アップルの「iPhone8」への採用や、大手家電各社による有機ELテレビの参入から、有機EL関連銘柄への注目が高まっているようです。有機EL事業に特化した唯一の上場企業と目される、米国のユニバーサルディスプレイは、5/4(木)に発表した1-3月期決算で通年の売上予想を大幅に引き上げており、業界のモメンタムはますます強まることが期待できるでしょう。
図表1:主要関連銘柄
銘柄 | 株価 (5/16) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
ユニバーサル ディスプレイ(OLED) | 117.05ドル | 117.85ドル | 47.88ドル |
アプライド マテリアルズ(AMAT) | 45.07ドル | 45.08ドル | 19.54ドル |
サムスン電子 (005930) | 2,319,000ウォン | 2,361,000ウォン | 1,249,000ウォン |
LGディスプレイ (034220) | 28,800ウォン | 33,150ウォン | 23,550ウォン |
出光興産(5019) | 3,960円 | 3,990円 | 1,790円 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
騰勢強める有機EL関連銘柄 |
有機EL関連銘柄への物色が強まっているようです。
16年9月7日掲載の外国株式特集レポート「拡大が期待される有機EL!ど真ん中銘柄はコレ!?」 でご紹介した5銘柄の株価推移を図表2に示していますが、LGディスプレイを除いていずれも大幅な上昇となっています。
16年9月7日〜17年5月15日の期間でみると、S&P500指数の上昇率が10%に対して、ユニバーサルディスプレイは98%、アプライドマテリアルズが48%、サムスン電子が42%、LGディスプレイが-6%、出光興産が100%です。
アプライドマテリアルズとサムスン電子については、有機ELよりも半導体市場の回復のほうが株価上昇の要因として重要だったと見られ、また、出光興産は、原油価格の上昇による在庫損益の動き、あるいは、昭和シェル石油との経営統合などが材料として重要だった可能性があり、必ずしも「有機EL」が主因ではなかったかもしれません。
しかし、有機ELの「ピュアプレイ」(関連事業に特化している)であるユニバーサルディスプレイが17年に入ってから騰勢を強めていることに注目できるでしょう。
有機ELの市場は、16年までにスマホのディスプレイとして約25%に普及、テレビの販売台数は90万台まで拡大してきました。しかし、そのポテンシャルから見て、まだまだ始まったばかりと考えてよいでしょう。
最近では5/8(月)にソニー、5/10(水)にパナソニックが有機ELテレビへの参入を表明しています。これまで国内の有機ELテレビはLGディスプレイの製品だけでしたが、3月には東芝も参入しており、家電業界では「有機ELテレビ元年」の様相を呈してきたとされます(パネルの調達はいずれもLGディスプレイです)。
また、有機ELを一部に採用する「iPhone8」の発売が今年9月と業界で噂され(指紋認証モジュールとの統合に手間取って若干ずれ込むとの情報もありますが)、有機ELに対する市場の注目は増々高まることが期待できそうです。
尚、なぜ有機ELディスプレイ市場の拡大が期待されるのか、また、同市場の主要プレーヤーにどんな企業があるかなど、投資テーマの基本的な見方については、先にあげた16年9月7日付レポートをご参照ください。
図表2:有機ELの関連銘柄は大幅な株価上昇
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:関連銘柄の業績見通しはいずれも上方修正!
