はじめての投資〜入門編〜
(提供:ウエルスアドバイザー 編集:SBI証券)
株式といわれてすぐに思い出すのは「○×株式会社」です。生活に必要な商品やサービスを提供してくれる会社のほとんどは株式会社で、株式会社はその事業をするために働いてくれる人、事業に必要な物、そして資金を必要とします。株式はその「お金」となります。株式会社はお金を出してくれた人に対し株式を発行します。そして株式の持主、いわゆる株主には一定の権利が与えられます。もちろん、その権利はお金を出す側にとっては、その会社にお金を出してもよいと思う魅力的な権利です。会社側も一度に多くお金を集めることができ、銀行から借りる借金とは違い返済義務がない等メリットが多く、株式会社制度は広く普及しているわけです。 |
株式会社がお金を集める手段としては株式の他に「社債」があります。株式と違うのは、その会社の経営に参加できないことが挙げられます。会社側にとって社債は返済義務が生じる反面、経営に対して文句を言われないメリットはあり、お金を出す側にとって社債は、分け前は制限されるものの、元本とその利息は優先的に手にできるメリットがあります。
ある株式会社のためにお金を出す側にとって株式の魅力は、分け前に制限が設けられていないことでしょう。損は出した分に制限される一方、会社が営んだ事業の結果、生んだ利益は持っている権利に応じて無制限に大きくなった分け前を手にできる可能性があります。
株を買うと、どんないいことがあるのですか?
株式会社が発行した株を買うとその人は株主と呼ばれるようになり、株主としての権利を持つことができます。権利は大きく以下の3つに分けられます。
1は株主総会に出席して、会社の色々な提案に対して賛成・反対の意思表示ができる権利です。一定の持株比率以上の株主には、会社の帳簿を見ることや取締役の解任も提案できる等の権利が与えられています。 |
2は会社がその事業の営みによってあげた利益の一部を「配当金」の形で受けられる権利です。企業業績や会社の経営方針等により必ずしも配当があるとは限りませんが、会社の利益が増えれば株主への「配当金」も増えますので、将来繁盛しそうな会社の株をもつことがお金を増やすことにつながるといえます。 |
3は会社が事業を取り止める、つまり解散するという話ですから、1や2のような株主としての権利とは異なります。しかし、会社が解散する際に、負債があればまず負債(借金)を返済し、なお財産がある場合、株主はその持株数に応じて残った財産の分配を受けることができるのです。これを残余財産分配請求権(ざんよざいさんぶんぱいせいきゅうけん)といいます。
どこの会社の株式を買うかの重要なポイントの一つとして「株主優待を受けられる」特典は見逃せないポイントの一つです。「株主優待」とは、会社が自社の商品や優待券、サービスを株主に無料でプレゼントするものです。どの会社も実施しているわけではないのですが、株主還元策の一環 としてユニークな方法を実施している会社が多くあります。たとえば鉄道会社や航空会社だと無料パスを配ったり、遊園地や映画館等の企業は招待券等の提供を行っています。 |
株を始めて最初に疑問に思うのは、値段の決まりかたではないでしょうか。株の売買注文は通称『板』と呼ばれる注文控に集められます。そしてそこで『価格優先』『時間優先』の競争売買を原則として取引が成立していきます。
まずは下記の6つの用語を覚えてみましょう。
約定(やくじょう) |
ザラバ |
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株等の売買が成立すること。 |
寄付と引けの間の取引時間中のことを指します。また前場、後場の寄付と引けとの間に行われる売買をザラ場商いといいます。(前場、後場の寄付(始値)と引け(終値)は板寄で決定します。) |
前場(ぜんば) |
後場(ごば) |
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証券取引所における午前の取引時間のことを指し、東証の場合9時から11時30分までの時間帯を指します。 |
証券取引所における午後の取引時間のことを指し、東証の場合12時30分より15時までの時間帯を指します。 |
成行注文(なりゆきちゅうもん) |
指値注文(さしねちゅうもん) |
