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金は米FRB年内テーパリング開始見通しが圧迫
2021/9/13
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金は米CPIでインフレに対する見方を確認
9月6日の週のニューヨーク金市場は、欧州中央銀行(ECB)理事会を控えてユーロに利食い売りが出たことを受けて戻りを売られた。中心限月となる12月限は中長期の節目となる200日移動平均線(10日1,816.0ドル)や1,800ドルの節目を割り込んだ。8月の米雇用統計で労働市場の改善が急減速し、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和の縮小(テーパリング)観測が後退したが、米金融当局者は年内のテーパリング開始を見込んでいる。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、国内経済の改善が続いた場合、米FRBは年内にテーパリングを開始することが適切になり得るという考えを示した。一方、ECB理事会ではパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れ規模を小幅縮小することを決定した。ただラガルドECB総裁は「テーパリングではない」と強調し、慎重姿勢を示した。市場や金融環境次第で必要と判断すれば、再び景気刺激策を実施するとの姿勢を維持した。またオーストラリア準備銀行も7日の会合で債券買い入れを10億豪ドル減額の週40億豪ドルとすることを決定した。ただ債券購入を少なくとも2022年2月半ばまで延長するとした。今週は14日に8月の米消費者物価指数(CPI)の発表がある。8月の米生産者物価指数(PPI)は前年同月比8.3%上昇し、2010年11月以降で最大の伸びを記録した。サプライチェーン(供給網)の混乱で高インフレが続くことを示唆している。米CPIの事前予想は同5.3%上昇(前月5.4%上昇)となっている。
イエレン米財務長官は債務上限が復活するなか、手元資金のやり繰りを巡って財務省が行っている臨時措置がいつまで継続するかは分からないとした上で、議会に改めて対応を呼び掛けた。現金と臨時措置が10月中に使い果たされるのが最も可能性が高いとした。一方、米民主党のペロシ下院議長は民主党が現在調整を進めている3兆5,000億ドル規模の歳出法案に米連邦政府の債務上限引き上げに関する条項を盛り込まない方針を示した。米議会の協議の行方と市場で材料視されるかどうかを確認したい。
バイデン米大統領は9日、米連邦政府職員に新型コロナウイルスのワクチン接種を義務付ける方針を発表した。大企業の従業員に対しても、ワクチン接種か毎週の検査を義務付ける。感染力の強いデルタ株がワクチン未接種者に猛威を振るっている。ワクチン接種を拒否する職員は解雇される可能性がある。またルールに従わない企業には罰金が科される。この決定に共和党の州知事らは猛反発し、個人の自由を侵害するものとして、米政権を相手に訴訟を起こす構えである。米大統領は10日、「何人かの共和党の州知事が子どもや地域社会の健康を軽視していることにとても失望している」と述べた。
9月10日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比0.35トン減の998.17トンとなった。米連邦準備理事会(FRB)の年内の量的緩和の縮小(テーパリング)見通しを受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、9月7日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは20万6,039枚となり、前週の21万6,550枚から縮小した。今回は買い戻しが4,987枚、新規売りが5,524枚出て1万0,511枚買い越し幅を縮小した。
プラチナは供給過剰見通しに転じる
ニューヨーク・プラチナ10月限は、ドル安一服や8月の米生産者物価指数(PPI)で高インフレが示されたことを受けて軟調となり、2020年11月以来の安値942.7ドルを付けた。またワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告で、第2四半期のプラチナは供給回復を受けて5トンの供給過剰(前四半期3トン供給不足)に転じた。南アで昨年の操業停止を受けて鉱石が積み上がっていたが、処理が進んだことが背景にある。総需要は新型コロナウイルスの影響からの回復が継続し、前年同期比23%増となった。今年は6トンの供給過剰(前年27トン供給不足)が見込まれているが、需要回復が続くと下支えになるとみられる。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、9日のロンドンで19.25トン(前週末19.34トン)、ニューヨークで38.56トン(同38.56トン)、南アで14.23トン(同14.32トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、9月7日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは6,349枚となり、前週の8,057枚から縮小した。
ニューヨーク金はドル高で戻りを売られる
ニューヨーク金12月限はドル安一服を受けて戻りを売られ、中長期の節目となる200日移動平均線(10日1,816.0ドル)を割り込み、テクニカル面で悪化した。米雇用統計で労働市場の改善が急減速したが、米連邦準備理事会(FRB)の年内の量的緩和の縮小(テーパリング)見通しに変わりがないなか、欧州中央銀行(ECB)理事会を控えてユーロの利食い売りが出た。ECB理事会ではパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の縮小が決定されたが、ラガルドECB総裁は慎重姿勢を示した。今週は8月の米消費者物価指数(CPI)などの発表があり、インフレに対する見方を確認したい。
9月13日からの週の注目ポイント
13日 | 企業物価指数(8月) | ☆ |
米財政収支(8月) | ☆☆ | |
14日 | 英雇用統計(8月) | ☆☆ |
米消費者物価指数(8月) | ☆☆☆ | |
15日 | 機械受注(7月) | ☆☆ |
中国小売売上高(8月) | ☆☆ | |
中国鉱工業生産(8月) | ☆☆ | |
英消費者物価指数(8月) | ☆☆ | |
ユーロ圏鉱工業生産(7月) | ☆☆ | |
米ニューヨーク連銀製造業景況指数(9月) | ☆☆ | |
米輸出入物価指数(8月) | ☆ | |
16日 | 米鉱工業生産・設備稼働率(8月) | ☆☆ |
貿易収支(8月速報) | ☆☆ | |
ユーロ圏貿易収支(7月) | ☆ | |
米小売売上高(8月) | ☆☆☆ | |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(9月) | ☆☆ | |
米企業在庫(7月) | ☆ | |
対米証券投資(7月) | ☆☆ | |
17日 | 英小売売上高指数(8月) | ☆☆ |
ユーロ圏国際収支(7月) | ☆ | |
ユーロ圏消費者物価指数(8月確報) | ☆☆☆ | |
米ミシガン大消費者信頼感指数(9月速報値) | ☆☆ |
※重要度を3段階で表示
金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月
<参照>SBI証券>マーケットデータより
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