企業名 | 対象 決算期 |
前回予想 営業利益 |
今回予想 営業利益 |
業績単位 | 予想修正率 |
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ユニバーサルディスプレイ | 17年12月期 | 96 | 108 | 百万ドル | 12% |
アプライドマテリアルズ | 17年12月期 | 2,885 | 3,439 | 百万ドル | 19% |
サムスン電子 | 17年12月期 | 32,385 | 51,519 | 10億ウォン | 59% |
LGディスプレイ | 17年12月期 | 1,339 | 3,295 | 10億ウォン | 146% |
出光興産 | 18年3月期 | 95 | 127 | 10億円 | 33% |
- 注:前回予想は16年9/5時点、今回予想は17年5/15時点です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
成長見通しに自信を深めるユニバーサルディスプレイ |
ユニバーサルディスプレイは、事業の100%が有機EL関連からなる、世界的にも上場企業としては類のない会社です。同社のティッカーは、英語圏で有機ELを表わす「OLED」(オーレッド)で、まさに有機ELの「ピュアプレイ」です。
このため、同社の業績をフォローすることで、有機EL市場の勢いの強弱を測ることができると言えます。
同社の四半期業績は、16年7-9月期までは、前年同期比で減収・減益となる期が混ざることがあり、業績動向は不安定となっていました。しかし、16年10-12月期、17年1-3月期と安定感を増してきました(図表4)。
決算リリースでのCEO(最高経営責任者)のコメントを見ると、以下の通り事業の先行きに対する自信が高まっている様子が窺えます。
16年4-6月期(16年8月4日発表):「長期の成長見通しは引き続き強いと考えているが、足もとの売上は半年程度後ずれしそうだ。17年は業界の生産キャパシティ拡大を受けて高い売上成長を見込んでいる。」
16年7-9月期(16年11月3日発表):「7-9月期業績は我々の想定に沿うものとなった(筆者注:減収・減益でした)。前四半期でも言及したように、売上成長は17年に後ずれしたが、今期は将来の成長に向けて有意義な準備をする年になっている。」
16年10-12月期(17年2月23日発表):「10-12月期の業績は、次世代エミッタ(発光材料)の使用が始まったことで、強含みで終えることができた。将来を見渡すと、我々の事業モメンタムは極めて強く、目前に広がる巨大な事業機会を捉えるために良いポジションにある。」
17年1-3月期(17年5月4日発表):「現在、有機EL産業はエキサイティングな時期にある。顧客による生産設備の投資や一連の新しいディスプレイや照明製品の開発により、予見できる将来に関する成長見通しはポジティブだ。」「有機EL産業は従来見ていたより高い成長に向かっていると考えるため、17年の売上見通しを前年比30-40%に相当する260-280百万ドル(筆者注:従来見通しは230-250百万ドル)に引き上げた。」
株式市場で注目されている有機ELパネルを使った「iPhone8」もソニー、パナソニックが発売する有機ELテレビも、実際に世の中に出てくるのはこれからです。有機EL市場は本格的な成長局面に入ったと見られ、有機EL関連銘柄の相場は継続する可能性が高いでしょう。
図表4:業績見通しの視界が開けてきたユニバーサルディスプレイ
- 注:17年2Q以降の予想は、Bloomberg集計のコンセンサスによります。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要関連銘柄のご紹介 |
市場:米国(NASDAQ) |
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決算期 |
売上高(百万ドル) |
(前年比) |
純利益(百万ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
270 |
36% |
78.8 |
63% |
1.69 |
18.12予 |
341 |
27% |
114.9 |
46% |
2.41 |
株価(5/15):116.90ドル |
予想PER(17.12期):69.2倍 |
||||
|
市場:米国(NASDAQ) | |||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(百万ドル) |
(前年比) |
純利益(百万ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.10予 |
13,245 |
22% |
2,863 |
61% |
2.67 |
18.10予 |
13,847 |
5% |
2,991 |
4% |
2.87 |
株価(5/15):44.32ドル |
予想PER(17.10期):16.6倍 |
||||
|
市場:韓国(KOSPI) | |||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(10億ウォン) |
(前年比) |
純利益(10億ウォン) |
(前年比) |
EPS(ウォン) |
17.12予 |
231,889 |
15% |
36,929 |
98% |
259,446 |
18.12予 |
246,678 |
6% |
39,230 |
6% |
286,646 |
株価(5/15):2,305,000ウォン |
予想PER(17.12期):8.9倍 |
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|
市場:韓国(KOSPI) | |||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(10億ウォン) |
(前年比) |
純利益(10億ウォン) |
(前年比) |
EPS(ウォン) |
17.12予 |
28,617 |
8% |
2,265 |
147% |
6,424 |
18.12予 |
27,983 |
-2% |
1,722 |
-24% |
4,785 |
株価(5/15): 28,800ウォン |
予想PER(17.12期):4.5倍 |
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|
市場:日本(東証) | |||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(10億円) |
(前年比) |
純利益(10億円) |
(前年比) |
EPS(円) |
18.3予 |
3,611 |
13% |
79.4 |
-19% |
485 |
19.3予 |
3,643 |
1% |
81.9 |
3% |
495 |
株価(5/15): 3,885 円 |
予想PER(17.12期):8.0倍 |
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- ※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。