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自分で値段を決めないで出す注文。 |
自分の売買したい値段を決めて出す注文。 |
板寄方式
売買成立の方式には「板寄方式」と「ザラバ方式」の2種類があります。板寄方式は、売注文と買注文のバランスによって売買を成立させます。約定値段決定前の売買注文を、優先順位の高い価格から合致させ、かつその数量が合致する値段を約定値段とするのです。株価はその取引される場と時間(場合)によってルールも決まり方も違ってくることを覚えておきましょう。
板寄は以下の3つの条件を満たす値段で売買が成立します。
特別な場合を除いては、前場が始まる9時、前場が終わる11時30分、後場が始まる12時30分、大引けの15時はこの方法で注文が処理されるということです。成行の売り買いが一方に偏っていると値段が飛んでしまう可能性もあるということを覚えておきましょう。
ザラバ方式
ザラバ方法では、既に発注されている売注文(または買注文)の値段と、新たに発注された買注文(または売注文)の値段が合致した時にどんどん約定していく方法です。売注文と買注文の値段が合致すると、その都度売買が成立し株価が変動していきますが、売買成立の順序については「価格優先の原則」と「時間優先の原則」という2つの原則に則って優先順位が決められているのです。「価格優先の原則」は、買注文は値段の高い注文が値段の安い注文に優先し、売注文は値段の安い注文が値段の高い注文に優先する、というルールです。「時間優先の原則」は、同じ値段の売/買注文があった場合、注文を受付した時間が早い順に優先的に約定成立を行う、というルールです。「ザラにある普通の場」というのが語源と言われています。
株式投資には最低どのくらいお金がかかると思いますか?10万円ぐらい?100万円?いや500万円ほど?どれも正解です。これは株の値段がとてもバラエティに富んでいるからです。
例えば、東証一部上場のソフトバンクは100株単位で取引できます。2006年3月末の株価は3,450円ですから、手数料を除く最低投資金額は34万5千円となります。一時話題となったヤフーのように1億円以上の株価をつけた銘柄もあります。ただ目安として上場株の単純株価平均(※)が参考になります。2006年3月末の東証一部単純平均は551円となっています。単純株価平均は、売買単位を1,000株に換算して計算しますので、平均的には55万1千円程度のお金が必要ということができます。ただあくまで平均的な金額に過ぎず、各自の予算に合わせて株式を選ぶことが十分できるようになっています。また、最近は少額でも株式を購入できる制度が整ったため、1万円からでも株式を購入することができるようになりました。
(※)単純株価平均
単純株価平均とは、対象となる銘柄の株価(売買単位を1,000株に換算)合計をその銘柄数で除したものです。東京証券取引所では第一部全銘柄について単純平均を算出し日経新聞(マーケット面)に公表しています。計算方法が簡単で、その時点での平均的な株価水準をみることができます。
企業の発行する有価証券を証券取引所で売買することを証券取引所によって承認された企業のことです。つまり上場企業とは証券取引所の上場審査基準を満たしている、ということになります。
株式を自由に売買できるようにするためには、売や買の注文を一堂に集める「市場」が必要となります。その市場の役割を担っているのが、全国の証券取引所です。現在、日本の現物市場には4つの取引所があり、東京証券取引所が最大です。
証券取引所は多くの人が持ち寄った売買注文を取り持っていますが、売買される企業の株は取引所の審査を通過したものに限られています。これは当該株が、投資家保護の観点から健全な経営がなされ、株式を円滑に売買できるように配慮されているためです。株式会社ならどこでも上場されるわけではなく、この上場審査基準を満たした企業が上場企業と呼ばれ、広く投資家の間で売買が行われることとなります。尚、上場審査基準を満たした企業でも、上場を望まない企業は上場されません。日本の株式会社総数は約150万社、うち上場会社は約3,800社となっています。(2006年3月末) |
上場株式の最低売買単位は一単元です。取引はこの整数倍で行われます。単元株制度では一単元について一議決権があり、一単元の株数は発行会社が自由に決められます。
