるが、配当利回りが高い銀行や自動車株などバリュー株への物色でTOPIX(東証株価指数)主導によるしっかりの相場展開が続く公算が大きい。値がさ株が多い成長株やハイテク株などのポジション調整の大口売りも一巡した可能性があり、それらへの見直し買いが日経平均株価の支えにもなりそうだ。
3月第2週(3/8〜3/12)の現物と先物の両取引を合算した投資主体別の売買は、海外投資家が4週ぶりの買い越しとなった。今週に入ってからも株価は堅調に推移しており、買い越しを続けている公算が大きい。
3/29の権利付き最終売買日や権利落ち日の3/30の寄り付き近辺では、大口投資家による「配当再投資の買い」が入る。配当金の実際の支払いは2〜3カ月程度先になるため、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を始めとする年金などは株式資産の目減り分をカバーするため、先物買いで代用する傾向がある。
実際に上記の特殊要因が発生するのは翌週となるが、良好な地合いの中でその買い需要を見越した短期筋の買いなどが指数上昇に寄与する展開が予想される。
米連邦公開市場委員会(FOMC)では、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0〜0.25%で据え置くことが決定され、2023年末までのゼロ金利継続が示唆された。FOMC参加者18人による経済・金利見通しでは、2023年までに利上げが実施されると予想したメンバーは7人となり、2020年12月の5人から2人増えた。市場では、10人程度の増加が見込まれていたことで、ハト派と受け止められた。
一方、ドル円相場は投機筋のドル買いと本邦実需の円買いが綱引きとなり、1ドル=109円前後でもみ合いが続く。期末決算に向けたレパトリエーション(国外滞留資金の本国環流)の要因などで、3月の月足は陰線になることが多い。現時点では円高方向への揺り戻しの気配はないが、今年は米国の長期債の下落(利回りは上昇)で日本の機関投資家は損切りを余儀なくされており、ドル売り・円買い圧力が強まる可能性が指摘されている。米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀金融政策決定会合が通過したことで円高方向に一変する可能性もあり、急激な変化は株式市場の逆風になる。
海外の経済指標では、米2月中古住宅販売(3/22)、米2月耐久財受注、EU首脳会議(3/25)、独3月Ifo景況感指数、米2月個人消費所得・個人支出(3/26)などが注目材料となる。
日経平均株価(図表1)は上向き基調を保っている25日移動平均線(29,644円 3/18)を早期に上回り、調整が一巡したと判断できる。
RSI(9日)は92.0%(3/18)と過熱ゾーンにあるが、10日移動平均線(29,442円 同)が25日移動平均線を上回る可能性があり、むしろ強いモメンタムが目先的には続く可能性が高い。TOPIX(東証株価指数)はすでに昨年来高値を更新しており、追随する動きがみられるかが注目される。
一方、52週移動平均線からの上方かい離率は25.0%(3/18)と、2015年以降でも最高値圏にある。上述した25日移動平均線は上向き基調にあるものの、時間の経過によっては横ばい、あるいは下向きに変わる可能性があり、それが株価の上値を抑える要因にもなる。
2007年の高値(米住宅バブル崩壊で下げる直前の高値)や、2018年から続いた24,000円のフシは、ともに1989年高値から崩れていく過程で形成したもみ合いの中心水準である。直近終値ベースの高値30,467円は、1990年4月安値(28,002円)から同年6月高値(33,192円)までの上昇の中値付近に相当し、すでに高値を付けた可能性もある。
図表1:日経平均株価の日足チャート(2019/12/2-2021/3/18)
- 出所:QUICKよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
主要な国内経済指標の発表では、日銀金融政策決定会合議事要旨(1/20〜21開催分)、2月企業サービス価格指数(3/24)、3月都区部消費者物価指数(3/26)がある。
企業決算では、ダントーHD(3/23)、出前館、ジャステック、YE DIGIT、ヒマラヤ、ミタチ(3/26)などが発表を予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、米2月中古住宅販売(3/22)、米10-12月期経常収支、米2月新築住宅販売、米2年国債入札(3/23)、米2月耐久財受注、米5年国債入札(3/24)、EU首脳会議、米10-12月期GDP確報値、米7年国債入札(3/25)、独3月IFO景況感指数、米2月個人消費所得・個人支出(3/26)などがある。
来週の注目銘柄!(3/22〜3/26)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
---|---|---|---|---|
1878 | 15,000 | 10,500 | 賃貸住宅の建築請負から一括借り上げで業界大手。同社の3Q累計(4-12月)の連結営業利益は778億円(前年同期比12.1%減)だった。減益とはなったものの、通期計画800億円に対する進ちょくは97.3%と高く、達成確度は高そう。不動産事業で「賃貸経営受託システム」による一括借上物件の増加に伴い、家賃収入が増加した。足元では受注回復や粗利改善を期待する動きも強まっており、今後も業績拡大期待を背景に買いが向かいそうだ。ターゲットは15,000円、ロスカットは10,500円 | |
5110 | 1,600 | 1,100 | タイヤ国内2位。今期通期の連結営業利益予想は460億円(前期比6.0%増)、年間配当予想は50円(前期は35円)としている。営業利益予想は市場予想416億円を上振れており、足元では買いが継続。加えて東北大学と共同でゴム破壊のX線CT撮影の約1,000倍速化に成功したとも発表しており、今後の成長期待を高める材料もあって、目先は資金流入が継続する公算が大きいと考える。ターゲットは1,600円、ロスカットは1,100円 | |
7628 | 2,100 | 1,460 | 自動車部品を手がける独立系メーカー。同社は2月に連結業績予想を上方修正した。営業利益予想は従来の13億円から19億円へと大きく引き上げられ、これを好感して株価は大きく上昇。全社的な販売管理費の抑制が奏功しており、目先は業績拡大期待が強い。加えて同社は上限3億円の自社株買いも発表しており、買い材料の豊富さから今後も株価は堅調に推移する可能性が高いとみる。ターゲットは2,100円、ロスカットは1,460円 | |
7819 | 530 | 370 | 卸から発した化粧・服飾雑貨のファブレスメーカー。同社は昨年3月の日本株急落局面で株価を大きく下げたものの、その後の持ち直しの勢いは非常に強かった。また、コロナ禍においても化粧品・医薬部外品の受託製造会社を買収するなどして事業拡大を積極的に進めており、そういった動きもあって株価は昨年8月以降しっかりとした推移を維持している。今後も良好なモメンタムからくる買い安心感を背景に、物色は向かいやすいとみる。ターゲットは530円、ロスカットは370円 | |
7856 | 1,900 | 1,300 | 樹脂繊維製品のほか機械部門も持ち原糸からの一貫生産に強み。1Q(11-1月)の連結営業利益は、シート関連・コンクリート補強繊維「バルチップ」が建設関連の需要縮小や工事遅れの影響によって低調となったことから6.5億円(前年同期比10.5%減)と軟調な着地となったものの、足元では悪材料出尽くし感が強く、下値の底堅さが見て取れる。52週移動平均線のサポートも期待できる状況で、今後は反発狙いの買いが向かいやすいとみる。ターゲットは1,900円、ロスカットは1,300円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・東証1部上場銘柄で3/18現在、時価総額が1兆円以下、PBRが3.0倍以下、PERが10.0倍以上、配当利回りが2.0%以上、株価が10日移動平均線を上回っている中から、業績面、話題性、成長性などを総合的に考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。