一単元となる株数は、過去には企業によって1株、10株、100株、500株、1,000株などと様々だったのですが、東証の「投資家にとってわかりやすく、より売買しやすい証券市場にする」との目的で、株式の売買単位を統一する取り組みが進められています。
現在は100株と1,000株の2種類の売買単位で取引されており、将来的には100株に統一される予定となっています。
単位株制度から単元株制度へ
「単位株制度」は額面が50円や500円の株券を、額面の合計が5万円になるようにし、その5万円を1単位とする制度で(50円額面なら1,000株、500円額面なら100株といった具合)、2001年9月まで採用されてきました。しかし、2001年10月に改正商法が施行され、「単位株制度」は廃止され、替わりに企業が売買単位を自由に決められる「単元株制度」が導入されました。単元株制度は、一定株数を1単元とし、証券取引所における取引や、議決権を行使をすることができ、また、発行企業が一定株数を自由に変えることができることが特徴といえるでしょう。
1単元に満たない株式を単元未満株といいます。配当等を受ける経済的な権利はありますが、議決権等経営に参加する権利はありません。株式市場で売買することはできませんが買取請求制度を利用すれば、単元未満株を売却することができます。買取請求をした場合の買取価格は、上場株式の場合は、株主が買取を請求した日の、証券取引所の終値となっています。
株式会社が資本金を増やすことを「増資」と言います。増資には新株発行が伴いますが、資金調達のために行われる「有償増資」と、資金調達以外の目的で行われる「株式分割」とに分けられます。増資による資金調達は銀行借り入れや社債の発行等に比べ、資金の返済義務がないことや調達コストが安いこと等から多くの企業で利用されています。株主側から見てもその資金が設備投資や研究開発に用いられることで会社の更なる成長が促され、株価の高評価につながる期待を持つことができます。一方、株式分割においても株主還元の一環として実行されることから株主にとって注目される材料となります。
有償増資
新株を引き受ける人から払込金を徴収しますが、その金額は時価をベースとして決められます。また、誰に引き受けてもらうかで、「株主割当増資」、「第三者割当増資」、「公募増資」の3つに分かれます。不特定・多数の者に対して募集する「公募増資」の他、株主に等しく新株引受権を付与する「株主割当増資」。「第三者割当増資」は株主以外の第三者に「新株引受権」を付与して新株を割当てる増資をいいます。
株式分割
株式分割は既に発行されている株を1株から2株というように分割し株式数を増加させることをいいます。株式分割は増配と並び主要な株主還元と見なされていますが、株式分割による株主価値の増加は「株数の増加に伴う配当金の増加分」であり、安定配当指向の強い日本で実質増配となることです。株価は「権利落ち」から調整されるため、株式分割は株主価値に対し中立要因でしかありません。ただ株価が下がるため流動性が増し、実質的な株価上昇要因となります。
企業が、その自社の商品やサービスを権利確定した株主に対して無料でプレゼントをするのが「株主優待(※)」です。「株主優待」を受けたいために株主になったからといって、株主優待がすぐに受けられるようになるわけではありません。株主優待は、この日に株主であるならばプレゼントしますよ、という基準日があります。その日のことを『権利確定日』といい、株主としてのもろもろの権利(=株主の権利)を得るための確定日のことです。
※全ての企業が実施しているわけではありません。
株主優待&配当の権利確定日
株主優待&配当を得るためには、『権利確定日に株主となる』 = 『権利確定日に株主として対象企業の株主名簿に記載されている』必要があります。そのためには、権利確定日の2営業日前(休日を除く)には、株を購入し、かつ約定が成立していなければなりません。例えば、以下の表の日程の場合、月曜日が株主優待・配当の権利確定日だとすると、休日を除いた2営業日前の木曜日には、株を購入し、かつ約定が成立している必要があります。その日のことを『権利付最終日』と言います。その流れを下に示しましょう。
木 |
金 |
土 |
日 |
月 |
---|---|---|---|---|
権利付最終日 |
権利落ち日 |
非営業日 |
非営業日 |
権利確定日 |
つまり権利確定日から2営業日前の『権利付最終日』に株を購入してある場合に株主優待・配当を受けることができます。なお、翌日の権利落ち日には売却しても株主優待・配当を受ける権利を失うことはありません。
注:株式投資等で配当金を受け取る権利が確定した翌日、配当金の分だけ株価が下落することを『配当落ち』と言います。配当が出された銘柄は、理論的には金利を除けばその株価が1株当たりの予想配当金の額だけ、前日よりも値下がりします。ただし、実際の株価は他の変動要因にも左右されますので、市場では必ずしも理論通り下がるとは限りません。
株価の変動要因は社会問題から天変地異まで非常に多岐にわたり一概に言い表すことはできませんが、最も影響度が大きい要因は「企業業績」と言われています。これは、企業業績が伸びれば株主は配当金の増加の恩恵を享受できるからにほかなりません。また、株価の動きは企業の利益動向と非常に相関度が高いことも実証的に明らかにされています。しかし時には、業績が良いのに株価が下がるケースもあります。これは「需給」等他の変動要因の比重が高まった局面で見られる現象ですが、投資家は常にその変動要因を分析し投資に当たることが求められています。
以下、企業業績以外にも影響が高いと見られる要因を挙げてみましたが、株価の変動要因は大きく「外部要因」と「内部要因」の2つに分けることができます。
外部要因
外部要因の代表的なものには、「景気」、「金利」、「為替」、「財政」、「技術革新」、「政局」、「海外動向」等が挙げられます。なかでも株価への影響の大きいと見られる「景気」、「金利」、「為替」について見てみましょう。
「景気」
「景気」は企業業績と密接な関係があり循環を繰り返していることから、景気の動向を読むことは株価を見る上で非常に重要となります。市場関係者の多くは「鉱工業生産指数」や「景気動向指数」等を参考に今後の景気を予測しています。また、景気に敏感な株を「景気敏感株」を呼び、設備投資関連株や市況株(素材株)等に代表されます。
「金利」
「金利」も企業の財務面を通じ企業活動に影響を与えることから、景気と並び企業業績への影響が高い要因となっています。また、株式以外の金融商品との相対的な比較感から、金利低下局面では株式に対し優位性を与えたり、金利上昇局面では株式の優位性が低下する等、直接的に株価へ大きな影響を与えています。こうしたことから、企業業績と金利を株価原動力の両輪にたとえる市場関係者も見られます。「金利敏感株」としては金融、公益、建設(住宅)、不動産株等が挙げられます。
「為替」
「為替」の変動は企業業績に大きな影響を与える他、外国人投資家の動向にも密接な関係を持っています。これは外国人投資家にとって、株式のリターン以外に為替差益が重要となるからです。「円安メリット」を受けるセクターの代表は電気、精密、自動車であり、「円高メリット」を受けるセクターは石油、電力、ガス等が挙げられます。
内部要因
内部要因は、「投資主体別売買動向」、「信用取組み」、「裁定取引状況」、「ファイナンス動向」等のように、直接的に株式需給に影響を与える要因を示します。外部要因に比べ短期的な影響が大きく撹乱要因となることもありますが、目先の株価変動を捕らえたい向きはその動向を注視しています。
株式等振替制度とは、「社債、株式等の振替に関する法律」により、上場会社の株式等に係る株券等をすべて廃止し、株券等の存在を前提として行われてきた株主等の権利の管理(発生、移転及び消滅)を、機構及び証券会社等に開設された口座において電子的に行うものです。
株主の権利(配当、優待等)をお受取りいただくためには、総株主通知を行います。総株主通知とは、振替機関が、社債、株式等の振替に関する法律(第151条)に基づき、株主確定日における振替口座簿の記録事項を発行会社に通知するものです。株式等振替制度では、当該通知を円滑かつ適切に行うため、口座管理機関から振替機関への報告や振替機関から発行会社への通知を、原則としてすべてコンピュータ処理で行います。また、振替機関は、総株主通知等に係る準備行為として、あらかじめ口座管理機関から、口座管理機関の加入者の氏名又は名称その他の必要な事項の通知を受け、加入者の名寄せその他の必要な管理を行います。
このようなことから、当社にお預けいただいている上場株式等は、株式を保有することにより生じる様々な株主権利につきましては、煩雑なお手続きなくその権利をお受取りいただくことができます。